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第5話
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第4話の続き
夜が明けた。
カーテンの隙間からこぼれる柔らかな朝日が、薄暗い部屋をゆっくりと照らしていく。
シーツの皺に光が落ち、絡み合った影が浮かんでは消えていく。
イッテツはゆっくりと目を開け、深く息をついた。頭の奥にまだ霞のような重さが残っている。だが、それ以上に胸の奥を支配しているのは、温かな体温だった。
視線を落とすと、自分の腕の中に眠るマナの横顔があった。
長い睫毛が頬に影を落とし、わずかに開いた唇からは規則正しい寝息がこぼれる。昨夜、涙と熱に濡れていた顔とは打って変わって、今はどこか幼さすら感じさせる穏やかな寝顔だ。
イッテツは胸が締めつけられるのを感じながら、その髪をそっと撫でた。
(……ほんとに、こうして抱きしめてるんだ、俺は)
現実味がなくて、夢を見ているようだった。
けれど、肩に感じる重みも、背中に回された腕のぬくもりも、紛れもなく本物だった。
マナが小さく身じろぎをし、やがてゆっくりと目を開けた。まだ眠たげに潤んだ瞳が、ぼんやりとイッテツを映す。
「……おはよ、テツ」
かすれた声が、耳に心地よく響いた。
イッテツは思わず微笑む。
「よく眠れた?」
マナは一瞬ためらうように目を伏せ、やがて小さく笑った。
「うん。……なぁ、テツ」
そこで言葉を切ると、マナは呼吸を整えるように一度目を閉じた。
「昨夜のことは、忘れていいよ」
その言葉を聞いた瞬間、イッテツの胸の奥で何かがはっきりと反発した。
即座に彼は体を起こし、マナを真っ直ぐに見つめて遮った。
「忘れるなんてできない」
低く、けれど揺るぎのない声。
マナの瞳が大きく見開かれる。
「俺にとっては、大事なことだった。……マナくんと過ごした夜を、なかったことになんてできないよ」
「……テツ」
「だから、忘れるなんて言わないで」
イッテツの瞳は真剣だった。後悔の影も迷いもなく、ただ目の前の相手を強く捉えている。
マナはその視線に射抜かれ、息を飲んだ。
そして、ふっと力が抜けるように笑い、涙を滲ませながら顔を隠した。
「……ほんま、ずるいわ」
「ずるくてもいい。俺は、マナくんが欲しいんだ」
「そんなん言われたら……もう逃げられへん」
マナは震える声でそう呟き、ゆっくりとイッテツの胸に身を預けた。イッテツはためらいなくその背中を抱き締める。腕の中にあるぬくもりが、これからの答えを示していた。
それからの日々、二人は表向きには変わらないように見えた。
「わあああああああああ!!!」とイッテツがリアクションし、「テツ、ビビりすぎ笑笑」とマナが笑う。画面越しの視聴者には、何ひとつ違わない日常が映っていた。
けれど裏側では、確かに変化があった。
ふとした瞬間に視線が交わると、昨夜の記憶が鮮やかに蘇る。
マナが少し頬を赤らめ、慌てて視線を逸らす。その仕草にイッテツの胸も高鳴り、何気ない笑みで誤魔化すしかない。
配信が終われば、そこは二人だけの世界になる。
マナは当たり前のようにイッテツの隣に座り、少し肩を預ける。
「……なぁ、もうちょっとだけ、このまま」
小さな声で囁かれるたび、イッテツは黙ってその肩を抱き寄せた。守るように、抱き締めるように。
マナは最初、遠慮がちに触れるだけだった。
だが次第に素直に甘えるようになり、イッテツの胸に顔を埋めて「安心する」と呟く。
その言葉に、イッテツの心は温かさで満ちていった。