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裏五条
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「いやー、モテる男はつらいっすー」
スペードについてきているのは、……石じゃなくて、触覚や、虫っぽい足がついてる。もしかして蟻?
「ストーンアントだね」
「大木の根元や木に穴を開けて巣穴にする魔物です。命の木が狙われると厄介ですね」
「またスペードは僕のせいじゃないって言うのかな」
そう言いながら、二人は迎え撃つ用意をする。
「風の精霊よ」
二人は石蟻達に向かって風の魔法を使っている。ということは、あれは土の魔物なのかな?
よーし! なら今日は言うことを聞いてくれるシルフィで私も一緒に。
あの魔物を何とかして!
「シルフィ!」
しーん
ちょっと! なんで急に! また聞いてくれないのっ!
「攻撃魔法じゃダメっす。リサ、あの子達は浄化してほしくて君のところに来たんっすよ」
石蟻達をアリスとルードに押し付け、ちゃっかり隣に陣取るスペードは、私の横でニコニコしている。
「え……」
「彼らの願いは精霊に戻りたい。それだけなんす」
「えっと……」
それじゃあ、水の国や風の国、さっきの魔物達も?
でも、……。わからない。どういうこと?
私が考え込んでいると、スペードは手をぱーっと広げて言った。
「詳しくはあとで説明するっす。浄化魔法でぱーっとよろしくっすよ」
でも、私、もう二回も使ってるけれど。まだ使えるのかな。
「大丈夫っす。リサなら出来るっすよ」
また、スペードは言う。私なら、出来る……。
こくりと頷いて、私は風の精霊に命令した。
あの魔物達を浄化して。
「ジン!」
ザァァァァァと風が吹き、石蟻達を包み込む。
凄い数の石蟻達すべてを風の渦が飲み込むとすべてを煌めく砂にかえ、空へと昇っていきその場には何も残らなかった。
「きれい――」
見届け終わって、呟いた時に異変は起こった。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
背中から指先、足の先まで激痛が走り抜け、私は身体を抱え込み膝をつく。
まるで私の中から何かが私という殻を破って出ていこうとするような感覚に襲われる。
「いやぁ、あぁぁぁ!」
スペードは口元を崩さずじっと私を見下ろしていた。
「――――――――」
何か呟いている気がするけれど、痛みに私の意識は囚われて聞き取ることが出来ない。
「リサちゃん!」
「リサ様」
二人が駆けつけてくる安心感から、痛みで我慢できない私は意識を手放すことにした。
ごめんね、もう私、無理……。
ーーー
身体の中を駆け巡る痛みが、意識を手放したはずなのに続く。
頭、背中、手、足を巡ってまた中心部へと帰ってくる。
少しずつ、少しずつ痛みが熱さに変わっていき私の中から腕へと流れて行く。
腕に熱がすべて流れていくと、私の中の痛みはようやく収まった。
何だったんだろう…………。
「リサちゃん、リサちゃん、リサちゃん!!」
アリスの声がする。
大丈夫だよ。痛みは収まったよ。だから、泣かないで……。
顔にポタリポタリと落ちる暖かい水滴は、きっと彼の涙だ。
どうして泣いてるの?
はやく、目を覚まして彼を安心させてあげないと――。
コメント
1件
うわあ、今のエピソード、めちゃくちゃ心臓に悪かったです……! リサが浄化魔法を使ったあとの激痛と、それを見下ろすスペードの余裕の笑みの対比が怖すぎます。「魔物の願い=精霊に戻りたい」って世界観の仕組み、すごく好きです。それにしてもシルフィ、急に言うこと聞かなくなったのが不気味で……何か代償の前触れだったりするんでしょうか。アリスが涙を落とすシーンで一気に切なくなった。続きが気になりすぎます!