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な が め .ᐟ
春。
優しい風が桜と共に吹いてくる。
ツインテールの少女の髪が揺れている。
〜♪
その少女は歌っていた。
「未来って、とっても歌が上手いよね!」
「うんうん!」
鈴、蓮──鏡音兄妹は未来のことを褒めている。
「えへへ、鈴、蓮、ありがとう」
未来──初音未来はぺこりと嬉しそうに頭を下げた
「春に外に歌うと、未来の歌がさらに上手くなった気がするわ」
めいこ──咲音めいこは未来の歌をぱちぱちと手を叩いて関心している。
「3人の言う通りだよ。未来の歌唱力ってすごいよね」
海斗──青麗海斗は3人の言葉にうんうんと同感し、3人と同じように未来を褒めていた。
「4人に褒められると、恥ずかしいな」
未来はもじもじして、恥ずかしそうに言った。
「…あれ?瑠歌姉は?」
蓮が探しながら言った。
瑠歌姉と言うのは、巡音瑠歌の事だ。
瑠歌は蓮と鈴より年上なので、「瑠歌姉」と呼んでいる。
「瑠歌のことだから、遅れて来るんじゃない?」
実は瑠歌は、大の遅刻魔なのだ。
遅刻魔だからか、仕事にも遅れて怒られてばかりらしい。
「瑠歌姉が来るまで、未来の歌を聞いてようよ」
と、蓮が言い出した。
その言葉に鈴が「うんうん!」と言うようにこくこくと頷いた。
めいこと海斗も、同じように頷いた。
「えぇ〜っ、そんなに歌えるかなぁ?」
「大丈夫だよ!未来は歌がとっても上手いからさ」
未来は照れて、仕方なく歌うことにした。
「あ〜あ〜っ」
今のは音声チェックだ。
万が一声が出なくなると困るからだ。
海斗は「頑張って!」と言うようにペットボトルをペンライトのように持っていた。
「〜♪」
よし。順調に歌えてる。この調子で最後まで…
「はるぅ…のぉっ!」
…あれ?
音程が大分外れてしまった。
間違えてしまったと、気にしないことにした。
次の歌詞を歌おうとした。
その時、歌声が───
…あれ?おかしいな… こんなこと、今までなかったのに…
他の歌詞を歌おうとするが、全く声が出ない。
音声チェックの時も、さっきまでも普通に歌えていた。
「未来、どうかしたの!?」
と鈴が慌てるように言った。
どうかしたも何も、声が出せないから言えない…
未来は頑張って言ってみた。
「うん、大丈夫だよ…」
…あれ? はっきり言えるようになっている。
さっきのはなんだったのだろう。
声が出るのなら、もう一度続きを歌おうとしてみた。
だが、声は出なかった。
ボク、何か病気にでもかかっちゃった…!?
そんな不安が起こってきた。
「どうしよう!?」
めいこと海斗に向かって言ってみた。
普通に話したら…話せる…?
一体どういうことなんだろう────
めいこ、海斗…
「普通に話したら話せるのに歌ったら…」と言っても信じてくれないだろう。
「未来、大丈夫?病院にでも行く?」
めいこが心配しながら提案する。
病院に行くのは嫌だが、行かなきゃいけない事態なのだということは分かった。
とりあえず、病院に行くことにした。
「実はボク、歌おうとすると声が出なくて…でも、普通に話すと声が出るんです」
病院に行って医師に相談してみた。
「…はい。分かりました」
ボク、何か大変な病気にかかってないかな…
そんな心配が増えて、怖くなってきた。
医師に調べてもらっている。
しばらく待っていたら、医師が言いにくそうに口を開けて言う。
「初音未来さんの症状、と言いますか…原因不明なんです。」
「ええ〜っ!」
蓮が不安そうに言った。
そんな…治す方法もないのかな…
もう歌えないなんて、ボク、嫌だよ
いつの間にか、悲し涙が流れていた。
すると、バタバタと走る音がした
「み、未来〜っ!」
「瑠歌姉っ!」
瑠歌ははぁはぁと疲れたようだった。
随分急いでここに駆けつけたんだろう。
「あの公園に行ったら、誰も居なくて…連絡が来たから急いで来たの」
未来はめいこに渡されたハンカチで涙を拭いた。
「未来は…原因不明の病気らしいんだ…」
海斗は悲しそうに瑠歌に説明した。
「それは…大変ね」
瑠歌は自分がそうなったらどんなことをするか想像してみた。
「ボク、もう歌えなくなるなんて嫌だ…」
「とりあえず、普通に声が出なくなった病気用の薬をお渡ししておきます。」
医師は薬を机の中から薬が何粒か入ったものを渡した。
──その薬で治るといいな…
未来は家に帰って、早速その薬を飲んだ。
「治るといいな…」
また歌えるのを待っていた。
未来は何かを閃いた。
歌の歌詞を少しリズムに合わせながら普通に言う、ということを考えた
それなら歌えるのではないかと未来は思った。
「よぉ〜しっ、早速やってみるぞっ!」
未来は張り切っていつも歌っている歌の歌詞を思い出した。
「ららら〜っ」
リズムには乗っていないが、歌詞は順調に言えている。
リズムに乗せて言おうとした瞬間、さっきの言っていた歌の歌詞が出せなくなった。
…あれ?
