・セリフに♡がつきます
・めっっっっちゃちょっとだけど喘いでるので、これも一応センシティブにしてます
家に置いてもらってる以上、家事はやらないといけない。
これは、俺が考えたルールだ。
糸師凛だとバレないように、マスクとサングラスで顔を隠してスーパーへと向かう。
今日の晩御飯や明日のご飯の食材を買って帰った。
次は掃除。
初めて兄ちゃんの家に来たとき、人間味が無くてゾッとした。綺麗なのに、ほんとにここに人が住んでるの??ってくらい不気味さが。
なんだか『ワザと人が住んでるように作られた部屋』みたいな、アンバランスさを感じた。
塵1つ落ちないように掃除する。キラキラと今にも輝きだしそうなほど床がピカピカになった時、俺はようやく掃除を止めた。
⋯⋯次は、1番嫌な洗濯だ。
洗濯機の前に立つ。マスクをしているのに、甘い匂いが漂ってくる。俺は、この匂いが苦手だった。
⋯⋯いやまぁ、好きなのだけれど。この匂いを嗅ぎすぎると頭がポヤポヤしだすというか⋯なんだか変な気分になっちゃったりとか⋯⋯。
だから、パパッと終わらせてしまおうと思ったのだけれど⋯⋯。
兄ちゃんのシャツを手に取った瞬間、今までとは比べ物にならない甘い匂いが漂ってくる。
あ、これやばい。
きゅ〜っとお腹の奥の方が疼き始めた。
「なん、で⋯っ」
これじゃあ、まるで⋯⋯
Ωみたいじゃないか。
これ以上は危険な気がしたので、慌ててリビングに戻る。今日は洗濯出来なさそうだ。後で兄ちゃんに謝ろう。
「でも、なんで俺の体が⋯」
そう言っている間も、疼きは強まっていく。
は、は、と短い息を漏らしながら、立っていられなくなってその場に座り込んだ。
「にぃ、ちゃ⋯」
熱い。体が、熱い。
この熱さになんとか耐えようと、子供みたいに体を丸める。
息が荒くなって、頬が紅潮する。
「にいちゃん⋯はやく⋯」
自分でもはしたないことは分かってる。でも、そうでもしないときゅうきゅう疼く奥に、耐えられそうになかった。
ガチャリと扉が開く音がする。
あ、にいちゃん帰ってきた⋯
兄ちゃんの足音が寝室に向かってくる。
「凛?───って、お前⋯」
帰ってきた兄ちゃんが、目を見開く。お揃いのティファニーブルーの瞳が揺らいでいた。
甘い匂いに耐えられず、思わず寝室に持ってきてしまった兄ちゃんのシャツを抱きしめる。
にいちゃん。と呼んだ。その声は、思っていた以上に甘く、快楽が滲んでいた。
「兄ちゃんのシャツ⋯いい匂いする⋯♡」
「お前⋯⋯」
「こっち来て、兄ちゃん」
素直に歩み寄ってきた兄ちゃんを抱きしめる。
⋯⋯やっぱり、本物の兄ちゃんが1番いい匂いする⋯♡♡
「からだ、あつい⋯なおせ」
「⋯煽んな。止まんなくなる」
ギュッと寄せられた眉根を見て、兄ちゃんも我慢してるのかな。なんて思う。
サラリと兄ちゃんが俺の髪をかきあげて、項を噛んだ。いつものピリッとした痛みは来ず、その代わりに全身がヤバいくらいの快感に包まれた。
「ひぁ⋯っ!?♡♡」
「凛、可愛い」
「可愛い」の言葉でさらに気持ちいいのがきた。それを逃がそうとシーツの上でピンと足を伸ばす。
全身が溶けそうなほど甘い快楽。兄ちゃんが軽く触るだけでビクビクと体が跳ねた。
「ほんっと可愛い⋯もう少しだからな」
もう⋯すこし⋯?
