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「別れよ、私達」
「………は?」
放課後の学校の屋上に呼び出された男冬雪に発した言葉は彼を驚愕させた。かつて、この学校の屋上で告白された時と同じ位に
「…なんで?」
「それは……」
彼女の夏海は言葉を発するのを躊躇った。
「……私、引っ越す事になったの。だから…」
「引っ越すから?……」
引っ越すから別れるは分かるかもしれないが…嫌、分からない。と言うよりも引っ越す事は聞いた事もなかった。恋人である筈なのに彼女の事情を知らなかった
「それ、何時決まったの?」
「…………ごめん。結構前から決まってたけど言うのが遅れて」
「でも、引っ越すから別れるは違うと思う。遠距離恋愛とかもあるからさ」
「ごめん…怖いの。だから…私……!」
「ッ夏海!」
背中を向けた夏海を冬雪は追いかける事が出来なかった。一体、夏海に何があったのだろう。普段は活発なのに今は青ざめていた。誰かに脅されたように
「夏海…」
下駄箱に戻り夏海の靴がある所を見たがもう靴はなかった
「あれ〜?冬雪君だぁ!」
「…嗚呼、愛華か」
「どうしたの?何かあった?」
「いや、特に何も」
話が続かない。と言うのも冬雪は愛華の事が嫌いに近い苦手であり話したくも無いし喋りたくもなかったのである。なぜそこまで苦手意識がたかいのかは…
「ねぇ冬雪君…私と付き合う?」
「……あ?」
そう、その言葉。付き合っている人にありえない言葉を言うから苦手なのだ
「ねぇ〜付き合って~」
「俺には彼女がいるんだよ…他を当たれ」
「えー夏海ちゃんより私の方がいいよ?」
「は?」
「だってさ、あの子だらしないし女の子ぽくないじゃん?それに名前全くあってないし!だって冬雪と夏海だよ?全くの逆じゃん!」
冬雪の顔はどんどんと暗くなる。愛華がどんどんと冬雪の地雷を踏むからだ
「お前……!」
「あれ?冬雪じゃん!」
突然旧友の亮が話に入ってきた。その声は冬雪と愛華にとって救いであった。もう少ししたら冬雪が愛華に殴りかかっていたかもしれない。然し、愛華はその救いの言葉を分かっていなかった
「あっ取り込み中だった?」
「ううん!大丈夫だよ!」
「帰りか?亮」
「そうそう。部活帰り」
「帰ろうぜ」
「じゃあねぇ返事待ってるよー!」
俺は待ってねぇわと言いかけたが何とか堪えた。今は愛華の事が見たくなかったのである
「いや〜まだお前狙われてたんだな」
オレンジ色に染まる道を歩きながら亮は言う。元から夏海と付き合っているのに愛華が言い寄ってくると冬雪が悩んでいるのを知っていて、今回も冬雪が嫌な顔をしながら愛華と話していたので止めに入ったのだ
「何時もすまんな。彼奴との会話を止めてくれて」
「まぁな、俺も苦手だし」
「そういえばお前、好きな人とはどうなんだ?」
はっえっえっ?と明らかに動揺する亮。実は亮にも好きな人がおり冬雪と中学で出会う前の小学校からの幼馴染である
「お、なんだ?彼女持ちアピールか?」
「いや…まぁな」
言えなかった。さっき、彼女に別れれよと言われた事を。亮は夏海と冬雪はお似合いのカップルだと考えており、何時も二人が一緒に居られるようと気遣ってくれていた。その為別れたことを伝えたら彼は驚き、同情する。冬雪にとってそれは嫌なのだ
「で、好きな人の事?まぁあ…その……諦めたんだよな」
「は?………何で?」
「今のアイツ幸せそうなんだよ…それで俺が割って入ったら駄目だろ?それに俺…アイツが笑ってくれたら嬉しいから……だから…」
ポツポツ話す彼をみて冬雪はやっぱり此奴は優しいなと思う。どんな時でも相手を優先する亮の優しさは別れた事を言わない冬雪なりの優しさとは違った
ピーポーピーポー
場に合わない機械音が鳴り響く
「ん?パトカー?」
「いや、これ…救急車だ」
この町は治安はいい方で救急車のサイレンは年に1.2回ぐらいしか聞かないのでパトカーと間違えてしまうのは仕方がない。更に近くの隣町に行くためにこの町を通っているので近くでなっても通り過ぎていくだけだ。然し、どうだろうか。サイレン音は近くで止まりそしてまた鳴り始めた
「なんか…近くで止まってない?え、事件でもあったのか?」
「さぁ…?」
すると冬雪のバックから振動がし始めた。見てみると夏海から電話が来ていた
「もしもし…?」
『冬雪君!』
電話から出たのは夏海ではなく、夏海の母だった。普段は優しい声だが今は声を張上げていた
「えっと…どうしました?」
『今すぐ総合病院に来て!』
「えっ何で?」
『夏海が…!…轢かれたの…』
パリン
その言葉を聴いた時、冬雪の何かが壊れた
「最善を尽くしましたが…」
総合病院について通された場所は霊安室だった。夏海の母はむせび泣き父は手で目を隠し歯を食いしばっていた。夏海は目を閉じていた。眠っているように、寝息を立てているのでは思う程だった
「…ウッ…アッ……ウッ…」
言葉が出ないとはこう言う事なのだろうか。喉が誰かによって締めらたよだった。夏海と呼びたいのに嗚咽が出て呼べれない。ただ、出てくるのは涙と自責心だった
もし、自分があの時夏海を呼び止めていたら、別れるなんて言わないでと言っていたら夏海は死ななかったのではと自分を責めたたていた。もし、あの時、自分に勇気があったら変わっていたのかもしれない
夏海の遺影をみつめていた。遺影に映る夏海の顔は笑顔で周りの菊と全くあっていなかった。もう葬儀は終わり火葬が始まる。
「冬雪、行こうぜ」
「あぁ、分かった」
亮に呼ばれ葬儀場から離れる。火葬場まで行きたかったが親族以外は行けれないので此処で夏海とは最後になる
「……寂しいな」
「…そうだな」
「何時も夏海が話を出して広げてたしな…お前と違って」
「一言余計だな……」
「明日学校あるけどどうする?行くか?」
「流石に休みたい……」
「そうだよな…今お前隈酷いぜ。涙跡をあるし」
「あぁ…帰って寝るよ」
「おはよう冬雪君。体の方は大丈夫?」
少し久しぶりの学校についた冬雪の前に現れたのは冬雪の担任静原彩葉だった。冬雪と夏海が付き合っているのを知っており今回の事で冬雪が酷く悲しんでいるのも分かっていた
「おはようございます。まぁ、大丈夫にはなりましたよ」
「だるくなったら保健室行くんだよ?」
「えぇ分かりました」
「あっ冬雪君だぁ!久しぶり〜!」
冬雪が大の苦手としている愛華が近ずいてきた
「大丈夫冬雪君?とっても心配してたんだよぉ?」
「心配…そうか、そうなんだな」
あぁ、やっぱり苦手だと冬雪は思った。それでも自我を出さぬ様笑顔を貼り付けた。それに静原が目を見開いていたのは気付かないふりをしていた
「…二人とも、もう少しでSHRだからクラスに行きなさい」
「はぁーい」
「はい」
学校を休んだ冬雪は家で夏海との思い出を振り返りそしてある決断をした。それは復讐だ
「なぁ愛華」
「なぁに?」
「俺と付き合わないか?」
1人の人間を地の底に叩きのめすまでの長い復讐が最愛の人が死んだ事が後押しとなり、動き出した。動き出してしまった
第一話