リズムに乗ると、歌えない…?
未来は気づいた。
リズムに乗ると歌えないのだ。
未来は学校の授業でリズムに乗って歌うことも出来ない…ということだ
ボク、歌がないと暇になっちゃう…
「早く歌声出せないかな…」
未来は心の中で呟いた。
歌声が出せなくなって3、4日経った。
未だに歌声は出せていない。
薬はちゃんと飲んでいる。
「さすがにすぐには出せないよね…」と未来はその事に受け入れることにした。
最近は暇になっている。
テレビやゲームも飽きてしまった。
ああ、歌が歌えればな…
「〜♪」
未来はテレビの歌番組を眺めていた。
歌を聞いて、暇な気持ちを満たしたかった。
可愛らしい華やかなステージでアイドルたちが踊りながら歌っている。
「ボクもあんな風に踊れたらなぁ…」
と未来は呟いた。
未来は歌番組に夢中になっていた。
歌声が出せなくなってから1週間程経った。
めいこは様子見に未来の家に行った。
「未来、歌声出せるようになったかしら?」
「ううん、全然…」
めいこは肩にかけていたマイバッグを治して、ため息をついた。
「未来の歌、早く聞きたいわね。早く治るといいわ。」
めいこは未来にお菓子を渡して出かけに行った。
────このお菓子、美味しそう…
美味しかったらめいこに貰いに行こうっと。
歌声が出せなくて1ヶ月が経とうとした頃、未来は大きなため息をついた。
「はぁ〜あ、早く治ればいいのに」
薬を毎日飲んだりボイトレをしたりしているが、一向に歌声が出ない。
…そろそろ、歌いたいな
1ヶ月が経ちそうなので、病院に行って医師に相談することにした。
医師に事情を話してみた。
「実は、未来さんの症状の薬を作ってみたんです。まだ完成の少し手前ですが…」
「えっ、本当ですか!?その薬、ボクにください!」
未来は嬉しそうだった。
「でも、まだ未完成で…」
「未完成でも大丈夫です!お金は払うのでっ!」
未来はとてもその薬が欲しかった。
「わ、分かりました…2粒だけ、お渡しします。」
未来は嬉しくて思わず「やった〜!」と叫びそうになった。
未来は帰って、薬を飲んでみた。
今度こそ治るといいんだけど…
未来は治ることに期待した。
次の日。朝になった。
朝ご飯を食べ終えて薬を飲んだ。
すると、スッキリしたような感じがした。
治ってる、かな?
試しに歌ってみよっと。
「〜♪」
う、歌えたっ!?
「未来の病気、治ってよかった〜!」
蓮は嬉しそうに言った。
「未来の歌がもう聞けなくなるかもって思ったから…」
鈴は蓮と同じように嬉しそうに目を輝かせて言った。
「本当に治ってよかったよ。未来と言えば『歌』だし」
海斗は男らしく未来をお祝いするように言った。
「治る薬を作った医師、すごいわよねぇ。3人が言った通り、未来の歌声がまた聞けるようになって良かったわ」
めいこは頷いて言った。
「ただ病気が治っただけなのに、この公園でお祝いパーティなんて大袈裟だよ…」
未来はそう言いつつ、嬉しいのであった。
「ま、間に合った〜っ」
瑠歌がはぁはぁと疲れていた。
前と同じように随分急いでここに来たのだろう。
「瑠歌が間に合うなんて…珍しいこともあるのね」
めいこが瑠歌をいじると、瑠歌は顔を膨らませたが、用事に間に合うのは珍しいことなので、何も言い返すことは出来なかった。
「ま、まぁ…早速未来に歌ってもらおうよ」
「なんの歌がいい〜っ?」
未来は楽しそうに蓮に聞いた。
「未来がいつも歌っている曲っ!」
「おっけ〜っ!」
未来は顔の横でピースして、歌い始めた。
桜の花はもう散っているが、優しい風が花と共に吹いてきそうな気がした。
〜消えた歌声、完〜