あの日元貴と喧嘩した僕は泣くのを我慢して家に帰った。
けど家についた途端に抑えきれなくなって、もういいかなぁって声を上げて泣いてしまった。
「なんで···っ」
なんであんな事言っちゃったんだろう。ごめんねって謝っちゃえば良かったのに、つい普段いい子でいようと我慢していた気持ちがあの時は抑えきれなかった。
「元貴のばかっ···僕の馬鹿···」
元貴を捨てる?
そんなこと絶対に有り得ない、だってずっと一緒にいるって決めたんだもの、元貴が居ないと生きていけないもの。
なのに悲しくて苦しくて···悔しさもあって飛び出して来てしまった。
元貴に嫌われたくないのに、感情がぐちゃぐちゃで、電話にも出れなくてメッセージに返事も出来なかった。
「こんなのやだよ···」
いつの間にか気付けば泣きながら眠っていたみたいで気付けば朝になっていた。シャワーを浴びながらまた少し泣いた。準備を済ませ仕事に行って元貴の声を聞いたら謝りたいけどまた泣いちゃいそうで、出来るだけ感情に蓋をして泣きそうになるのをぐっと我慢して1日を過ごした。
帰りに若井が元貴借りるねって話しかけてくれたけど僕は何も言えず、お疲れ様とだけ返して家に帰ってからぼんやりとしていた。
ついウトウトしていて気付けば遅い時間になっていた。
元貴は今ごろ若井といるのかな、いいな、僕も元貴に会いたい。
そう思いながらまたぼんやりとしているとスマホが鳴って見れば若井からだった。
「もしもし···」
『起きてた?今、家にいる?ドア開けて、良いもの買ってきたよ!』
ドアを開けると若井が立っていて、お邪魔しまーす、と入ってきた。
「···元貴は?」
「ちょっとだけ話して解散した、家にいると思うけど」
「何しに来たの」
僕との話を聞いたのかなと思い、つい嫌な言い方になってしまう。若井はなんにも悪くないのに。
「ケーキ買ってきたんだよ、食べない?」
じゃーん、と見せてくれたのはフルーツたっぷりのケーキで、若井は既にお皿の用意に取りかかっていた。
「食べないとね、元気出ないよ」
「···ありがと」
ケーキの甘さと若井の優しさが染みてなんだか泣きそうになってしまう。
「どうやらその様子じゃ喧嘩したの後悔してるって感じ?」
「···僕が素直に謝ったら良かったのに余計なこと言って喧嘩しちゃった」
ケーキを食べ終えた若井はお皿を見つめながらうーん、と少し考え込んでいる。
「元貴から聞いた話だと涼ちゃんは悪くないと思うんだよね、元貴もそう思ってるみたいだし」
「えっ···僕は元貴が怒ってると思ってた···」
「元貴は涼ちゃんのことになると余裕なくなるからね、けど怒ったりしてないよ。どっちかというと涼ちゃんに別れるって言われたかもってすっごく焦ってる」
あんなに曲書いてるときはいろんな言葉が出てくるくせに大事な時は言葉が足りないなんてね、と若井が笑った。
「僕、別れるなんて言ってないよ···」
「なら良かった、そんなことになったら俺すごく困るから···まぁ、元貴の気持ち聞いてあげて」
「うん···ちゃんと聞いてみる」
「それに涼ちゃんも我慢せずに思ったことは伝えなきゃ、それが大事って言ってたくせに」
そうわかっていながら元貴のことが大事になればなるほど嫌われたくなくて面倒だとか思われたくなくて我慢してた部分はある。
「だって大好きなんだもん···」
「だからこそ、でしょ。元貴にもそう言ってあげて、涼ちゃんと話出来なくてあいつ瀕死状態なんだから」
そう言って若井はじゃあね、また明日と帰って行った。
若井が来てくれたおかげでちゃんと話しなきゃ、という気持ちになれた。
明日は元貴と仲直り出来ますように。
コメント
7件
すれ違ってて、可愛い2人が好きです♥️💛
藤澤さんと話ができないだけで瀕死状態まで弱る大森さんの打たれ弱さが可愛い❤ (〃⊃ω⊂〃)キュン💘