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ブラクロ本拠地・漆黒のホール
厚い闇が染み込んだような広間に、幹部たちが無言で腰を下ろしていた。
壁一面の巨大モニターには、愛梨が変身を終えた瞬間の静止画が映し出されている。淡い光がフレームの中で凍りついたまま、ただそこに存在していた。
リンは腕を組み、低く呟く。
「……マジカルキーが発動したな」
アオメが眼鏡の奥で異色の瞳を細める。
「希望の魔法少女が、また現れたってことね。しかも……」
里香が静かに言葉を継ぐ。
「初陣で浄化に成功した。……予想以上よ、あの子」
その横で、ソファに寝そべる影がひとつ。
ミミカは足を投げ出し、袋から取り出したグミを口に放り込みながら、にやりと笑った。
「へへへぇ〜〜♡ やはりミミカの見る目は間違ってなかったですなぁ」
リンが眉をひそめる。
「見に行っただけのはずだ、ミミカ」
「えぇ〜? ちゃんと戦闘指示も出したし〜♡ モングー、ちゃんと暴れたじゃないですかぁ〜〜〜〜?」
アオメは冷ややかな視線を向ける。
「……なんか、ノリノリで追っかけ回してたように見えたけど」
「うふふふふ♡ だってさ〜〜あの子……」
ミミカの声色が急に甘くとろける。
「超★ド★ストライクなんですも〜ん♡♡♡」
一同の視線が揃って彼女に向く。
「……はぁ?」
ミミカはふいに真顔に戻り、低く言った。
「あの子は……放っておけない。あのハートは……光りすぎてる。
ああいうの、絶対に潰さなきゃ……って、前は思っていやした」
そこで、彼女の唇にわずかな笑みが戻る。
「でも……今はちょっと、違うかもですなぁ♡」
袋を握り直しながら、再び笑みを深める。
「……ふふふぅ〜、でも〜〜〜……
ミミカ、あの子のキラキラ……まだ、もっと見たいんですよぉ……」
最後の一粒を口に放り込み、かすかに甘い香りが漂った。
里香はその様子をじっと見つめ、ため息をつく。
(……あれは……本当に悪党なんだろうか)
そう心の中で呟き、彼女は背を向ける。
重く黒い大扉が開き、軋む音とともに閉ざされた。
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