テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
ボクは吸血鬼。キミは人間。
同じ時を生きられない。
キミがいつかボクを置いて逝ってしまうくらいなら、キミを吸血鬼にしても構わない、そう思っていた。
ボクは彼女が喜ぶならなんでもした。
彼女の為にとびきりの人間の血を用意した。
彼女の為に世界中の美しい宝石も用意した。
彼女の為に様々な所へと出掛けて行った。
ボクは彼女の笑顔を見るのが大好きだった。
だけど、キミはただ微笑んでいるだけ。
ボクが呼びかけても、プレゼントをあげても、キスをしてもただ微笑んでいるだけだった。
何も応えず、何も反応せず、只々微笑んでいるだけだった。
ボクは少しイライラして彼女の首筋に噛み付いた。
でも彼女は微笑んでいた。
彼女は日に日に衰弱していき、見た目でも分かるくらい窶れていた。
何故?何も応えてくれない?何故ずっと微笑んだまま何もしてくれない?
それでも彼女はただ、微笑んでいるだけだった。
紅い満月が妖しく光る夜、彼女は静かにこの世を去った。
最期の時ですら彼女は微笑んだままだった。
何故、彼女はボクを受け入れなかったのだろう?
吸血鬼になれば永遠の時の中、ボク達はいられたのに…。
結局彼女は吸血鬼になったけど、人間としてこの世を去った。
所詮、人間と吸血鬼は相受け入れられない関係なのだろう。
お互い捕食する者、される者の関係でしか無いのだろう。
ボクは彼女の面影を胸に生きていく。
そして思い知る。人間を捕食する度、彼女の微笑みを嫌でも思い出す。
これはきっと彼女がかけた呪いなのだろう。
人間を捕食する度、ずっとずっと彼女の微笑みが頭から離れず今でも
ボクを苦しめている。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!