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第8章『手を取る音』(たっつん視点)
夜のリビング、空気が少し落ち着いてきたころ。
うりりんがギターを片付けて、ひとりでベランダに出ていったのが気になって、たっつんもそっと後を追った。
「うりりん、寒ないか?」
「……ちょっと風、気持ちよかったから」
その表情はいつも通り静かだけど、どこか不安定だった。
「緊張してんの?」
「……うん。配信の弾き語り、ちゃんとできるか、不安で」
「なに言うてん。お前の歌、ほんまに素敵やん。
俺は、うりりんの歌声が一番好きや」
その言葉に、うりりんがふっと目を伏せる。
「……たっつんは、優しいから」
「違うよ」
思わず、たっつんはうりりんの手を取っていた。
「優しいだけで、こんなにドキドキせえへん」
触れた手が、小さく震えてる。
「うりりん、俺、お前のことが好きや」
小さな沈黙。
そのあと、うりりんの手が、ぎゅっとたっつんの手を握り返した。
「……ありがとう。
俺も、たっつんの隣にいると、心が落ち着くんだ」
その声は震えていたけど、まっすぐだった。