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私の名前は舞日 朝陽(まいにち あさひ)。翌亜流高校新聞部部長(笑)ッス。
今日は後輩にして我が新聞部の期待の星、小野麗尾 守君に頼まれて動画撮影・編集のお仕事で……
黄泉平坂を降っているっス……
あ、違うっスよ!自分、死んだ訳ではないっス!!
これはこういう動画っス!
死後の世界の現在を詳しくお伝えするべく、小野麗尾興業㈱様からちゃんと(高額)報酬も出る立派なお仕事っス!……報酬がヤケ
に高かったっスけど自分の身の安全は保障されているっスよね……?(gkbr
そうこうしている内に坂を降り切ったっス!え~と、小野麗尾君から聞いた話だと
……あ、あそこの掘っ立て小屋……掘っ立て小屋???どう見てもプレハブ小屋っス!?
まずはあそこに行くっス!
コンコン
「失礼しまーっス」
「皆、お客さん!お客さん!!」
お客様?
お客様!
おかくさまいらはいいらはいませ~
ピコピコ!(ピコハン乱打) こら!しっかりするの!!!アンタまた御神酒こっそり飲んだでしょ!?
お客様一名様ご案内なの~
どうぞなの~
何か座敷童っぽいっすね。この子達は黄泉待人(よもつはべり)って言うらしいっス!
奥の部屋に通されて少し待たされたっス! 暫くして呼ばれるのでついていくっス!
プレハブ通路を通り抜けて暫くすると、お社が見えたっス。
……靴は何処で脱ぐっすか?
階段を上った先のお社の入り口前っすか……
お、何か現代風の玄関っぽい感じっすねここで靴を脱いで……足湯!?
で案内&ついて来てくれた黄泉待人の子に足を洗って、拭いてもらったっス!
お礼に何かお菓子でもあげたかったっすね……
そしてようやくお社の中に……うう、緊張するっすね……
「どうぞ……」
何か透き通るような声で呼ばれたっス!?
コソコソ
「失礼しまーっス」
中入ると、神社のお堂の様に伽藍とした造りの部屋の奥に、お雛様の様に着物を着飾った黄泉大毘売命様が居たっス!?
「此度はようこそ黄泉の国へ。ここは黄泉平坂。現世と常世の境目にあたる処となります。貴方の現世での命数は尽きてしまいましたが、此れからはこの黄泉の国でごゆるりとお過ごしくださいな」
「……そういう挨拶なんっすよね?自分、本当に死んでいるわけでは無いっすよね!?」
「アラアラ、ウフフフフフフ……」
何で口元を袖で抑えて笑うっすか!?
「それではまずは拙いながらも心尽くしを……「待って欲しいっス!!?黄泉竈食(よもつへぐい)出されても自分は食べられないっス!!!」……あら?旦那様からはぴぃあぁる?動画なる物を作るのでありのままの黄泉の姿をお見せするように頼まれていたのですが……?」
「宣伝用に食べ物を見世物にするのは良くない事っス!?」
「大丈夫ですよ?作った料理は後で温め直して旦那様にお出ししますから」
「小野麗尾君はそれで平気っすか……」
「はい!契約の時に私達を迎えに来られた時も……」
へ~、あの小野麗尾君がそんな事を……
いやいや。
「興味深いっスけど、そろそろ次お願いしていいっスか?」
放っておくと何時までもノロケられそうっス……
「そうでしたね!すみませんでした。では早速参りましょう!エインセルさ~ん!!!」
「はいは~い」
若干気怠そうに妖精ちゃんが飛んできたっス!何をするんすかね?
「3・2・1、ハイ!」
「皆様、こん死後ございます!志子ちゃんと一緒、始めさせて頂きます!!!」
よく判らない挨拶?カメラと志子ちゃんの間に2本の光の帯が波打ちながら流れてきたと思ったら、帯と帯の間に文字が浮かび上がってきたっス!?
『志子ちゃんと一緒! ~はじめての死後~ 黄泉の国ってどんな所?』
動画のタイトルコールっスか!?
そしてカメラの撮影範囲の外にカンペみたいに光の板が浮かんで、
”ここで一回カット”の指示が。
慌てて止めて、「はい、カットOKっス!」
と言うと、エインセルちゃんが、
「ちょっと平坂さん!アンタ恥ずかしがって勝手にセリフ言い換えたでしょ!?
何よ、こん死後ございますって!?こん死後~、でしょ!!??」
と志子ちゃんを叱り付けていた。
だが志子ちゃんも負けずに、
「恥ずかしがった訳ではありません! ……ただ、見知らぬ皆様方に見て頂くのに、こん死後では丁寧さが欠けております!!!」
「だ・か・ら、言ったでしょ! 神様だからってお堅いイメージを押し出すんじゃなくて親しみ易さが大切だって!?
もう、本当に頑固なんだから……」
あれ?何だか寒気がしてきたっス……
「苦労しておる様じゃのぅ、どうじゃ?娘の代わりにこの吾がメインを務めるというのは?」
「お断りしますー。伊邪那美様だと砕けすぎですー」
ちょっ、この方が伊邪那美様!!??
