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書き直そうと思って少々改変したのでそれ置いときます。
道草をザッザとかき分けるようにして早歩きする。
一刻も早くあそこから離れたくて
この怒りに支配されそうな思考をすぐさま冷やしたくて
─────自分は、1人前などではなかった。
自惚れていた。
あんなに、あんなに許すと言ったのに。いざ彼を目の前にするとどうしようもない感情に胸が染められていくのがわかった。曽祖父様が怒りに呑まれるな、と忠告してくださったのにも関わらず。
もし、あのまま冷静な思考を取り戻せていなかったら本当に彼の喉をかき切っていた。
まだ刀越しに伝わる彼の呼吸のリズムを覚えている。 ぐっ、と握りこぶしをつくった。いくあてもないこの不快感がこの身から出てしまわぬよう。深く、耐えるように息を吐き出して頭を冷めさせたい。
あの時、彼の上に股がって彼の首に己の刃をあてた。
…体が、言うことを聞かなかった。
頭では分かっていた。この御仁から離れろと。 だがそう思う度、刀に力が入った。
拳にこれ以上力を入れるなと、そう思う度、刀を握る手に力が篭もりそうになった。
思考は冷静なのに、自分の体はその思考を尊重してくれない。じわじわと体を蝕むような憎悪に耐えることが、精一杯だった。
たしかに、彼は許されない事をした。だが、だからといって自分が手にかけていいわけでは無いのだ。もし、もし彼の言う通りあのまま彼を殺していたら?彼の生涯をこの手で、この体で終わらせていたら?
そう思うと、そんな自分にどうしようもない不快感を覚えた。
歩きながらそんなことを考えていると、自分を覆い隠すほどの影が出来た。
敵や人の気配はしなかったもので振り返るとそこは彼と自分にとっては、とても関連深い土地であった。
「たたら砂….」
ぼそりと呟いた。彼や旅人の話だと、彼….放浪者殿の昔住んでいた場所、自分の先祖が刀を打っていたところ。
なんとなく、ヒントになったら。とそう思った。
ふとそう思っただけだが気付いた時には、自分の足はその地に踏み入っていた。
◇
たたら砂、故郷の稲妻とはいえ。
己が子供の時よりずっと前から封鎖されており、人もあまり寄り付かなかったため自分自然とたたら砂に立ち入ることは無かった。
なのにこんなことで立ち入るとは…
とりあえず上に登れば空気も良くなるだろうと上へ向かった。
その最中、所々橋の一部が無くなって崩れそうな箇所を幾つか発見した。
まあ数百年は誰も立ち入っていない筈だから当たり前と言えばそうなのだが、ここまで荒れ果てているとは。幸運にも元素力の使える自分は風元素の力を使い橋を飛び越える。
「よっ」
飛び越える、と言っても一旦橋の合間に落ちてギリギリのところで風元素を発生させて飛び上がり目の前の橋を掴んでよじ登るという方法だ。
橋の隙間から下を覗くと本当に高い位置にいることが分かり、落ちたらひとたまりもないことがわかる…
ふう、と軽く息を吐いてからまた上へと進んでいく。
◇
強行突破で上へ登ってきた故に、登っている途中、何回か落ちそうになり死にかけた。自分でもなぜこんな道をきたか….わからない。
そしてぐるぐると上の方を散策していると二、三軒並んでいる小屋を見つけた。
扉も壊れていて老朽化していることが伺える。
入って良いものか、と考えていると、ぽつりぽつりと雫が落ちてきた。
そういえば先程から雨の前独特の塩気を含んだ風があったが….気付かなかったとは、本当に気が緩んでいる気がする。
この感じ、すぐに雨が強くなってしまいそうだと直感でわかり、このままでは自分が濡れてしまうな、
また雨に濡れて風邪を引いた挙句それが悪化して1人野宿するなんて、拙者をもう経験したくない…
本当に身勝手で申し訳ないのだが、雨宿り、という名目で小屋の中に入らせてもらった。
当然、中に人は居なかった。
だが、自分が雨に当たらず雨音だけが聞こえるというのはいつもはあまり良いイメージの無い雨音でさえ、心地よく感じられた。
人が居ないとはいえあの時のような孤独とは違う独り。
