テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
#mrkm
希
665
希
1,006
2,634
「あ……っ、ほしるべ、お帰り……」
ガチャリと玄関の鍵が開く音がした瞬間、小柳はベッドから起き上がり、小さく首の鈴を鳴らしながら台所のドアへと向かった。
あれから数週間が経っていた。
今の小柳は、星導の前では完全に牙を抜かれた「お利口なワンちゃん」を完璧に演じきっている。星導が部屋に入ってくるたびに嬉しそうに駆け寄り、その大きな身体に自ら進んで身体を預け、薬を打たれる時も、激しく蹂躙される時も、ただ星導の名前だけを呼んで涙を流す。
そんな小柳の徹底した「依存」の演技は、星導の歪んだ独占欲を大いに満たしたようだった。
「ただいま戻りました、小柳くん。今日も良い子で待ていましたか?」
星導が満足げに目を細め、小柳の頭を優しく撫でる。
手の自由を奪っていたあの忌まわしい手首の錠は、もうない。星導の言うことを何でも聞くようになったご褒美として、両手の鎖だけは外してもらえたのだ。
その代わり、小柳の首には今、太い革製の首輪がぴったりと巻き付けられている。
そこから伸びる頑丈な金属製の鎖は、家の中心にある大黒柱へと繋がれていた。長さは、この軟禁場所である一軒家の中であれば、キッチンでも浴室でもどこでも自由に動き回れる。
けれど、玄関の扉や窓から一歩でも外に出ようとすれば、ガツンと首が締まってそれ以上進めなくなる――絶妙で、冷酷な長さだった。
「ほしるべ、お腹すいた……」
小柳が星導の胸に顔をうずめると、上着代わりに着せられている星導の少し大きなシャツの裾が、小柳の細い太もものあたりでゆらゆらと揺れた。
今の小柳の服装は、そのオーバーサイズのシャツ一枚だけだ。下着すら穿かせてもらえず、動くたびに生足が覗くその格好は、星導が「いつでも俺のモノとわかるように」と強いた屈辱的な拘束衣でもあった。
「ええ、今すぐ準備してあげますよ。大人しく待っていてください」
星導は小柳の額にキスを落とすと、食材を持ってキッチンへと向かった。その背中を見送った瞬間。
小柳の虚ろだった眼から、ドロリとした依存の光が消え失せ、かつての冷徹で鋭い白狼の瞳が鋭く戻ってきた。
(……今だ。あいつが飯の支度をしてる間が、一番集中できる)
小柳は首の鎖をできるだけ鳴らさないよう、慎重に、かつ素早く動き出した。
星導に依存したフリをしているのは、すべてこの自由な時間を作り出すための罠だ。手首が自由になり、家の中を動けるようになった今、小柳が狙うのはただ一つ。
【外部と連絡が取れる、連絡ツールの確保】
ヒーローの仲間たち――ライやカゲツ、あるいは組織の本部が、今も自分を必死に探しているはずだ。現在地を発信するGPSか、あるいは一度でもメッセージを送れる端末さえ手に入れば、この地獄から抜け出せる。
小柳は四つん這いに近い姿勢で、シャツの裾を気にすることもなく、チェストの引き出しを静かに開けた。星導が普段使っている私物や、資料、あるいは怪しげな薬品のボトルが並んでいる。
(スマホの予備……、インカム……、何でもいい。あいつが隠し持ってそうな場所に……)
カサリ、と書類の隙間に指を差し込み、星導がキッチンで包丁を動かす音や、火を使う音に細心の注意を払いながら、引き出しの奥の奥まで手探りで探っていく。
まだ、見つからない。
けれど、小柳の心は折れていなかった。首を絞めつける鎖の冷たさを感じるたび、あのピンク色の薬で狂わされた屈辱と、仲間たちの名前を呼ばれて怒り狂った星導の顔がフラッシュバックする。
(絶対に、あいつの目の届かないところで繋がってやる。……ライ、カゲツ……!)
かすかに爪が、何かの電子機器のような硬い感触に触れた。小柳は息を呑み、キッチンの星導の様子を伺いながら、さらに深く指を滑り込ませていく。
(あった……!)
