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――春日山城。
「さて、皆様。お集まりいただき、感謝いたす」
長尾景虎は、集まった者たちを見渡した。
そして、方円を横目で見ながら続ける。
「必ずや、憲政様をお戻しいたそう」
「うむ」
佐竹義重が頷く。
「北条は侵犯を繰り返す逆賊じゃ」
「佐竹は全面協力いたす」
「海は我らにお任せあれ」
里見義堯も続く。
「水軍で、必ずやお役に立とう」
「憲政様……」
長野業正は、静かに拳を握る。
「必ず、お戻しいたす……」
「……^^」
方円は微笑んでいた。
「皆様の力が集まれば、かなり有利に戦えましょう」
「ですが……」
私は地図へ目を落とす。
「小田原城が、面倒です」
「何せ、あの城は日ノ本でもかなりの名城ですからね」
「三代に渡って改築を繰り返しておりますし……」
「何より、あの総構えが面倒で面倒で」
「籠もられた後に今川の援軍が来たら……」
「ですので、対策を考えねばなりません」
私は景虎を見る。
「景虎殿は戦が大変お強いとか」
「何か策はありませんかね?」
「…………」
景虎は固まった。
(こやつ……いきなり丸投げか???)
「……確かに、小田原城は面倒だな」
「総構え、恐るべし……」
「うぬぬ……」
景虎が地図を睨む。
「あと、小田原までの道中にある忍城も気になりますわね」
方円が続ける。
「あそこも周りの沼が厄介な、かなりの堅城で……」
「元は上杉の城ですから、戻ってくださると信じておりますが」
「もし、北条に従い続けていたら……」
「……」
方円は、佐竹と里見をちらり。
「(⊃д・,,))チラチラ〜」
「…………」
佐竹義重と里見義堯は、顔を見合わせた。
(……こいつ、洞察力が恐ろしいな)
(圧力まで感じる……)
(信用ならんが……)
(実力は本物か……)
(くそっ、女と甘く見ておった……)
「まだ小田原の攻略を考えておる」
景虎が地図から顔を上げる。
「チラチラ見ないでくれ」
「まあ、そうですか^^」
方円はにっこり笑う。
「忍城の件は、某に任せてくれませぬか」
業正が口を開いた。
「必ず、こちらになびかせましょう」
「小田原城の攻略に、皆様は力を割いてくだされ」
「……!」
方円は業正を見る。
(おそらく、北条は小田原に全てを懸けるはず)
(業正殿が忍城をこちらへなびかせられたら……)
「上杉の忠臣、業正殿がやってくださるのなら……」
「私は頼もしいですね」
「賛成です」
「さて、あとは小田原……」
方円は地図を見つめる。
「ふむ……」
「私の考えとしては――」
「交代で包囲し続ける、というのはいかがでしょうか」
「全員で包囲しますと、やはり二ヶ月が限界でしょうから……」
「ですが、交代で包囲していれば、かなり長く包囲できるはずです」
「…………」
方円は穏やかな表情を浮かべる。
「あくまで、表向きは……ですが」
景虎が眉を上げる。
「……確かに」
「全員で包囲すれば、二ヶ月が限界だろうな」
「特に我らは越後からの出兵となる」
「兵站がかなり長い」
「交代で包囲するのであれば、大変助かる」
(……あの一瞬で、包囲の限界を計算したというのか)
(やはり、油断ならぬやつ……)
「ふむ」
佐竹義重が腕を組む。
「女に従うのは癪だが……」
「交代包囲自体は悪くない」
「休ませることなく、嫌がらせですな」
里見義堯が笑う。
「侵犯してきたことを後悔させるくらい、定期的に海から襲撃してやる」
「佐竹殿」
業正が苦笑する。
「そのような言い方は宜しくないですぞ」
「方円殿にも、色々と思うことがあるのだ」
「いえ、良いのですよ」
方円は静かに笑う。
「兄がしてきたことを考えれば……」
「疑われるのは、仕方のないことかと……」
そうして、夜が明けるまで――
話し合いは続けられた。
小田原を囲む者。
海から攻める者。
忍城を動かす者。
そして、越後から兵を率いる者。
それぞれが、それぞれの思いを胸に抱えていた。
憲政を取り戻すため。
北条に報いを受けさせるため。
荒らされた領地を取り戻すため。
そして――
二度と、同じ犠牲を生まないため。
それぞれの思惑を抱えた戦が、
今まさに、始まろうとしていた。
コメント
1件
第九章、読み終わりました……! 方円の計算高さと、それに気づきながらも協力せざるを得ない武将たちの駆け引きがすごく好きでした。特に「交代包囲」の提案シーン、一瞬で限界を計算する頭の回転の速さにゾクッとしました。そして業正が「忍城は某に」と手を挙げた場面、彼の覚悟が伝わってきて胸が熱くなりました。それぞれの思惑が交差する剣呑な空気感がたまらなかったです。琴寧さんの筆致、本当に丁寧で読み応えあります。次話も楽しみにしてますね🥀
富来 えび
122
#自分用
富来 えび
20
һагυ_彡
238