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部屋を出るとリビングからなんだか香ばしくていい匂いが漂ってくる。匂いにつられるようにフラフラと足を進めるとキッチンには黒のエプロンをつけ菜箸を持っている隆ちゃんの姿が目に入り、グサッと心臓を射抜かれた。綺麗な黒髪と黒のエプロンのコンビネーション、菜箸を持つ右手の筋張った筋肉と左でもつ小鍋を支える二の腕の筋肉、上腕三頭筋がいい具合に張っている。眼福すぎて、もう今日は何度死にそうになったか数えきれない。
「え!? 隆ちゃん夜ご飯の支度してくれてるの!?」
「ん、美桜は部屋の片付け終わったの? 俺が夕飯用意しておくから休んでな」
「いやいやいや、私も一緒に準備するよ。むしろさせて下さいっ! 家事は分担してやらないと」
「そうだな、じゃあ今日は一緒に作ろうか。今グリルで肉と野菜を焼いてるから、味噌汁作ろう」
「了解でっす!」
新婚さん=エプロン(ごめんなさい、私裸エプロン想像しました)と思いこの日の為にエプロンは買ってあったのだ。急いで自室に戻り段ボールから漁り出す。ベタに白のフリル……と思ったが手に取って買うのはやめた。汚れも目立つし、白のフリルは二次元だから可愛いんだな、と思いとどまり普通のグレーのシンプルなエプロンを購入したのだ。
グレーのエプロンを身にまといキッチンに戻ると既に人参やキャベツなどの野菜は切り終わっていて後は鍋に入れるだけの状態になっていた。なんて手際がいいんだろうと感心してしまう。
「って、もう私やる事ないじゃんっ!」
「ははは、じゃあ鍋に野菜入れて、油揚げ切ってもらおうかな」
「はい! ……ねぇ隆ちゃん、油揚げって……どのくらいの大きさに切るの?」
「適当でいいよ」
「て、適当……」
この世で一番適当という言葉が難しいと思うのは私だけだろうか。実家で料理を手伝ったことがある。母親に適当に塩入れておいてと言われて適当に入れたが為に物凄くしょっぱい野菜炒めが完成した事がある。適当に味噌入れといてと言われて適当に入れたらまた、すっごくしょっぱい味噌汁が出来上がった。まだまだある、私の適当に入れといて事件。恐ろしくて声に出せない程の味……
でも今回は油揚げだ。味に影響が出るとは考えにくい。私は適当に油揚げを切ってお鍋の中に入れた。