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ムメイ
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その手が頬を撫でてくれるのを待つ。
待って待って待って、
ようやく触れてくれたその手は温かかった。
その時間が好きだった。
何年も、何年も続けば良い。
私より早く死なないで、私の頬を撫でててほしい。
あなたにそう願った。
でもあなたは叶えてくれる神様でもなんでもなくて、時は無常に過ぎていった。
愛を誓ってくれたあなたはもう、私の中でしか生きられないのね、
それでもあなたは弱々しく最期まで手を握り返してくれた。
「残されるあなたがさみしくないように、おまじないかけておくね」
と言ってから最期の力を振り絞って私の頬に手を添えて……、
でも、あなたの想いというか、生きることに対する執着が強いのか、
あなたはもう一度神として私の前に現れてくれたね、
もう触れられない、見えてはいけない存在になってしまったけど。
私は嬉しい。
もう一度触れて欲しい、頬を撫でて欲しい…
仕事帰りのいつも通る暗い路地裏、怪しい占い屋があった。
その店の前を通りがかろうとしたら占い師のおばあさんが
「あなた…取り憑かれているわ。それは危ない。悪いことは言わないから神社に行って祓いなさい…。」
私はにこりと笑って感謝の言葉を言い残して足早に帰った。
私は分かっていた。
彼は悪い神様になったと。
私に取り憑いてることも。
私はもう、おかしいから。
ようやくまた会えたのに、手放すなんて嫌よ!祓うなんて嫌よ!
置いていかれるのはもう嫌なの…
彼がまた話しかけてくる
「ねぇ、一緒にいよう?俺も手伝ってあげる。」
……そうか、私が_…
私は無意識に台所から包丁を持ってきて首にあてがって…
首を切った。
薄れゆく意識の中、窓も扉も締め切られてる部屋だけど、風が頬を撫でた気がした。
ーー……次のニュースをお伝えします。
先日、〇〇市の自宅で自殺している二十代後半の女性が発見されました。
原因は先立たれた夫を追って自殺したとみられています。ーー……
これでよかったんだ。
あなたとずっと一緒にいられる。
触れられなかったあなたと、触れられる…
あなたは愛おしそうに頬を撫でてくれた。
コメント
1件
うわ…読み終わってしばらく動けなかった。 「もう一度触れてほしい」って願う気持ち、すごくわかるけど、それが叶わなくなってからも執着し続けるの、痛いほど伝わってきた。 最期に風が頬を撫でた描写、あれが彼の「触れる」になったんだね…切なすぎるよ。 私も重い話好きだけど、これは心抉られた。泡沫さんの書く“執着の先の静けさ”がすごく綺麗だった😢🖤