下校のチャイムが鳴った。さようなら、と言うと同時に何人かの子たちが全力で教室をとびだしていく。ぼくはいっしょに帰れる友だちがいないからひとりで帰る。
帰りたくないな、また公園でも行こうか。
お母さんは僕のことが嫌いだ。わかれたお父さんににているし、かお?目の色?もへん。
へんだからぼくはかるくイジメられる。でもなぐったりけったりはしない。ぼくを見てコソコソなにか言ったり、時々仲間外れにされるだけ。
時々だけだから、ふつうに話しかけてくれるひともいる。
だから、家よりはマシだ。
家に帰ったら、なぐったりなんて当たり前で、ひどいこと言われたり、ごはんが出てこない時があったり、たまに殺されかけたりもする。
でもお母さんは妹の紅林にはすごくやさしい。
かわいいかわいいー、って言って、ほしいものを買ってあげたりおいしいごはんをつくったりする。
べつにうらやましくはない。
だって紅林はかわいいし、あいそもよくて好かれやすいし、ぼくみたいにへんな子じゃないし、勉強も運動もそれなりにできちゃう。家事もそう。お母さんがやらなくていいよって言っても、自分からやっちゃう。出来そこないのぼくとは大ちがい。だから、紅林がみんなに好かれるのは当たり前だと思う。
紅林はぼくのじまんの妹だ。紅林はこんなのが兄ちゃんなんていやかもしれないけど、ぼくは妹が大好きだ。
妹のことばっかりしゃべった気がするなあ。でも、まだまだ話せちゃうくらいぼくの妹は最高なんだ。
妹語りをしている間に公園についた。
ここはいつもだれも来ないのでよく学校帰りに来ている。
きっと本当はお母さんはぼくが帰って来なくてもとくになにも思わないんだろうけど、『子どもがいなくなったとなればすぐにうわさになるから6時までには帰って来い』って言われてる。
あと、ここの公園はよく2ひきねこが来る。1ぴきは茶色いねこで、左目が青くて、右目がむらさき。もう1ぴきは黒いねこで、赤い目で、右目はけがをしていて開かないみたいだ。
えさをあげたりしているわけでもないのに、急に現れてはすりよってくる。ふしぎだなぁ。
ねこをなでていると5時のチャイムが鳴った。あと1時間かあ。
ここから家まで20分くらいだから、本当はあと40分かな。6時までについとかないと殺される。
「……はぁ………」
帰りたくないなぁ。ため息をついて、家に帰ってからを想像する。
今日は母さんきげんいいかな、いいといいなぁ。悪かったらどうしよう。
紅林にたくさん学校での話とか楽しかったこととかしゃべってほしいなあ。話してる時の紅林はすごいにこにこでいろんな話を聞かせてくれる。やっぱり紅林は笑顔がいちばんかわいいんだよなぁ。
今日はゆっくり歩きたい気分だったから早めに公園を出た。
ぼーっと歩いているとあっという間に家についてしまった。なんだか悲しい。
うるさくするとおこられるので、そっとドアを開ける。
「……………」
「あ!おかえり、おにいちゃん!」
「わ、ふふ、ただいま、紅林。」
飛びついてきた紅林の頭をなでる。お母さんはなにも言わない。こまったなあ、これじゃあきげんがいいのかよくないのかわからない。
「た、ただいま、お母さん……」
「…ッチ、帰って来なくて良かったのに…… 」
「ゔ、ごめんなさい……」
まずい。きげんがよくなさそう。
「耳障りなんだよ、喋んなくていいから!」
「ぁ゙ぐ、っ」
いきなり腹パンだぁ。今日はやばいかもしれない。
そのあともけったり、なぐったり、ぼうげんをはいたり。しかいのはしに映る紅林が不安そうな顔をしていた。あぁ、そんな顔してほしくないな。紅林は笑った顔がいちばん……かわ…い……い………か…………ら……………
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