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「うーん…」
やはりゆあんくんの履歴書を何度見ても普通の家庭と変わらないように思えた。だったらなんで地頭はいいのにテストの点数は悪いんだ。
「あれ、」
違和感などないはずの履歴書に俺は何かを感じる。
「ゆあんくんってA型だっけ…」
履歴書にはそう書いてある。母親はO型で父親はA型。
「あれ…?前聞いた時B型って言ってなかったっけ…」
──────
「ゆあんくんって何かと雑だよね笑」
「俺B型なんで笑」
「そうなの、俺A型だけど俺も雑だよ」
「結局血液型なんて関係ないですよね」
──────
段々と記憶が蘇り、それと同時にゆあんくんはB型だという確証がつく。だとしたら、そうだとしたら…
「ゆあんくんとは血が繋がっていない親がいる…」
でも結婚はしている。事実婚ではない。つまりどちらかが托卵という訳だ。ゆあんくんから父親の話はよく聞いていた。それも大抵いい話。だが母親はどうだ?母親について触れたことなんて彼は1度もない。
「そういう事だったのか…」
彼の家庭環境は複雑だ。多分、履歴書にこう嘘を書くということはゆあんくんも父親と血が繋がってないことを理解している。今彼の家で何が起こっているかは分からないが一刻も早くあの家族と話す必要がある。
「でも…」
たっつんはそれを許してくれる?俺の嫌な予想は合ってると言っても過言では無い。なら今すぐにでも面談をするべきだ。だが彼から言われた言葉は”もう話さない方がお互いのため”。面談をするならばゆあんくんと話すことを避けるだなんて無理に等しい。
「…もしも順調だったら?」
それはそれでいいのか、托卵と分かった今でも順調に暮らせているのならそれはそれで家庭の問題だから俺は首をつっこめない。その確認をしに行く、そう、ゆあんくんと話すためじゃなく今その家に住んでて順調か、それを確かめるために面談をするんだ。
「…言えないよ、」
もうこれ以上たっつんの無理やり笑ってる顔なんて見たくなかった。それを作らせてるのは自分なのに。
今日から体育祭の練習が始まるからか教室はやけにザワついていた。
「ちゃんと水筒持ってきたか〜?」
此奴はいつも俺の元へやってくる。俺以外に友達いないんか。
「持ってきたわ」
「お前こそ持ってきたのかよ」
「なんと…じゃーん!ちゃんと持ってきました!」
「いや当たり前だから、というかお前水筒ちっちゃくね?」
「いやいや、これくらいで足りるっしょ」
「なになに、なんの話ー?」
2人の話に割って入ってきたのは俺の隣の佐伯だった。
「いやそれがさ、此奴がこの大きさじゃ量足りねーとか言ってくんだよ」
「えー!!絶対足りるよ!笑」
「ねえねえ、じゃあ私のは?これ足りるかな?」
「…知らね、足りるんじゃね」
「俺もそう思うな〜」
「霧島くんのは足りないって言ってたのに私のは足りるの?笑」
「まあ最悪なくなれば水道で足せばいい」
俺ら男子からしたらうりの提案なんて納得するがやっぱり女子だからか納得いかなかったようだ。
「なにそれ、私に水道水飲めって?そんな汚い水飲めるわけないじゃん」
空気が重くなる。なんで俺あんなこと言ったんだろ。
──────
「…考える」
──────
俺の発言が悔やまれる。
「凛〜!!着替え行くよ!」
「あ、はーい!!じゃ、また後でね!ゆあんくん!」
教室を出て走り去っていく。
「…好かれてんな、お前」
「…そうかもな」
「否定しないんだ」
「告白的なこと言われたからな」
「え、なんて言ったん」
「…考える」
「え、お前先生は?」
「…俺と佐伯が仲良いってこと知ったら嫉妬してくれるかなって」
「ばかだな…で、結果は?」
「なんも反応なし」
「だろうな」
着替えながらそんなたわいもない話をする。
「まだ先生のこと好きなの?」
「こんなこと言っといて好きじゃないように思えるか?」
「思えないけど…」
「いつになったら諦めんの」
「さぁ、忘れた時とかじゃない?」
「忘れられんの、お前」
「知らん」
「まあ頑張れよ」
「前まであんな否定してたのに」
「なんかもういいわ、どうせ叶わない恋だろうし応援するというか、同情というか…」
「最近ゆあんのお母さんは?」
「昨日はなんか機嫌悪かった、多分酒飲んだんかな」
うりは俺の事情を知っている。此奴が俺のことが怪しいと言って全部自分で知り尽くした。
「やっぱ酒飲んだらだめか、でも買っとかないと怒られるんだろ?」
「うん、だからどの道って感じ」
「なるほどな〜」
「先生には言わねぇの?」
「言ってもいいけど俺が不義の子のことだったり色々説明すんのがめんどい」
本当は嘘。言ったら今までの信頼を壊すかもしれないから。俺が托卵だと知ったら先生は戦慄するかもしれない。
「というかよく嘘の履歴書で3年間騙し通せたな」
「まあ血液型とか親密な人としか言わないし、聞かれたとしてもA型って答えてるし」
「確かに、今まで聞かれたことあんの?」
「多分ない」
「じゃあこのまま押し通せるか」
「行こーぜ」
タオルと水筒を持ち教室を後にする。グラウンドに着くと思ってた以上に暑く、長袖で来たことを少し後悔する。
「では各自自分の出る競技の人たちで集まってください。いくつか出る人は───」
スピーカーでアナウンスが流れ、みんなどんどん集まっていく。
「なんの競技出るんだっけ」
「おめーが推薦したんだろ…」
「それ以外だよ」
「あー、騎馬戦と綱引き、あと学年種目」
「騎馬戦しか同じじゃないわ、俺借り物と大縄跳びと騎馬戦」
「ゆあん借り物出なかったんだ」
「リレー出るからな」
だいたいリレーか借り物出る人はどちらかしか選択することができない。
「借り物ってさ、なんのお題出ると思う?」
「それって人とか出るん」
「借り物って名前だけど出るらしいよ」
「そうなん」
だったら最初から借り物・人競走って名前にしろよな。
「知らんけど帽子かぶった人とかじゃね」
「王道すぎだろ、もっとなんか盛り上がるお題ないんかな」
「盛り上がるお題って…」
いつもなにか求めるのもが高いうり。だから彼女できないんだよ。理想形が高すぎるから。
「ゆあんくん借り物競争出るのー?」
「うわ、出た」
「ひどーい笑」
此奴もやたらと俺に話しかけてくる。友達も話してたのにわざわざこっちに来るぐらい。
「ゆあんは借り物でないよ、出るのは俺」
「そうなんだ!頑張ろうね〜」
「凛〜借り物こっちで集まるって」
「今行く〜!霧島くんも行こー」
「あぁ、じゃあまたなゆあん」
「おう」
うりもいなくなり、リレーのメンバーが集まってるのはどこだと見渡していると声を掛けられる。
「おい月城、リレーこっちだぞ〜」
「リレーの人集まりましたか?」
「じゃあまずは走者を決めていきたいので───」
日陰に行きたい、ものすごく暑い。ちらっと辺りを見渡すと一ノ瀬先生が見えた。また青葉先生と話している。でも今日は見るのを辞めた。俺だけが先生のこと気にして馬鹿みたいに思えたから。先生も振り向いてくれたら話は別なんだけどな。
昨日言っていた通り本日二本投稿のため、もう1話は夜投稿します💫
コメント
2件
わーっ!!ありがとうございます!!🥹💕 履歴書バレちゃったか... これからも応援してます!!💪🏻🔥