書類の束の最奥、小柳の指先が捉えたのは、かつて任務用に使っていたものと同型の、古い小型インカムの予備だった。
星導に気付かれないよう、細心の注意を払ってそれをつまみ出す。通電ランプは消えているが、まだ完全に壊れてはいないはずだ。周波数を合わせれば、組織の本部か、あるいはライやカゲツの端末にSOSの信号を送れるかもしれない。
「よし……っ」
小さくガッツポーズをしかけた、その瞬間だった。トントン、と小気味よく響いていたキッチンの包丁の音が、唐突に止んだ。
「小柳くん」
背後から掛けられた、あまりにも高低差のない冷え切った声に、小柳の全身の毛が逆立った。心臓が跳ね上がり、喉の奥がヒュッと鳴る。
「……なぁに、星導」
慌ててインカムを引き出しの奥へ戻し、何事もなかったかのように振り返る。シャツの裾を整え、いつもの「お利口なワンちゃん」の笑みを作った。
しかし、リビングの入り口に佇む星導の目は、完全に据わっていた。その濁りきった両眼が、小柳の僅かに震える指先と、不自然に開いた引き出しをじっと見つめている。
「大人しく待っていてくださいと言いましたよね。そこで何をしていたのですか?」
「べ、別に……ちょっと、退屈だったから、資料でも見ようと思って……」
必死に言い訳を紡ぐが、星導は何も言わず、音もなく距離を詰めてきた。小柳は本能的な恐怖から後ろへ下がろうとしたが、首の鎖がガチャンと鋭い音を立てて突っ張り、それ以上の退避を許さない。
星導は小柳の目の前にひざまずくと、躊躇なく引き出しの奥へ手を伸ばし――そして、小柳が隠したばかりのインカムを、いとも容易く引っ張り出した。
「……あ」
小柳の顔から、一瞬で血の気が引いていく。
「なるほど。俺に依存したフリをして、手の鎖を外させ、家の中を這い回っていたのは、すべてこれのためですか」
星導の大きな手が、インカムをみしり、と音を立てて握りつぶす。プラスチックと基盤が粉々に砕け、床に転がった。
「ライですか? カゲツですか? まだあいつらに未練があって、俺から逃げ出そうとしていたんですね。……本当に、どこまでも俺を失望させるのが得意な野良犬だ」
「ちが、星導、待っ……!」
「待たない」
星導の顔から、一切の表情が消えた。
怒り狂っているのではない。完全に冷徹な、小柳の精神を「今度こそ完全に叩き潰す」という冷たい決意だけがそこにあった。
星導はポケットから、これまでに見たこともないほど巨大なシリンダーを取り出した。中には、あの忌まわしいピンク色の濃厚な媚薬が、ばかみたいな量、なみなみと満たされている。
「ひ……っ、いや、嫌だ! それは、それだけは、星導、お願い、ごめんなさいッ!!」
数週間分の演技は一瞬で剥ぎ取られ、小柳は涙をボロボロと流して首を振り、必死に床を掻いて逃げようとした。しかし、首輪の鎖を星導にグイと力任せに引かれ、仰向けにベッドへと引きずられる。
「お仕置きの時間ですよ、小柳くん。そんなに外の世界が恋しいなら、二度とそんなことを考えられないくらい、その脳みそをこの薬でドロドロに溶かしてあげます」
「いやぁぁッ!!」
星導は小柳の細い両手首を片手で完璧に押さえつけ、その太ももを割って馬乗りになった。
小柳が顔を涙と汗でぐちゃぐちゃにして「嫌だ、死んじゃう、許して」と叫ぶのも一切無視し、太い針をその白い首筋へと容赦なく深々と突き立てた。
「――っ、が、あ、ひぁぁぁぁぁぁッ!!!!!????」
信じられない量の淫熱が、一気に、暴力的な速度で血管へと流し込まれていく。
その瞬間、小柳の身体は限界を超えて弓なりに激しく跳ね上がった。これまでの投与とは次元の違う、脳髄を直接バーナーで灼かれるような凄まじい快感の津波が、一瞬で彼の全神経を蹂躙していく。
「あ、は、あぁぁぁッ!!! 熱い、頭壊れる、ほしるべ、星導、あ、ひぁぁぁッ!!」
完全に押し切られる頃には、小柳の眼はぐにゃぐにゃに白を剥き、開いた唇からは締まりのない涎がシーツへトパトパと溢れ出していた。
あまりの快楽の衝撃に、身体が激しく痙攣し、シャツの裾を大きく乱しながら腰が勝手にピクピクと跳ねる。
