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放課後の昇降口。外はもうすっかり冷え込んでいて、吐く息が白い。
「寒っ……」
🌸が腕をさすりながら言うと、隣を歩く宮侑がちらっと横目で見る。
「ほら見てみ。マフラーちゃんと巻かんからや」
「ちゃんと巻いてるし」
「全然。俺の基準やと甘い」
そう言いながら、侑は🌸のマフラーをぐいっと引き寄せて、少し近づく。
「ちょ、近いって」
「ええやろ。彼氏やし」
当然みたいに言われて、🌸は小さくため息をつく。
「で、さっきの話やけど」
「さっきの?」
「クリスマスや。空いとる言うたな?」
「うん……言ったけど」
その一言を待ってましたと言わんばかりに、侑がニヤッと笑う。
「ほな、その日は一日俺に使ってもらうから」
「一日!?」
「せや。朝から夜まで」
「長くない?」
「長い方がええやろ。逃げ道なくて」
冗談なのに、どこか本気混じりの目で言われて、🌸は思わず立ち止まる。
「侑、たまに怖いよ」
「今さら気づいたん?」
くすっと笑いながら、侑は🌸の手首を軽く掴んで歩き出す。
「心配せんでも、ちゃんと考えとる」
「どんな?」
「まず朝は街出て、飯。🌸が前から言うとった店」
「覚えてたんだ」
「俺、🌸のことは覚える主義やから」
さらっと言われて、胸がきゅっとする。
「そのあと?」
「イルミネーション。人多いからな……」
そこで一瞬言葉を切って、🌸を見る。
「はぐれたら嫌やし、ちゃんと俺のそばおること。勝手にどっか行くん禁止」
「命令?」
「せやけど?」
悪びれない笑顔に、🌸は苦笑する。
「はいはい」
「返事が軽い。もっとちゃんと言え」
「……わかりました」
「よろしい」
満足そうに頷く侑に、🌸はつい言い返す。
「侑こそ、バレーの話ばっかしないでよ?」
「それは無理やな」
即答。
「でもまあ……🌸がおる前では、ちょっと控えたる」
「ほんとに?」
「信用せえへんの?」
少しだけ意地悪に顔を近づけられて、🌸は視線を逸らす。
「……信じる」
その様子を見て、侑はくっと喉を鳴らして笑う。
「かわい。そういうとこ」
「言わなくていい!」
「言うに決まっとるやろ」
そして、少しだけ声を落として続ける。
「クリスマスやしな。他の奴に取られる気、さらさらあらへん」
「取られないよ」
「それは俺が決める」
ドSな言い方なのに、手はしっかり優しくて。
「寒かったら言え。ココアも、上着も、俺が用意したる」
🌸は小さく笑って頷く。
「侑って、ほんと過保護」
「🌸限定やから」
そう言ってまた自信満々に笑う宮侑の横顔は、冬の空気よりもずっと熱を帯びていた。