テラーノベル
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『そんなに恐縮しないで下さい。俺は、おじさん、おばさんへの感謝を忘れていません。2人のおかげで楽しい高校生活を過ごせましたから。これからは身内として何でも相談して下さい。もちろん追加融資もします、何があっても力になります。琴音のことも、どうか安心して下さい』
龍聖君は、お父さんとお母さんに向けて優しく微笑んだ。
『本当にありがとう、ありがとう……この恩は死ぬまで決して忘れません。1日も早く返済できるように粉骨砕身の覚悟で頑張ります』
『そんなに固くならないで下さい。それに、僕に敬語を使う必要もありません。おじさんの作る製品なら大丈夫です。だから、焦らないでゆっくり良いものを作ることだけに集中して下さい。そうすれば、必ずまた工場に活気が戻るでしょう』
『ありがとう。龍聖君、君は本当に立派になったね。鳳条グループの跡取りとして素晴らしい経営者になることは間違いないね。こんなに良くしてもらって……本当に……感謝しているよ』
お父さんは、まだ泣いている。
両親が涙を流しているのを見たのは、この時が初めてだったかも知れない。
たぶん、そう。いつだって私には笑顔しか見せずに頑張っていたから――
2人のこんな安心した顔が見れて、私も改めて龍聖君に感謝した。
お互いの両親に本当のことを言えないのは申し訳ない気がしているけれど、これで良かったのかな……とも思えた。
私と龍聖君の契約結婚――
嬉しさや恥ずかしさ、不安もいっぱいある。
それに、先は全然見えない。
でも、きっと大丈夫、大丈夫って……
龍聖君が言ってくれた言葉を、今は何度も自分に言い聞かせている。
せっかく用意してもらった結婚生活なのだから、たとえそれが偽物だとしても、ほんの少しは楽しみたいと……今、ようやく思えた。
私達の新たな人生は、慌ただしく嵐のようにスタートし、1歩ずつ動き出していった。
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