「ライの名前は? カゲツの名前は? ウェンでもいいですよ。ほら、呼べるなら呼んでみてください」
星導は空になった巨大なシリンダーを投げ捨てると、すでに理性が粉々に砕け散り、ただ熱に浮かされてハァハァと鳴くだけの小柳の髪を乱暴に掴み上げた。
「あ、あ……、らい……、かげ……、つ……? だれ、それ……あ、熱い、おなか、あついよぉ……っ」
薬の過剰摂取によって、小柳の脳はついに仲間の名前すらも認識できなくなっていた。ただ目の前にある星導の存在と、身体を襲う圧倒的な淫楽だけが彼の世界のすべてになる。
「ええ、知らなくていいんです。」
星導は小柳のオーバーサイズのシャツを無造作に捲り上げると、薬の恐怖と快感でヒクついている最奥へと、自身の猛り狂った質量を躊躇なく、根元まで一気に突き立てた。
「――ひ、あぁぁぁぁぁぁぁッ !?っ」
喉を裂くような絶叫が、静かな部屋に木霊する。
裂けるような痛みすらも、使われた媚薬の力によって瞬時に凶悪な快楽へと変換され、小柳の脳をさらに狂わせていく。
星導は容赦のない速度で腰を打ち付け、一撃ごとに小柳の華奢な身体がベッドの上で激しく揺れ、首の鈴がチリンチリンと狂ったように鳴り響いた。
「あ、あ、ほしるべ、星導、すごい、あ、は、ぁぁッ! 俺、もう、にげない、逃げないからぁッ!!」
「当然です。小柳くんはもう、俺の薬と、俺の身体がなければ、呼吸の仕方も分からなくなるんですから」
何度も、何度も、壊すように最奥を抉られ、小柳の瞳からは完全に光が枯れ果てた。
かつて組織の誰もが恐れた白狼は、今度こそ完全に死んだ。残されたのは、ただ星導の名前だけを泣きながら呼び、その凶悪な質量を欲しがって自ら腰を振る、哀れなお仕置きされている人形だけだった。
あの「お仕置き」の日から、さらに数週間が経っていた。
尋常じゃない量を使われた薬物は、小柳の脳から逃亡の意志も、かつての相棒たちの名前も、そのすべてを冷酷に灼き尽くした。
今や小柳の身体は、星導から与えられるピンク色の薬と、その凶悪な質量がなければ、悍ましい悪寒と渇きで狂ってしまうほどに書き換えられている。
「……ん、ぁ……っ、ショウ……」
ベッドの上で、星導の少し大きなシャツ一枚だけを身にまとった小柳が、とろんと濁った目を開けて、隣に座る男の服の裾を弱々しく引っ張った。
手の鎖を外された代わりに首につけられた革の首輪は、今も家の中から一歩も出られない長さで小柳を繋ぎ止めている。だが、今の小柳はもう、外の世界に出たいとすら思わなくなっていた。
「おや、目が覚めましたか、ロウ」
星導が、かつてないほどに満足げな、酷く優しい笑みを浮かべて小柳の頭を撫でる。
完全に調教され、牙を抜かれたご褒美として、星導は小柳のことを「ロウ」と呼び、小柳には自分のことを「ショウ」と呼ばせるように、無理やり縛り付けていた。
最初は「そんなの呼べるか」と拒絶した小柳だったが、そのたびに「注射の時間」が引き延ばされ、薬物の禁断症状による地獄のような渇きを味わわされた結果、今では条件反射のようにその名を唇から零すようになっていた。
「ショウ……、あたま、ぼーっとする……。また、注射、して……?」
小柳は自ら首を傾げ、先ほどまで星導の指が触れていた首筋の柔らかい皮膚を差し出す。手の自由があっても、その手は星導に縋り付くためだけにしか動かない。
シャツの裾から覗く白いただの生足は、すでに内腿のあちこちを星導の指痕やキスマークで赤黒く染め上げられ、完全にショウという男に身も心も依存しきった哀れなペットの姿だった。
「ええ、いいですよ、ロウ。今日も本当にお利口ですね。そんなあなたには、たっぷりとご褒美をあげましょう」
星導は嬉しそうに目を細めると、サイドテーブルから手慣れた様子でピンク色の注射器を取り出した。
小柳は針の先端を見ても、もう以前のように恐怖でイヤイヤと首を振ることはない。むしろ、これから全身を襲う圧倒的な淫楽を期待して、はだけたシャツの隙間から覗く足の指先を、期待と快感の予感に震わせるだけだった。すでに下腹部は、薬物を求めてヒクついた愛液をわずかに滴らせている。
「さあ、力を抜いてくださいね、ロウ」
