コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「でもそんな大事な発表会に、私が参加しても大丈夫なんでしょうか?」
「むしろ、大歓迎なくらいだ」
蓮水さんが応えて、
「気に入ったのがあれば、イラストに描いてもらってかまわないから。もし良ければ、新作カタログにイラストを載せてもいいしな」
そう、思ってもみなかった言葉を続けた。
「カタログにだなんて……」
有名メーカーのカタログにイラストを掲載してもらえるだなんて、まさに青天の霹靂と言った感じで辟易してしまいそうだった。
「いいのがあれば掲載するんで、君は好きなように描いてくれればいいから」
「はい、ありがとうございます……!」
嬉しすぎる提案に徐々に興奮が込み上げて、思わずテンションが上がり声が大きくなる私に、
「私も、君の絵を楽しみにしているよ」
蓮水さんが、ふっと目を細めて優しげに微笑んだ……。
──訪れた新作発表会は、会社内にあるショースペースで行われた。
「それでは、紳士服HASUMIの新作コレクションの発表を始めさせていただきます」
アナウンスと共にステージがパァーっと明るくライトアップされると、色彩豊かなスーツを着こなした社員の方たちが客席へと伸びる花道に登場した。
「うわぁー、なんかすっごいカッコいいんですけどー……!」
モデル然としたプロっぽさがないところが、逆に身近にいそうなリアルさで、より魅力的に感じられる。
「……なんて言うか、イケメン多過ぎ……」
ステージ上の社員さん達の誰もが目を引く格好良さで、カラーバリエーションの多いHASUMIのスーツをみなさんそつなく着こなしていて、はた目にもとても決まって見えた。
次々に現れるグレイッシュブルーにピンキッシュシルバー、ブラッドオレンジにクリムゾンレッドなどの鮮やかなスーツ姿に思わず魅了されてしまう。
それに、どのスーツも派手さを控えたシックな色合いで纏まっていて、大人の男の色っぽさだけじゃなく渋さとクールさを存分に醸し出していた──。
(やっぱりHASUMIのスーツって、どれもいい色でステキだな…)
──コマーシャルでも見たことあるようなハイセンスなスーツの数々に、開いたスケッチブックに一心にペンを走らせた。