テラーノベル
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桜がもうすぐ散ってしまいそうな春の放課後。
ᴿⁱᵏᵘ「また同じクラスでよかった」
隣でそう呟くのは、幼馴染の前田陸。
「……ね、おんなじでよかった。」
楽しいような、落ち着くような、
なんとも言えないこの時間の居心地が良くて、遠くの桜の木をぼーっと眺めながら返事をする。
ぱっと華やかに咲いたと思った桜の花は、気が付けばすぐに散ってしまう。
それがなんだか切なくて、儚くて、でも魅力的で。
ついこの前まで冬だったのに、なんて考えていれば、不意に陸と目が合う。
2、3回瞬きをしても変わらないその光景に
居ても立ってもいられなくなって、ふい、と目を逸らしてしまう。
ᴿⁱᵏᵘ「…ねえ」
ただの思い込みかもしれない。
けど、その声色は少し訴えかけるようで、弱々しくて、いつもよりも慎重に耳を傾ける。
ᴿⁱᵏᵘ「……好きな人、出来たんだよね」
一瞬、時が止まったような感覚に襲われて。
…なんだ、そんなことか、と。
思おうにも、思えなかった。
陸が好き、とか。
別に、そういうわけじゃない。
ただ、特別な存在ってだけで。
「……へえ」
とっさに口にした返事は、情けないくらいにそっけなかった。
彼女が出来ればこうやって話すこともなくなるかなあ、と考えてしまえば、
寂しいような、虚しいような、初めての感情が漂った。
ᴿⁱᵏᵘ「……」
ᴿⁱᵏᵘ「……でも、多分ずっと友達止まり。」
眉を下げて困ったように笑う彼を見てしまえば、
「……好きなタイプとか、知らないの?」
どく、どく、と一定の速さで脈打つ心臓に気付かないふりをしながら、
平然を装って質問を投げかける。
ᴿⁱᵏᵘ「……うん」
悔しいような寂しいような、そんな陸の声色が、薄暗い教室に吸い込まれて。
陸は少し寂しそうに笑って言った。
ᴿⁱᵏᵘ「…それがわかったら苦労しないよ」
少しの沈黙が、2人を柔らかく包みこんで。
ᴿⁱᵏᵘ「……○○は、ないの?」
ᴿⁱᵏᵘ「…どんな人が好みとか。」
陸が言ったその言葉が、二人だけの空間に響く。
反射的に顔を上げれば、少し照れたようにして頬杖をつく君。
ᴿⁱᵏᵘ「……もういっそのこと、早く気付いてくれたら良いのに…」
君が呟いたその一言は、まっすぐで、
でもやけに重くて、私の心に焼き付いて離れなかった。
まだ、わからない。
けど、この瞬間、
君と私の間で小さな花の蕾が少し、ほんの少しだけ、音を立てた。
そんな気がした。
「……多分、届いてるんじゃないかな」
なんとなくそう答えれば、君はふわり、儚く微笑んだ。
コメント
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主様の語彙力が神です、、