「ん、あ……っ」
ちくりとした痛みの後、ドロドロとした濃厚な淫熱が血管に流れ込む。
瞬時に小柳の視界はピンク色に染まり、開いた口元から締まりのない涎がシーツへと滴り落ちた。自ら腰をピクピクと痙攣させ、星導の太ももにすり寄る。過敏になりすぎた神経が、衣類の擦れるかすかな摩擦さえも強烈な快感に変えていく。
「あ、は……ショウ、ショウ……、すごい、あつい……っ」
「はいはい、可愛いですね」
星導は空のシリンダーを放り出すと、薬で蕩けきった小柳の細い腰を引き寄せ、シャツの裾を大きく捲り上げた。露わになった、蜜を滲ませてピクピクと疼く熱い秘部へと、自身の猛り狂った巨大な質量を躊躇なく、根元まで一気に突き立てた。
「――っ、は、んぅ、あ」
脳髄を直接かき回されるような衝撃が小柳を襲う。小柳はただ、ショウという名前だけを何度も何度も泣きながら呼び、その激しい蹂躙を全身で受け入れる。
星導が最奥を抉るたびに、小柳からは透明な液体が溢れ出し、ベッドのヘッドボードに激しく叩きつけられる首輪の鎖がチリンチリンと狂ったように鳴り響いた。
――だが、この歪んだ平穏は、星導の気分次第で一瞬にして崩壊する。
「あ、う……っ、ショウ、それ、いたい、かも……っ」
行為の最中、あまりの激しさに小柳が苦痛からほんの少しだけ身体を逃がそうと、ベッドのヘッドボード側へ身を引いてしまった。首輪の鎖がチリン、と冷たい音を立てる。
その瞬間、星導の腰の動きがピタリと止まった。
小柳の髪を撫でていた手の力が強まり、ぐい、と頭皮を引きちぎらんばかりの力で小柳の顔を正面から固定する。その瞳から、先ほどまでの優しい光が一瞬で消え失せ、底の抜けた暗黒が覗いた。
「……今、俺から逃げようとしましたね。小柳くん」
「ひ……っ!?」
ロウ、ではなく、「小柳くん」という冷徹な呼び名。
それが、星導の機嫌が最悪に達した証拠であることを、小柳の身体は恐怖と共に理解していた。一瞬にして心臓が跳ね上がり、薬の快感が恐怖の寒気へとすり替わっていく。
「ちが、ショウ、ちがうの……っ、逃げてない、逃げてないからぁッ!」
「違わないでしょう。俺を受け入れるのが痛いなどと、贅沢な口を叩く野良犬には、またお仕置きが必要なようですね。小柳くん?」
「いやだ、小柳くんって呼ばないで……!ショウ、ショウ、ごめんなさい……っ!」
泣き叫びながら許しを乞う小柳の言葉など、機嫌を損ねた支配者の耳には届かない。
星導は完全に冷え切った目のまま、小柳の細い両足をさらに割るようにして肩に担ぎ上げると、最奥の最も敏感な一点を狙って、先ほどよりも狂暴な速度と質量で執拗に突き上げ始めた。
「――あ、が、あぁぁぁぁぁぁッ!!!???」
粘膜が激しく擦れ合う生々しい音が部屋に響き渡る。薬のせいで麻痺した理性の裏側で、激痛が瞬時に凶悪な快楽へと変換され、小柳の脳をさらに狂わせていく。
「何度でも思い出させてあげます。自分が誰のモノなのかをね、小柳くん」
「あ、は、が、あぁぁッ!ショウ、ショウ、俺はショウの、ショウの犬だからぁッ!!」
激痛と、恐怖と、怒涛の蹂躙。
呼び名一つで天国から地獄へと突き落とされる恐怖に震えながら、小柳はただ、星導の機嫌が直るのを祈るように、涙と涎で顔をぐちゃぐちゃにして、その凶悪な熱に溺れていくことしかできなかった。
♡300
コメント
1件
うわっ……第3話、読んだよ……。 いや、もう、最初から最後まで息を詰めて読んだわ。 小柳くんが“従順なワンちゃん”を演じてるシーン、あれだけで「絶対何か企んでるな」って分かってたけど、インカム見つけた瞬間の「よし……っ」でガッツポーズしそうになったよ。 でもその直後の星導の「小柳くん」がマジで怖すぎて、背筋が凍った……。 あの呼び方の切り替えだけで空気が変わるの、ほんと上手いな。 そして最後の“ロウ”と“ショウ”の呼び名に書き換えられていく過程が、読んでて胸が痛かった……。 でも、まだ続きがあるなら、この先どうなるのか気になって仕方ない。 展開の速度がエグいし、心理描写の解像度が高いから、一気に引き込まれたよ。 朔夜さん、今回もめっちゃ刺さりました……!🔥