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「そこまで言うならそうかもしれないね」
「臭いものに蓋をしたみたいだな」
僕は昨日のことを升沢に熱弁していた。
升沢は認めた、というより折れた。
脈絡はあっていただろう。それでもやはり驚かれた。「幽霊を信じるか」と聞いた。
「君が見たのを幽霊だと思うの。」
「確証はないけど」 いやある。だがそれを話すと思うと躊躇ってしまう。話さなくてはならなくなる。あれを。今はまだ
「確証がないってあまり信用ならないのだけど、第一私はその子を目撃さえしてないのよ。」
「それもそうだ。」
「私は幽霊はあまり信じていない、そもそも幽霊ってのが死後の世界がある前提で語っているわけよね。だとするとそれは科学と対極に位置する宗教から由来しているわけだ。」
ごもっともだな。素直にそう思った。
「だが否定はできない。」僕は受けおりの言葉をよそよそしく言った。
「確かにそうだね、故に現状議論の域を出ない」僕はもう一度あの場所に行こうと思った。
升沢を連れてはいけない。 危険を伴うことになるかもしれないし、それに
「その様子だともう一度見に行くのかな。」
升沢は鋭い。
「まさか、僕は幽霊が苦手だ。」
「ふーん」
放課後になり、升沢からの視線をものすごく感じる。というかもう見ている
よほど気になるのか。生憎僕も升沢も帰宅部だ 。どうしたものか。最近よく升沢と帰っていたがその日は1人で帰る。一度帰宅してからあの場所に向かった方が良さそうだ。
並木道を歩いていた。正直僕はこの道が嫌いだ
謎の閉塞感に苛まれる。左右両側に立つ木々は僕を見ている、そんな感じがしてしまう。
前方から人が歩いてくる。ここで人とすれ違うのは僕にとって束の間の救済だった。
けどその時は違った。寝耳に水をさされた感じだ。
「升沢ねりを知っているか」
黒髪長髪だったからか女性かと思っていたが喉仏を震わした若くも渋い声は男性の物だと瞬時に理解させられる。マスザワネリ、どこかで聞いたぞ。ものすごく親近感が湧く。何でだ。いや、やはり「升沢ねり」だろう。どうすればいいか。訝っているとすかさずその男は
「そう構えなくていい、僕はれっきとした、、れっきとはしていないか、そうだな、言うなれば俗に言う幽霊の専門家、陰陽師かな」
何を言ってるんだ。この人は。
「まあそんな顔をされても無理はない、普通の人にとっちゃ皆目見当がつかないものさ」
新手の不審人物か。この人に知り合いのことを売るほど僕は腐ってはいない。
いや、待てよ。
「何故僕に聞いたんですか」
「制服が同じだ。」
やはりだ。学校を知っている。しかし僕が升沢と多少なりとも親しいことは知らない。
「あなたはその方の何なのでしょう。」
「んー、そうだな、強いて言えば、君にわかりやすいように言えば、救済者だ。」
ちっともわかりやすくない。警戒度が増しただけだ。
「救うとは」
「それを聞けば君にも協力してもらう事にもなる」 少なくとも、僕が介入した方が升沢を危険に晒すリスクは減るのではないか。
そう思うと僕は迷わず言っていた。
「協力します」
「決断が早いね、君は馬鹿なのかな」
「え」
「まだ内容も聞いていないのにそれは愚者のする事だ。」
「グシャ、、」
「しかし今の君の反応で分かったよ、升沢ねりは君にとっての大事な人かな」
「そうではないですよ」この人、まずいな。
「まあまず内容を聞いてくれよ。」
「はあ」
「君もニュースくらいは見るだろう、そこで今話題になっている「正方形」って詐欺師いるだろう」
「ええ」
「その人の正体を僕を含め陰陽師は知っている」
「まさか」
「いや君が思っているのとは少し違う」
「じゃあ何なんでしょうか」
「面倒 臭いから何を言っても驚かないでくれよ」
「覚悟の上です」 固唾を飲む。
「あれの正体は未来の升沢ねりだ。」
昨日から、僕の心の川には漆黒の酸性雨が降り注いでいる。咄咄怪事だな。