最初は尚子と尾山がペアに。
そして花崎、仙田、アリスが3人になった。
「なんでまたお前が混じるんだよ……」
花崎がアリスを睨む。
「いいじゃないですか!大丈夫。勝負に影響のない位置で雰囲気を楽しんでるだけですから!」
ヘラヘラ笑っているアリスをよそに、尾山が差し出した手を尚子はしょうがなく握った。
「それでは人数が多かった僕たちから行きますよー!せーの!」
アリスが言うと、嫌々手を繋いだ3人がこちらに向かってくる。
『勝ってうれしい花いちもんめ♪』
ーー『負けて悔しい花いちもんめ♪』
『となりのおばさんちょいときいておくれ♪』
ーー『オニが怖くていかれない♪』
『おかまかぶってちょいときいておくれ♪』
ーー『おかま底抜け行かれない♪』
『ふとんかぶってちょいときいておくれ♪』
ーー『布団破れていかれない♪』
『あの子がほしい♪』
ーー『あの子じゃわからん♪』
『相談しましょ♪』
ーー『そうしましょ♪』
そこまで半ばやけくそでやると、アリス以外の子供たちはため息をついた。
「じゃあ、相談してください」
アリスは笑いながら言った。
尾山が舌打ちをしながら、相談するためにしゃがみこんだ尚子を見る。
「俺はハッキリ言ってどうでもいい。君が決めろ。だがまあ。アリス以外が妥当だろうな」
「……………」
尚子は尾山を見つめた。
こうして子供に戻ってしまえば、彼だってどこにだっている可愛い男の子だ。
「尾山さんは……どっちがいいですか?」
「―――だから、どちらでもいいから、君が―――」
「じゃなくて。生き返りたいですか?自殺がいいですか?」
「……………」
尾山は意外そうに尚子を見下ろした。
「……君は?」
ーーー質問を質問で返されてしまった。
尚子は少し考えた後、言った。
「―――自殺がいいです。どうせ生き返っても、親に愛されてないんで。ってもお母さんはもう、いないんですけど」
「――――」
尾山は少し考えこんだ後、仕方なさそうに尚子の前にしゃがみこんだ。
「子供を愛していない親なんていない。もし君のお父さんがそうなら、お父さんは―――」
「?」
「愛し方を間違えているだけだ」
『きーまった♪』
突然3人が叫んだ。
慌てて尚子たちも立ち上がり、『きーまった♪』と叫んだ。
『土井さんがほしい♪』
名前を呼ばれて胸が熱くなる。
きっと仙田が提案してくれたのだ。こっちの人数が少ないから、引き込もうとしてくれている。
『仙田さんが欲しい♪』
こちらは仙田にした。できればすぐそばにいてほしい。
仙田と尚子が前に出る。
『ジャンケンポン』
勝ったのは尚子だった。
仙田がこちらに加わる。
彼は尚子の手を取るとニコッと笑った。
『勝ってうれしい花いちもんめ……』
尾山の視線が、先ほどまで幼稚園が建っていた方向へ向く。
『負けて悔しい花いちもんめ……』
皆の視線もつられてそちらを向く。
「ーーー今度は小学校かよ……」
キーンコーンカーンコーン
仙田が呟くと同時にチャイムが鳴った。
そこは色とりどりの幼稚園が消え、白壁の小学校が建っていた。
自分たちの身体を見下ろす。
赤と黒のランドセル。
Tシャツにはネームが付けられ、ポケットに収まらないハンカチとティッシュがはみ出している。
「だらだら続けられたんじゃ困るので」
アリスは手を離しまた人差し指を立てた。
「みなさんには、少しずつ成長していただきます」
「はあ?」
仙田が睨む。
「誰かが負けるのが先か。年老いて全員死ぬのが先か。そうなったら全員仲良く餓鬼道にでも落ちて貰おうかなー」
アリスの微笑みを見てから、尚子は縋るように仙田を見つめる。
「ーーー大丈夫だって」
仙田が尾山に聞こえないほどの声で言う。
「焦んな」
尚子は頷いた。
仙田がこちらに加わる。
彼は尚子の手を取るとニコッと笑った。
『勝ってうれしい花いちもんめ……』
尾山の視線が、先ほどまで幼稚園が建っていた方向へ向く。
『負けて悔しい花いちもんめ……』
皆の視線もつられてそちらを向く。
「ーーー今度は小学校かよ……」
キーンコーンカーンコーン
仙田が呟くと同時にチャイムが鳴った。
そこは色とりどりの幼稚園が消え、白壁の小学校が建っていた。
自分たちの身体を見下ろす。
赤と黒のランドセル。
Tシャツにはネームが付けられ、ポケットに収まらないハンカチとティッシュがはみ出している。
「だらだら続けられたんじゃ困るので」
アリスは手を離しまた人差し指を立てた。
「みなさんには、少しずつ成長していただきます」
「はあ?」
仙田が睨む。
「誰かが負けるのが先か。年老いて全員死ぬのが先か。そうなったら全員仲良く餓鬼道にでも落ちて貰おうかなー」
アリスの微笑みを見てから、尚子は縋るように仙田を見つめる。
「ーーー大丈夫だって」
仙田が尾山に聞こえないほどの声で言う。
「焦んな」
尚子は頷いた。
◇◇◇◇◇
次にじゃんけんで前に出たのは、尾山と、アリスだった。
「花崎さんを負けさせるの?」
聞いた尚子に、
「そういうわけじゃねえけど。きっとあいつ、負けないだろ」
仙田はアリスを立てた親指で差した。
「そうだろうな」
尾山も賛同する。
「勝ちはしないが負けもしない。ターゲットからは外すべきだ」
そしてジャンケンに負けたのは尾山だった。
尾山を向こうチームにとられ、尚子と2人きりになった仙田は、花いちもんめを唄いもせずに何か考え込んでいたが、“相談”の段階になってひらめいたように尚子を見つめた。
「思いついた」
「―――何が?」
「絶対に負けない方法だ……!」
「?」
「このゲーム、俺たちは絶対に勝つ!」
そう言うと仙田はこちらを見つめ、ニヤリと笑った。
選ばれたのは、尚子と花崎だった。
『ジャンケンポン!』
勝ったのは花崎だ。
仙田1人を残して、4人が手をつなぐ。
ここで仙田が誰かにジャンケンで負けたら、仙田の負けだ。
しかし――――。
こちらチームは残った仙田を選ぶしかなく、仙田は必ず、
『土井さんがほしい♪』
尚子を選ぶ。
仙田と尚子のジャンケン。
出すのはグーとチョキ。
負けた尚子は仙田と手をつなぐ。
これがもし、尚子が一人で残った場合も同様にする。
残った尚子は、仙田を選ぶ。
仙田がわざと負ける。
何回繰り返してもこのルールさえ、互いに守れば――――。
なるほど、負けることはなかった。
あとは誰かが偶然1人になり、ジャンケンに負けるのを待てばいい。
尚子は学ランを着た仙田と手を繋いで頷いた。
彼もセーラー服を着た尚子を見つめ頷いた。
ーーーブレザーを着た彼が、こちらを睨んでいることには、そのときは気が付かなかった。
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