魔物や人の気配、動物の音すら無い孤独な空間で雨音だけが響くのはなんとも素晴らしい環境であった…
小屋の中に大胆に置かれていた椅子に腰掛けさせてもらい、ふう、とまた息を吐き出した。
「…あの御仁は、本当に拙者のことを見ているのだろうか」
ぽつりと、自分の声が反響して聞こえた。
喋ったつもりは無いものの、無意識に口から出て言ってしまっていたらしい。
たしかに、彼は「君には僕を刺し殺す権利がある」と言い刀を差し出してきたことがあった。が、恐らくその本意は自分が何か罰を受けたいから、なのであろう。きっと拙者がどう思っていようと、関係ない。
彼が求めているのは彼の言う被害者…である拙者の断罪….では無く、その罪を犯した自分への罰なのであろう。ということは ──
彼はただそこに自分という都合のいい人が居たから、自分を殺させようとしているのでは
という結論に至った。
極論かもしれない。が、実際そういうことなのだろう。
彼と、過去について話し合ったことは何度かあった。その度に感じていた違和感の原因はきっとこのことだ。
どうしたら、彼は自分を認めてくれるのだろう。
友人の末裔でもなく、処刑人でもなく、
…ただの、友人として
「…何故、君がここにいるのかな。」
「?!」
つい先程まで考えていた人物の声がした。
…それも目の前から。
パッと顔を上げるとそこには少し雨に濡れた放浪者が、いた。
状況が、上手く飲み込めなかった。
何故ここに?そんなの、自分が聞きたい。
はくはくと混乱で声が出せない自分に、彼は悪態を付いた。
だが、悪態を付くには、あまりにも優しすぎる声色で、表情だった。
「はあ、なんだい?その間抜けな顔は。落ちぶれたとはいえ武家の末裔だろう?」
「….あ、」
改変前⤵︎ ︎特に見る価値は無いと思います。でも成長感じたいので残しときます。
もし彼の言う通り、あのまま彼を殺していたら?彼の生涯をこの手で、この体で終わらせていたら?
そう思うと、そんな自分にすら不快感を覚えた。
歩きながらそんなことを考えていると自分を覆い隠すほどの影が出来た。
「たたら砂….」
ぼそりと呟いた。
彼や、旅人の話だと、彼、放浪者殿の昔住んでいた場所、自分の先祖が刀を打っていたところ。
なんとなく、ヒントになったら。と思った。
気付いたら
◇
たたら砂、故郷の稲妻とはいえ、こと近年は封鎖されており、人もあまり寄り付かなかったため、自分も自ずとたたら砂に立ち入ることは無かった。
所々無くなって崩れそうな橋を風元素の力を使い、登っている途中、小屋を見つけた。
扉も壊れて、それに、雨雲が漂ってきたため、雨宿り、という名目で小屋の中に入らせてもらった。
普段はあまり良い印象のない雨音が、今は心地よく感じられた。魔物や人の気配、動物の音すら無い孤独な空間で、雨音だけが響くのはなんとも心地よかった。
「あの御仁は、本当に拙者のことを見ているのだろうか」
ぽつりと、自分の声が反響して聞こえた。喋ったつもりは無いものの、無意識に口から出て言ってしまっていた。
たしかに、彼は「君には僕を刺し殺す権利がある」と言い刀を差し出してきたことがあった。が、恐らく、その本意は自分が何か罰を受けたいから、なのであろう。きっと、拙者がどう思っていようと、関係ない。
(彼が求めているのは被害者…である拙者の断罪。では無く、その罪を犯した自分への罰なのであろう。ということは ──)
彼はただそこに丁度いい人が居たから自分を殺させようとしているのでは。
という結論に至った。極論かもしれないが、実際そういうことなのだろう。彼と、過去について話し合ったことは何度かあった。その度に感じていた違和感の原因はきっとこのことなのであろう
どうしたら、彼は自分を認めてくれるのだろう。
友人の末裔でもなく、処刑人でもなく、
…ただの、友人として
「…何故君がここにいるのかな。」
「?!」
つい先程まで考えていた人物の声がした。それも目の前から。
パッと顔を上げるとそこには少し雨に濡れた放浪者がいた。
何故ここに?そんなの、自分が聞きたい。