テラーノベル
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はるか🌸🍃
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雨の日の図書館は、いつも少しだけ静かだ。
大学生のハルは、窓際の席で古い画集をめくっていた。
美術史のレポートを書かなければいけないのに、白いキャンバスにただ青い絵の具を塗っただけの抽象画の前で、彼のペンは完全に止まっていた。
「これ、ただの青じゃん」心の中でそう毒づいたとき、隣の席に座っていた見知らぬ女子学生が、ふっと小さく笑った。
「それ、ただの青じゃないんですよ」彼女はハルの手元を覗き込み、声を潜めて言いました。
「『インターナショナル・クライン・ブルー』。宇宙の深淵とか、人間の孤独を表すために、その画家が自分で作った特別な青なんです」彼女の名前はアキ。
同じ大学の文学部だった。その日を境に、二人は図書館の窓際でよく話すようになった。
アキはいつも、ハルの知らない「世界の秘密」を教えてくれた。
「雨の匂いはね、ペトリコールって言うの。土の中のバクテリアが作る成分なんだよ」「夕焼けが赤いのは、光の波長が長いから。遠くまで届く光だけが、私たちの目に残るの」ハルにとって、ただの退屈な日常だった景色が、アキの言葉を通して色鮮やかに塗り替えられていった。
雨の日は憂鬱じゃなくなり、夕暮れ時は立ち止まって空を見上げる特別な時間になった。しかし、秋が深まる頃、アキは突然大学に来なくなった。
連絡先も知らなかったハルは、毎日図書館の窓際で彼女を待ち続けた。
窓の外の葉が赤く染まり、やがてすべて落ちてしまうまで。
冬になり、ハルは一人で駅前の美術館を訪れた。
そこには、あの日アキと見た「青い絵」が展示されていた。絵の前に立ったハルは、ハッとした。以前はただの退屈な青に見えたそれが、今はまるで、深く澄んだ夜空のように、あるいは言葉にできない切なさのように、ハルの心を激しく揺さぶった。「……そっか」ハルは小さく呟いた。この青がこんなにも美しく、そして少しだけ寂しく見えるのは、他でもない、君が教えてくれたからだ。世界はこんなにも、愛おしい秘密で満ちている。ハルはもう一度、その深い青をじっと見つめた。アキから貰った「新しい世界」を、これからずっと大切に生きていくために。
コメント
4件
語彙力が凄い…
ほう、、