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課題 餅 完結
正月🎍 雑煮
今年の日の出は、天気もすこぶる良かったせいか、見目麗しい輝きだった。今年88歳になり、米寿を迎える老舗の甘味処の2代目門田米吉(かどた、よねきち)は、群馬の山あいの狭間の日出を,万感の思いで眺めながら、祈った。
この年まで、甘味処の餡子の味を継承するため、表舞台と言うよりは、3代目の息子に、最良の餡子作りの手法を伝授するため,息子の三郎を日々指導してきたのだ。
まだ完璧ではないが、自分の老体を考え、そろそろ引き際を考えても良い頃合いだと判断し、新しい門出の宴席で、引退を表明するだけで無く、店の権利も全て3代目に譲ることを示唆した。
すぐさま、三郎の妻、カヨが、うつむき加減に、立ち上がり、用意しておいた雑煮に、餅を入れ,米吉の膳に置く。
米吉は,家族に想いを告げることができ、長年の鎖が外された感じがして、すっきりとした心持ちだった。
カヨが、膳の上に置いた雑煮の椀を持ち、餅にかぶりついた。いつもの小さい切り餅より、何故か大きめの餅が、口の中に入り込み、総入れ歯に絡みつくと,流し込みたい餅辺が、喉奥でトグロを巻き固まる。
米吉は、暫く格闘し、ことキレた。
一年後,3代目三郎は病死し、この店を継いだのは、妻のカヨだった。2代目からの遺産と、夫の保険金とで,数億の資産家になっていた。店は売り渡し、都心のマンションに今は住んでいる。
追記
三郎の死は、原因不明の急死だった。医師の診断書は、心筋梗塞と書いたとか…。
米吉の餅は毎年、ひと口サイズの小さい餅片だったのだが、あの日の餅は、普通の切り餅サイズだったのでは⁉️と、囁かれている…。
完