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22 - 第22話 勝ってうれしい花いちもんめ

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2024年08月04日

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最初は尚子と尾山がペアに。

そして花崎、仙田、アリスが3人になった。

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「なんでまたお前が混じるんだよ……」

花崎がアリスを睨む。


「いいじゃないですか!大丈夫。勝負に影響のない位置で雰囲気を楽しんでるだけですから!」


ヘラヘラ笑っているアリスをよそに、尾山が差し出した手を尚子はしょうがなく握った。



「それでは人数が多かった僕たちから行きますよー!せーの!」


アリスが言うと、嫌々手を繋いだ3人がこちらに向かってくる。


『勝ってうれしい花いちもんめ♪』


ーー『負けて悔しい花いちもんめ♪』


『となりのおばさんちょいときいておくれ♪』


ーー『オニが怖くていかれない♪』


『おかまかぶってちょいときいておくれ♪』


ーー『おかま底抜け行かれない♪』


『ふとんかぶってちょいときいておくれ♪』


ーー『布団破れていかれない♪』


『あの子がほしい♪』


ーー『あの子じゃわからん♪』


『相談しましょ♪』


ーー『そうしましょ♪』


そこまで半ばやけくそでやると、アリス以外の子供たちはため息をついた。


「じゃあ、相談してください」


アリスは笑いながら言った。


尾山が舌打ちをしながら、相談するためにしゃがみこんだ尚子を見る。


「俺はハッキリ言ってどうでもいい。君が決めろ。だがまあ。アリス以外が妥当だろうな」


「……………」


尚子は尾山を見つめた。


こうして子供に戻ってしまえば、彼だってどこにだっている可愛い男の子だ。


「尾山さんは……どっちがいいですか?」


「―――だから、どちらでもいいから、君が―――」


「じゃなくて。生き返りたいですか?自殺がいいですか?」


「……………」


尾山は意外そうに尚子を見下ろした。


「……君は?」


ーーー質問を質問で返されてしまった。


尚子は少し考えた後、言った。


「―――自殺がいいです。どうせ生き返っても、親に愛されてないんで。ってもお母さんはもう、いないんですけど」


「――――」


尾山は少し考えこんだ後、仕方なさそうに尚子の前にしゃがみこんだ。


「子供を愛していない親なんていない。もし君のお父さんがそうなら、お父さんは―――」


「?」


「愛し方を間違えているだけだ」



『きーまった♪』


突然3人が叫んだ。


慌てて尚子たちも立ち上がり、『きーまった♪』と叫んだ。


『土井さんがほしい♪』


名前を呼ばれて胸が熱くなる。

きっと仙田が提案してくれたのだ。こっちの人数が少ないから、引き込もうとしてくれている。


『仙田さんが欲しい♪』

こちらは仙田にした。できればすぐそばにいてほしい。


仙田と尚子が前に出る。


『ジャンケンポン』


勝ったのは尚子だった。


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仙田がこちらに加わる。


彼は尚子の手を取るとニコッと笑った。



『勝ってうれしい花いちもんめ……』


尾山の視線が、先ほどまで幼稚園が建っていた方向へ向く。


『負けて悔しい花いちもんめ……』

皆の視線もつられてそちらを向く。




「ーーー今度は小学校かよ……」


キーンコーンカーンコーン


仙田が呟くと同時にチャイムが鳴った。


そこは色とりどりの幼稚園が消え、白壁の小学校が建っていた。


自分たちの身体を見下ろす。

赤と黒のランドセル。

Tシャツにはネームが付けられ、ポケットに収まらないハンカチとティッシュがはみ出している。


「だらだら続けられたんじゃ困るので」


アリスは手を離しまた人差し指を立てた。


「みなさんには、少しずつ成長していただきます」


「はあ?」

仙田が睨む。


「誰かが負けるのが先か。年老いて全員死ぬのが先か。そうなったら全員仲良く餓鬼道にでも落ちて貰おうかなー」


アリスの微笑みを見てから、尚子は縋るように仙田を見つめる。


「ーーー大丈夫だって」

仙田が尾山に聞こえないほどの声で言う。


「焦んな」


尚子は頷いた。


仙田がこちらに加わる。


彼は尚子の手を取るとニコッと笑った。



『勝ってうれしい花いちもんめ……』


尾山の視線が、先ほどまで幼稚園が建っていた方向へ向く。


『負けて悔しい花いちもんめ……』

皆の視線もつられてそちらを向く。




「ーーー今度は小学校かよ……」


キーンコーンカーンコーン


仙田が呟くと同時にチャイムが鳴った。


そこは色とりどりの幼稚園が消え、白壁の小学校が建っていた。


自分たちの身体を見下ろす。

赤と黒のランドセル。

Tシャツにはネームが付けられ、ポケットに収まらないハンカチとティッシュがはみ出している。


「だらだら続けられたんじゃ困るので」


アリスは手を離しまた人差し指を立てた。


「みなさんには、少しずつ成長していただきます」


「はあ?」

仙田が睨む。


「誰かが負けるのが先か。年老いて全員死ぬのが先か。そうなったら全員仲良く餓鬼道にでも落ちて貰おうかなー」


アリスの微笑みを見てから、尚子は縋るように仙田を見つめる。


「ーーー大丈夫だって」

仙田が尾山に聞こえないほどの声で言う。


「焦んな」


尚子は頷いた。


◇◇◇◇◇


次にじゃんけんで前に出たのは、尾山と、アリスだった。


「花崎さんを負けさせるの?」

聞いた尚子に、


「そういうわけじゃねえけど。きっとあいつ、負けないだろ」


仙田はアリスを立てた親指で差した。


「そうだろうな」

尾山も賛同する。


「勝ちはしないが負けもしない。ターゲットからは外すべきだ」



そしてジャンケンに負けたのは尾山だった。

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尾山を向こうチームにとられ、尚子と2人きりになった仙田は、花いちもんめを唄いもせずに何か考え込んでいたが、“相談”の段階になってひらめいたように尚子を見つめた。



「思いついた」

「―――何が?」

「絶対に負けない方法だ……!」


「?」


「このゲーム、俺たちは絶対に勝つ!」


そう言うと仙田はこちらを見つめ、ニヤリと笑った。



選ばれたのは、尚子と花崎だった。


『ジャンケンポン!』


勝ったのは花崎だ。



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仙田1人を残して、4人が手をつなぐ。


ここで仙田が誰かにジャンケンで負けたら、仙田の負けだ。


しかし――――。


こちらチームは残った仙田を選ぶしかなく、仙田は必ず、


『土井さんがほしい♪』


尚子を選ぶ。


仙田と尚子のジャンケン。

出すのはグーとチョキ。


負けた尚子は仙田と手をつなぐ。



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これがもし、尚子が一人で残った場合も同様にする。


残った尚子は、仙田を選ぶ。

仙田がわざと負ける。


何回繰り返してもこのルールさえ、互いに守れば――――。



なるほど、負けることはなかった。


あとは誰かが偶然1人になり、ジャンケンに負けるのを待てばいい。



尚子は学ランを着た仙田と手を繋いで頷いた。

彼もセーラー服を着た尚子を見つめ頷いた。



ーーーブレザーを着た彼が、こちらを睨んでいることには、そのときは気が付かなかった。




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