テラーノベル
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クリスマス2日目 ‼️ ←
「お疲れ様ですー」
そう、聞き慣れた声が耳に入る。
朝から出社してもらってた彼が仕事の終わりを告げるその発言に俺も急がないと!と焦らされる衝動に駆られる。
別に、今日は彼となにかする予定はない。なんなら俺だって今日は配信だ。
体調不良による溜まりに溜まったタスクを今日やってしまわなければ一生進まない。それくらいソロライブ後だったっていうのもあって多忙期ではあった。
だからこそ、彼が帰るのを見ると置いてかれるような感覚に浸される。
手を伸ばしても掴んでくれないで、払われてしまうんじゃないか。なんて、まろがそんなことするわけ無いのにな。
って思ってた俺がバカだった。
あのあとすぐに仕事を終わらせて家へ帰るとそこにはいつもは居ないはずのまろが居た。
「なんで」って訊くも何も答えてくれなかったから黙って配信準備に取り掛かる。
あー、あー、とコラボ先の相手と互いにマイクテストをして「よしっ」と気合を入れると枠主のコラボ相手、かなめが配信開始ボタンを押してくれる。
配信しているときも心の霧は晴れなかった。
「はははっ」
それをぐちゃぐちゃに切り裂くように笑ってやるとかなめも豪快に笑って、リスナーも笑ってくれてた。
うん、しっかり正常運転のないこで居れてる。
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配信が終わったあと、リビングには顔を出す。
と、そこにはあったはずの彼の姿がない。
配信だったことを忘れてて来たはいいものの配信だったからって帰ったのか?
そんなん、まってくれればいいのに。配信が終わるのだって23時とかそんなずるずる遅くまでやってるわけじゃないのにさ。
なんて心のなかで毒づきながらもまたノートPCを開き、いつものアプリを立ち上げると俺の苛々を表すかのように、荒く、強くキーボードを叩く。
「もう、知らねぇ…。俺ぜってぇ会いに行かねぇし」
そんな言葉だけを残して俺は作業に没頭した。
最初は約束もしていたことだし、と。しゃーないから迎えに行ってやろうっていう気持ちで彼の家に遊びに行った。
それなのに俺が会社に出るときにもまだ居たからまさかとは思ったけど案の定家には帰っていないようでインターホンをいくら押しても反応はなかった。
しょうがないから、と合鍵を取り出し家に入ると真っ暗で人がいるようには感じ取れなかった。
「………ほんっま、最低」
これは愚痴なのか、嫌味なのか、それとも嫉妬、?拗ねてるのか?
俺でもよくわかってない感情がぐるぐると俺の中で渦巻く。
すぐに彼は帰ってきた。
俺の顔を見てびっくりしたようで「なんで」って言ってきた。
嗚呼、そうかお前は体調不良やらその時に抱え込んだタスクにソロライブとか色々あって少し前のことには忘れてしまったんだな。
たかだか1週間前のことなのに。
なんて勝手に心のなかで酷く傷つく。
頭の中でぶわぁと考え事を広げていると返事することができず彼もただただ配信に向かって準備をしていた。
あーあ、その配信も元は休んでくれりゃよかったのに。
俺はあえて23日にしたのにな。
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配信が始まったときにはもう足が勝手に自分の家へと足を運ばせていた。
俺が約束のことを話したとて「忘れてた」なんて言われる方がたまったもんじゃない。
俺はこれのためだけに今日もたくさんのタスクに追われていたというのにすぐに終わらせた。気合と後の楽しみを糧に。
それなのに彼は俺が帰るときにも仕事をしていて、彼の家に凸ったときにはまた活動のこと。
リスナーにとっては聖なる日に自分の好きな人と画面越しでさえも会えることを喜ばしく思うだろう。
でも俺は違う、俺は配信者と視聴者というか関係じゃないから、彼氏と彼女というれっきとした関係性をもっているから。
画面越しで会うだけじゃ物足りない、仕事で会うというだけじゃ物足りない、聖なる日には聖なる気持ちで共に1日を終えたい。
クリスマスイブも配信でさえも過ごせなかった。
結局電話越しだった、その後家に会いに行こうとしたのに「来ないで、移ったら大変でしょ」って電話しに笑いながら言われた。
ちくちく、ざくざく
精神的に言葉の武器を使って俺に攻撃してくる彼は1ミリたりとも悪意があるとは思えない。
そういうことを意図的にするようなやつではないし、そもそもあいつにそんな理由なんて無い。
妬み、嫉妬。そんなんで彼がくだらないことをするほどくだらない人物じゃないから。
「………楽しそうやな」
彼が大きく「あはは」と個性的な笑みをこぼしたとき、そう俺もぽつりと呟いてしまった。
誰にも聞こえるはずのないその独り言は静かに消え去っていった。
「……なん、でやろ…」
言葉を発したと同時に雫が俺の頬を辿った。
カチッカチッカチッ…
時計の針が音を鳴らして時間が進んでいくことを知らされる。
時刻は22:45。配信が終わってからまだそんなに経っていないのかって思わされる。
まろからのメッセージもなにもないままこんなに時間を経ったと考えると非効率にも感じられる。
このままクリスマスは恋人ではなく仕事とにらめっこして終わりになるのか?
1年に1回しか無い、恋人持ちにとっては尚更大事なイベントなのに?
そんなの嫌だな。
なんて俺の中で結論づけてからはさすが俺、行動が早かった。早すぎた。
急いで車に飛び乗り、アクセルを踏み、安全だけどスピードをものすごく上げ彼の家に向かう。
まろの家に着いたらインターホンを押して彼が出てきてくれるのを待ってられるほど俺の気持ちに余裕はなかった。
互いに交換した家の合鍵を使い、がちゃりと回し、家の中へ入る。
ドタドタと急いでこちらに向かってきた彼と顔を合わせると、とてもびっくりしたような表情を浮かべていた。
「なんでここに……っ、お前、仕事は…?」
「終わらせてきた。」
本当は終わっていないものもあほみたいにあるけどそんなん俺しーらね
体調不良って嘘つけばなんとかなるっしょ、仕事のことは明日の俺におまかせすればいいわけだし。
「っ、もう夜遅いねん…はよ帰って寝ろや…」
「寝る前にまろの顔見ないと俺寝れないや」
「なに、それ…」
笑いながらも目を潤わせてこちらに抱きついてくる。
もうこれだとどっちが彼氏かわかんないじゃん
なんて思いながらも頭を撫でてやるとぎゅーとしがみつくように引っ付いている。
「ないこ、すきだよ」
「俺もすき」
そういって俺達は口付けを交わした。
end
コメント
2件
だぁ~!!!!!!!!!!!! タイトルからもうめっちゃ好きです😭✨