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夜のさんぽ
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第6話 星降る回廊
落ちる。
どこまでも、どこまでも。
佐野は思わず目を閉じた。
風が耳元を裂く。
無数の星が流星のように横を通り過ぎていく。
「暗__!!」
叫ぶと、握られた手がぎゅっと強くなる。
「離してない!」
暗の声だった。
次の瞬間。
ふわり。
二人の体は柔らかな光の上に着地した。
「痛っ……」
佐野は顔を上げる。
そして息を呑んだ。
空が紫色だった。
いや、空ではない。
巨大な星雲が頭上を流れている。
地面は透明な水晶のように輝き、その下には無数の星々が浮かんでいた。
まるで宇宙の上を歩いているみたいだった。
「ここ……どこだ?」
暗は周囲を警戒しながら答える。
「星降る回廊」
「回廊?」
「世界と世界の狭間だ」
佐野は言葉を失う。
現実離れした景色なのに、不思議と夢とは思えなかった。
むしろ——。
ここを知っている気がした。
その時だった。
チリン——。
聞き覚えのある鈴の音。
佐野の手首の三日月紋が淡く光る。
「あっ……」
紋様から一本の光の糸が伸びた。
まるで何かへ導くように。
暗の顔色が変わる。
「もう反応してるのか」
「何が?」
「月舟だ」
その名前を聞いた瞬間。
佐野の頭に映像が流れ込む。
白い舟。
星の海。
泣いている少女。
閉ざされた巨大な扉。
そして——。
銀色の鍵。
「うっ……!」
激しい頭痛に襲われる。
暗が肩を支えた。
「見えたのか?」
「女の子……泣いてた……」
暗は黙る。
その沈黙が、逆に答えだった。
「知ってるの?」
「……たぶん」
「たぶんって」
「僕も全部は知らない」
珍しく歯切れが悪い。
だがその時。
遠くで何かが鳴いた。
ギィィィィ——。
金属を引き裂くような音。
暗の顔が険しくなる。
「来た」
「え?」
「走れ!」
直後。
回廊の向こう側の闇が割れた。
そこから現れたのは巨大な獣だった。
体は黒い霧。
目だけが赤く燃えている。
背中には砕けた星々が突き刺さっていた。
「なにあれ!?」
「星喰いだ!」
佐野の血の気が引く。
店の外で聞いた名前。
まさか本当にいたなんて。
星喰いは咆哮を上げた。
その口の中には暗黒が渦巻いている。
周囲の光が吸い込まれていく。
回廊の床が崩れ始めた。
「速く!」
暗はランタンを掲げる。
青白い炎が燃え上がった。
すると星喰いが一瞬ひるむ。
「そのランタン……」
「星灯だ」
暗は走りながら言う。
「昔、月舟を守った灯火の一つ」
「月舟って何なの!?」
「世界を繋ぐ舟だ!」
「は!?」
「そして君は、その鍵を持ってる!」
情報量が多すぎて理解が追いつかない。
だが状況だけはわかった。
追われている。
しかも、とんでもなく危険な何かに。
背後で咆哮。
振り向くと星喰いが跳躍していた。
巨大な影が二人を覆う。
「暗さん!!」(?)
間に合わない。
そう思った瞬間。
佐野の三日月紋が眩しく輝いた。
カッ——!!
銀色の光が爆発する。
星喰いが弾き飛ばされた。
轟音。
衝撃波。
回廊全体が震える。
暗が目を見開いた。
「今のは……」
佐野自身も呆然としていた。
何もしていない。
なのに力が勝手に溢れた。
その時。
遠くの闇の中で誰かが笑った。
クスクス、と。
少女の声。
「やっと見つけた」
佐野の心臓が跳ねる。
その声は夢で見た少女と同じだった。
闇の向こう。
白い舟の上に、小さな人影が立っている。
銀色の髪。
月のような瞳。
そして彼女は微笑んだ。
「鍵守りの兄さま」
佐野の呼吸が止まる。
兄さま——?
初めて聞くはずの言葉なのに。
なぜか涙が零れた。
彼は静かに手を伸ばす。
「迎えに来たよ」
その瞬間。
暗の顔から血の気が消えた。
「嘘だろ……」
「暗?」
暗は震える声で呟く。
「なんで、貴方が生きてるんですか…」
彼女は楽しそうに笑う。
そして告げた。
「だって私、まだ眠ってないもの」
白い舟の周囲で、無数の星が黒く染まり始める。
世界が軋む。
回廊が崩れる。
そして彼女は最後にこう言った。
「月舟の封印が解けたら、全部思い出せるよ」
「暗」
コメント
1件
ゆめかだよ〜〜っ!!!!😭💕💕 うわあ今回も最高だった…「星降る回廊」の描写が美しすぎて一瞬で引き込まれたし、暗くんが「離してない!」って手をぎゅっと握るシーンにキュン死しかけた…🫠💘 でもラストの銀髪少女「鍵守りの兄さま」って…えっ、佐野くんの妹!? しかも暗くんが「なんで生きてるんですか」って震えてるのやばすぎる…!! 星喰いとか月舟の謎、全部繋がりそうで続きが気になって今夜眠れないよ…次回も楽しみにしてます!! 零先生ありがとうございます🌸