朝の通学路。
制服のスカートを揺らしながら歩いても、心はどこか落ち着かなかった。
――昨日の夜。
「ご飯、ごちそうさま。ほんと美味しかった」
悠真が自分に向けてくれた言葉。
たった一言なのに、胸の奥に温かく残っている。
「……ほんと、バカみたい」
小さく呟いて、頬を両手で押さえる。
ただ“妹ちゃん”としての感謝だったかもしれない。
でも、聞いた瞬間の心臓の跳ね方を思い出すと、どうしようもなく顔が熱くなる。
横を通りすぎていく学生たちの笑い声の中で、咲だけがひとり、胸の鼓動を隠すように歩き続けた。