2025.1.25
青目線
一万五人の目線とスポットライトの中。
手を広げる。
白黒の頭が揺れる。
飛び込んできた俺よりも少し小さな身体をしっかりと抱き寄せ、想いを伝える。
「最高です!最高です、この人は!!」
「一生”友達”です!!」
「「「おつかれぇー!!!!!!」」」
それぞれ六種のアルコールが入ったグラスを掲げ、軽やかな音を立てる。
テーブルいっぱいに頼まれた六人分の料理。
この三日間の振り返りをしながら箸を伸ばす。
散々泣いた目元が痛い。
きっと今の俺もこの二人みたいな目をしているのだろう。
今日くらいはと口つけたアルコールに脳が撹拌される。
新しいお酒を頼む五人をよそ目にソフトドリンクを頼む。
もう、いいんじゃないか?
全てが片付くまで言うつもりはなかった。
彼に対して抱いている気持ち。
ずっと嘘をついてきた。
気付かれていると分かっていながらも、同じ気持ちであると分かっていながらも。
表舞台に立つ活動を続けていくうえで、いつか障害になってしまうからとしまい込んでいた。
彼が羽ばたくには邪魔であると。
互いに嘘をついてきた。
押し込めて押し込めて押し込めて、
無理矢理抑え込んでいた。
もういいじゃないか。
君にこの感情をぶつけても、
しっかり受け取ってくれるよね?
離れた場所から彼の隣へと移動する。
少し寂しげな顔をした彼は優しく微笑んだ。
「なかむ、本っ当にありがとう。めっちゃ楽しかったし最高の景色だった。手紙もありがとうね。」
「……ううん、こちらこそありがとう。」
「お酒入ってるけどこれは紛れもない本心だから。ちゃんと受け止めて。」
「……ん。」
「出会ったときから大好きだよ、なかむ。」
「…っ!」
「こんな俺だけど付き合ってくれる?」
あのときはあげられなかった顔をあげ、しっかりと目をみながら伝える。
ステージ上では見えなかった彼の涙。
大きな瞳からぽろぽろと溢れるそれがとても美しく、とても愛おしく感じた。
「あぁもう、泣かないで?そんなに嫌だった?」
「…やなわけないだろ!ばかっ!」
「うぉっ、よかったぁwこれ結構勇気いるねw」
胸元への衝撃で後ろに倒れないよう堪え、長めの茶髪をなでる。
「おせぇよ……一生友達だなんていうし、いってくれないんだと思ってた。」
「不安にさせてごめんね?あそこでパートナーっていっちゃうとなかむの活動に支障でるかもと思って。」
「ずっと待たせてごめんね。」
「俺のこと考えてでしょ。きんときが我慢してくれてたんだから全然待つよ。」
メンバーがいることも忘れて、いつもより高い体温を抱きしめる。耳まで赤いのは何のせいなのか。
毛先が荒れた髪から手を離し、濡れた頬に手を当てる。
上げさせた顔には潤んだ瞳と赤い目元。
困惑と期待が混じったような顔。
僅かに顔を近づける。
虹彩に写った俺と目が合った。
「ねーぇ、いちゃつきタイムおわったぁ?」
突然かけられたぶるっくのふんわりとした声に、2人とも飛び跳ねる。
「それじゃ武道館お疲れ様改め、お前らやっとくっついたかおせぇよバカども、おめでとう会だな!」
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!