放課後、教室の片隅で静かに座る雷。
過去の経験で、心の内を誰にも見せられない――そう思い込んでいた。
しかし、兄の電気だけは、違った。
「あのさ、雷!」
電気が笑顔で近づいてくる。
「俺は、雷が自分のこと『俺』って言うの、かっけーと思う」
雷は表情一つ変えず、ただ静かに視線を向ける。
口も動かさず、うなずくこともせず、ただそこにいるだけだ。
だが、その一言が、雷の心の奥に届く。
過去に言われた無神経な言葉や、傷ついた出来事の数々――
すべては消えなくても、少なくとも理解者がここにいることを感じる。
(電気だけは……分かってくれる)
心の中で呟く雷。
その思いは表には出さない。
無表情のまま、冷静に、次の行動へと意識を切り替える。
それでも、胸の奥にわずかに温かさが広がる――
無表情な雷にとって、それは小さな、しかし確かな希望だった。






