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#病弱
📘 あとがきにかえて
この物語は、ある“未遂”を起点に始まりました。
2000年の秋、加藤紘一という政治家が、一瞬だけ日本を変えうる場所に立った。
けれど彼は剣を抜かなかった。それが現実の歴史です。
「なぜ彼は動けなかったのか」――私はずっと、その問いが頭から離れませんでした。
そして同時に、「もし、動いていたら?」という問いもまた、私を離さなかったのです。
この物語は、加藤という“沈黙する政治家”の中にあったはずの言葉を、もう一度、物語という形で拾い上げた試みです。
彼は演説家ではありませんでした。声を張り上げるタイプでもなかった。
けれど、あの人の一言にはいつも、重さと良心がありました。
現実の政治は、そんな言葉を待ってくれないことが多い。
数、メディア、空気。
それらに抗いきれずに敗れていく者たちの姿が、私はずっと胸に残っていました。
「信じた政治を、信じ続けること」
それは、もしかすると勝つことよりもずっと難しいのかもしれません。
それでもなお、それを諦めなかった人々の姿を、私はどうしても描きたかった。
加藤さん、あなたの“もし”に、私は静かに敬意を捧げます。
そして、物語の中で一瞬だけ灯ったあなたの政権が、読む方の中で小さな記憶のように残ってくれたら、作者としてこれほど嬉しいことはありません。
――《秋霧の乱》著者より
コメント
1件
読み終えた……いや、これは「あとがき」だけど、むしろ本編の意味を全部背負ってる感じがしたわ。 「もし動いていたら」という想像と、「動けなかった現実」への敬意。 静かで、でもすごく熱い文章だなって思った。語り口も含めて、天海カオルさんの温度が直接伝わってくるような一話だった。 こういう“たられば”を誠実に掘る人、好きだわ。素敵な作品をありがとうございます。