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僕が育ったのは、「夢浮橋」という児童養護施設だった。ここの長は、「神様」の愛弟子の1人、「神國様」。神様に対する信仰心の深さと、慈悲深くて優しい性格で、夢浮橋の子供達に愛されていた。
夢浮橋は、ただの児童養護施設ではない。神國様の下で、天国に行くための勉強をするのだ。
神國様はよく言っていた。
「此の世に生まれるのは、天国に行くための勉強をするため。なのでしっかり勉強をしないと、神様に怒られてしまい、地獄に送られてしまいます。だからみんな、ちゃんと勉強しましょうね。」
僕が子供の頃に、幾度も続いた核戦争が終わった。そのため大人たちは子供達を救ってもらうため、夢浮橋に子供達を預けているのだという。僕らは、僕らを救ってくれる神國様と、その神國様の下に連れて来てくれた親たちに毎日のように感謝していた。
そして恵まれた環境で、天国に行くための勉強を毎日のようにするのだ。こんなにも幸せなことはない。
そう、思っていた。
「イチ!!起きろ!!」
あの朝、僕はニィに起こされて起きた。寝坊したのだ。
「ふわぁ……。」
「やっっっと起きた!!遅いぞ!!」
「ごめん。」
イチ、ニィ、と言ってもこれは正式名称ではない。夢浮橋での僕の名前は、「42731」だった。今思えば人を番号で呼ぶなんておかしい。けれど物心ついたころから夢浮橋にいた僕は、世間一般の常識がなかったので、人は番号で呼ばれるのが当然だと思っていた。とはいっても、流石に「42731」は呼びかけづらい。そのため僕は、仲良し4人グループの中では「イチ」と呼ばれていた。ちなみに他のメンバーは、「ニィ」こと「42822」、「サン」こと「42733」、「ヨン」こと「41004」だ。
朝食を食べるために食堂を訪れると、サンとヨンが席を取って待ってくれていた。
「遅い!!!」
「ごめん!」
この日の朝ご飯はうどんだった。
「みんな注目〜。」
神國様の声で、うどんを啜りながら神國様の方を向く。
「新しい子供がこの夢浮橋にやって来ました。50007ちゃんです。」
「よろしくお願いいたします。」
僕らのように物心ついたときから夢浮橋にいる子供が多数だが、稀に50007のようにある程度成長してからここに預けられる子供もいる。
コイツが全てを「いい方向」に狂わせた元凶だった。
「よろしく、50007。」
「あ、はい。貴方達は……?」
「僕は42731。僕らの仲良しグループでは、イチって呼ばれてる」
「俺は42822!!ニィって呼ばれてる!!」
「42733でっす!!!サンって呼んで!!!」
「41004。ヨンって呼んでください。」
「じゃあ、私のことは、ナナって呼んでください。」
「りょーかい!!」
ナナの部屋は、僕達の隣の部屋だった。もともと隣の部屋に住んでいた5人の女子たちはすでに天国に行ったらしいので、空き部屋だったのだ。
「ねえ、貴方達は、ここが窮屈だと思わないの?」
何気ない会話をしていると、不意にナナに尋ねられた。
「なんで?こんなに恵まれた環境に、ケチつけたら駄目だよ!」
「そっか……。はぁ……。」
ナナはあからさまにため息をついた。
「なんだよ!?」
「貴方達は、外の世界を知らないものね。」
「外の世界を……?」
そういえばナナは、今まで夢浮橋の外で暮らしてきたのだ。考えると、不思議なものだ。夢浮橋の外にも世界があるなんて。
「まあ、外の世界について話すのはご法度だから――」
「喋ったことは黙っておくから、教えて!!」
ニィが叫ぶ。
「ちょ、ニィ!外に聞こえてたらどーすんだよ!」
サンが注意すると同時に、ガラガラガラ……と扉が開いた。
「仲がよさそうで何より。」
神國様だ。
「ですが、嘘をついたり人を騙したりしたら、地獄行きですよ……?」
そう言って神國様は、部屋を出て行った。
「……」
ナナを除いた僕ら4人は黙った。
「天国なんて、ホントに行けるのかしら……。」
「あ、うん。」
「神國様に従って勉強したら、行けるよ!」
「証拠は?」
ナナの問いかけに、答えられる人はいない。
「証拠は……ないけど……――」
「じゃあ、天国に行けるのなんて、嘘じゃないの?」
「何でだよ!何でそんなに神國様を否定するんだよ!」
ナナは嘲笑した。
「決まってるじゃない。神國は、悪者なのよ。外の世界を知らない貴方達には分からないだろうけれど。外の世界では有名な話よ。」
「は!?」
「意味分かんねぇ!!」
「神國様が悪者なわけがねーだろ!」
そう、信じていたから。
「じゃあ私が、教えてあげるわ。」
神國が本当は何をしているのか――
その話を聞いた後、生きているナナを見ることは二度となかった。
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基本二次創作しか書かないので不安しかないのですが、頑張ります!
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