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「融資のことは本当にすごく有難いし、嬉しいし、夢みたいな話で信じられない。でも、龍聖君の奥さんを演じられる自信なんてないよ」
「琴音。1年はあっという間だ。きっと上手くいく。大丈夫だから俺の言う通りにして」
上手くいく、大丈夫――
確かに、今はこの状況をまだキチンと整理できていない。だけれど、なぜか龍聖君の言葉が私の中にスーッと入りこんできて、不安な気持ちを落ち着かせてくれた。
「う、うん」
この返事が正しいのかどうなのか、そんなことはわからない。でもきっと、私が傷つかないようにしてくれたのだろう。友達への優しさでお金を融資する理由を作ってくれた龍聖君に、心から感謝が溢れた。
両親の工場が守られるなら……
龍聖君のご両親も喜んでくれるなら……
そんな思いが私の胸の奥深くまで語りかけてきた。
「じゃあ、決まりだ」
そのあとすぐ、いろんなことが一気に動き出し、私は自分のマンションから龍聖君の部屋に引越しをした。
龍聖君のご両親もいきなりの報告だったにも関わらず、「琴音ちゃんなら」と、私達のことをすごく喜んでくれた。
おまけに「龍聖がお世話になった方が困ってるんだ。いくらでも融資するよ」と言ってもらえて、涙が出るほど嬉しかった。
婚姻届も2人で出して、形だけの結婚がどんどん前に進んでいった。
返済期限の無い多額の融資に対しては、私の両親は死ぬほど驚き、そして心の底から感謝していた。
『龍聖君、ありがとう。本当にありがとう……何とお礼を言えばいいのか……』
お父さんは、融資を申し出てくれた龍聖君の手をぎゅっと握り涙を流していた。
お母さんも「琴音をどうかよろしくお願いします……」と、涙まじりの笑顔で頭を下げていた。
感極まった2人は、土下座をするくらいの勢いで何度もお礼を言った。