その言葉の真意を確かめることは出来ず、俺の意識は暗闇に落ちていった。
目が覚めたら、Ωになっていた。
もう一度言おう。
目が覚めたら、Ωになっていた。
病院に行くと『Ω』だと診断された。どうやら兄ちゃんのフェロモンを強く浴び続けたせいで体がΩっぽくなってたらしい。
やはり昨日のアレはヒートが起きていて、兄ちゃんのシャツから甘い匂いが漂ってきていたのは、巣作りの原理、だそうだ。
そして、ヒート中に兄ちゃんが俺の項を噛んだことで、番関係になったっぽい。
ちなみに、ヒートが1日で終わった理由は、体が急にΩになって付いていけてないからと言われた。これからは普通に1週間ほど来るらしい。
他にも何やら難しい言葉を並べていたが、驚きすぎてあまり耳に入ってこなかった。
医者も驚愕していた。これはかなりのレアケースだそう。
ずっと強いフェロモンを浴び続ける⋯まさに、俺と兄ちゃんみたいにα同士の兄弟でたまーーーーに起きるのだそう。
まぁ、αの兄弟が生まれることなんてそうそう無いし、あったとしても兄弟で愛し合おうなんて1部の人達しか考えない。
まさに奇跡と言えるだろう。と医者は言った。
制御剤などの薬をもらってる家に帰って、兄ちゃんも向き合う。
「Ω⋯だった」
「そうか」
「それで、兄ちゃんと番になってた」
「そうか」
めちゃくちゃ冷静な兄ちゃん。
でも、傍から見たら表情は変わっていないだろうけれど、ほんの少し嬉しそうで、「兄ちゃんも、本当に俺と番になりたかったんだ」と俺も嬉しくなった。
「⋯で、ヒートとか色々あるから制御剤とかパンフレットもらってきた」
「ありがとな。後でしっかり読んどく」
「うん」
兄ちゃんがパンフレットをパラパラと流し読みしてる間に、ぎゅっと胸元で手を握る。
勇気を出して、兄ちゃんに話しかけた。
「俺、兄ちゃんと番になれて良かった」
兄ちゃんが目を細めて、軽く唇をあわせ合う。
「俺も、凛と番になれて良かった」
そう言ってくれて、本当に幸せで俺は笑顔を浮かべた。
冴side
凛はまだベットで眠っている。昨日散々鳴かせてやったからな。なんて思いながら、赤くなってしまった目元を撫でる。
凛は、Ωになった。
そして、俺と番になった。
凛は本当のことを知らない。
『番』を知ったとき、凛とこれになりたいと思った。でも、これが一般的ではない感情だということに気づいてしまったとき、どうしたらいいものかと考えた。
だから、凛には番は素晴らしいことなんだと教えた。
凛は俺を心酔していたので、そう刷り込ませるなんて容易いことである。
凛は俺と番になりたいと言い出した。
上手く行った。と誰も居ない部屋で1人ほくそ笑む。
次は凛をΩにする。俺と凛がαであることは、ほぼ確定していた。α同士では番になれない。
ならどうすればいいのか。
簡単だ、凛をΩにしたらいい。
強いフェロモンを浴び続けると、αでもΩになることが稀にあるらしい。俺がスペインに行ったり、凛がブルーロックに行ったりとフェロモンをあげられない時期もあったが、凛と一緒にいる時は、できる限りフェロモンを出すようにした。
家に帰ったときは驚いた。凛がヒートのようなものを起こして、俺のシャツを握っていたから。
心のどこかで思う。⋯成功した、と。
いつものように項を噛むと、凛は蕩けるように幸せそうな顔をしていた。確信した。俺たちは今、番になったと。
凛はΩになってもそれを受け入れ、更に「兄ちゃんと番になれて良かった」なんて言い出す。
可哀想な凛。番が素晴らしいことだと教えこんだのは俺なのに。いくらΩへの差別が減っているからといって、αの方が生きやすいのは確かなのに。
すやすやと何も知らずに眠っている凛を抱きしめて呟く。
「ぜってぇ、離さねぇからな」
───凛は、何も知らない。
彼が、凛をΩへと導いたことも。全てはマリオネットのように操られていたということも。
きっと、凛は知らずに死んでしまうのだろう。
⋯⋯全ては、このαの掌の上だと言うことに。
ここまで読んでくださって、ありがとうございます〜!!!
コメント
3件
最高でした、……😭♡