……どうみてもガソスタの制服を着たバイトのオバチャン……
ひぃっ!こっち見たっス!!!!!ガタガタガタ……南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏……
神様仏様お助けくださいっス……
おや、合わせた両手の掌と掌の間から……
阿弥陀仏「無理です」
そんなーっス……
「そうです!お母様は下がっていてください!?これは私が旦那様に託された大切なお勤めなのです!!!」
……神様!!!そうっスね!時代は神様っスね!仏様?オワコンっスよ、アレ。来年から初詣はお寺じゃなくて神社行くっス!
「むぅ……これ程に張り切る娘は久しぶりじゃのぅ……よし、ならば吾はアレじゃ! 此度はゲスト出演という事で良かろ?
うむ、我ながら名案じゃ!現世の婆裸絵茶(バラエティー)番組やらでも旅の途中で何某かが加わるのが定番の様じゃしのぅ?」
黄泉の最高神が加わるとか〇田アキ子合流とかいうレベルじゃねーっスよ……
「ならばまずはアレじゃな!?黄泉の国の新名所間違い無しの場所に行こうではないか!」
そう言うと先頭に立って歩き出す伊邪那美様。
慌てて追い掛ける我々取材班が見た物は……!?
「見るが良い!! 此処が現在黄泉の国で最も注目を集める黄泉ヒルズ(予定地)じゃ!」
そう言って伊邪那美様が指差したのは、縄張りをされた半円状の空地と、扇の要の部分に在る公園だったっス。
「お母様、これは……?」
志子ちゃん、否、志子様に聞かれた伊邪那美様が腕を組んで、
「うむ!これを見るが良い!」
そう言ってそれぞれの空地に隣接する様に立てられた看板を指差したっス。
看板にはそれぞれ、
『古き良き江戸の人情味溢れる集合住宅地:NAGAYA=大江戸 着工日〇〇〇〇/〇〇/××
この物件に関するお問い合わせは長年の安泰と信頼・パックス・トクガワーナをお届けした徳川建設まで』
『男の住まいは6畳一間よ!伊達漢を気取るなら独眼竜率いる伊達組に あ、任せやがれってもんよ!!!』
『迫っ苦しい部屋割り・貧相な内装……死んでからもそんな家に住みたいのか? 黄金色に輝く充実した死後を求めるならば、普請のTOYOTOMI一択じゃ!?』
『贅を極限まで削ぎ落したWABIの佇まい。慰安所・黒 居住者共用の茶室有り。茶の湯は死せる魂も楽しませ、安らげる物で御座いますれば…… 居を望まれる方は魚屋・田中まで』
『日の本一の家が欲しいなら儂の出番じゃ!? ~今 織田Q建設は未来へ~ ところでQって何じゃ?』
「こ、これは一体何っスか……?」
兎に角ド派手な色遣いの広告看板に達筆で書かれた謳い文句。
「うむ、婿殿の商いに当てられた様での、誰も彼もが自身の才覚でペリカを稼ごうと必死よ。戦国大名と呼ばれた者達も将来の出世払いをエサにかつての部下達をここでも率いて人出を確保して組織の力で稼ごうとしておるわ」
「ペリカって……」
「これよ」
と言って懐からヒラリと取り出したお札には。
「こ、これ御札っスか!?でも日本円ではないっスよね……」
「はい!こちらは旦那様が考案されたペリカ紙幣です!黄泉の国でもこれで現世の品物が買えるようになるんですよ!!!」
黄泉の国の限定通貨っスか。小野麗尾君もイロイロしてるっスね……ん?
「この”異星蛸”って雅号が入っているっスけど誰の事っスか?」
「それは確か……こちらで絵画の師事をされた葛飾さんの親子に依頼されていました。現世のお札を渡されて、「これに勝るとも劣らぬ物をヨロシクゥ」っと版画刷りの原版を頼んで、出来上がった原版を生前和紙作りに携わっておられた方に託され、”造札局”なる建物で製造をして頂いておりました。」
「婿殿が申すには、これはお金ではなく、”只の美術品”、だそうじゃ」
むむむ……何かそこはかとなくDAPPOUの香りがするっス……
でも自分にはどんな悪事に該当するのかヨク分からないっス……
「ていうか。葛飾さんってまさか葛飾北斎さんっすか!?」
「はい、お父様はその様なお名前だったと……」
「ちょちょちょ、どういう事っすか!?小野麗尾君が葛飾北斎さんの弟子になってたって事っスか!?」
「そうですね、葛飾さんの他にも様々な方から教えを受けておられておりました」
「まぁ、300年程度待たせてしまったからのぅ」
一体小野麗尾君は何をしていたっスか……
「まぁ兎に角次に行ってみるっス……」
「ここの次となると、”魚屋”かのぅ?」
「そうですね、今紹介したペリカで現世の品々が買える凄いお店なんですよ!?」
「ふ~ん、黄泉の国も便利になりそうっスね」
コンビニみたいな感じっスかね?
……そんな事を考えていた時期が私にもあったっス……
遠いからと、恐れ多くも志子様に俵担ぎされて連れられた先で見た物は。
「ショッピング……モール……っスか?」
広大な敷地に悠々と伸びた黒塗りの木造建築の建物……
敷地内の日本庭園っぽい公園では所々で休憩所代わりに野点が開かれ、お客さんが思い思いに寛いでいるっス……
「べぇしっくいんかむといったかの?罰を受けて業を濯ぎ終った者達に一人当たり200ペリカが配られてのぅ?
それ以来、ここ魚屋は毎日大盛況じゃ。今後とも定期的にペリカを配るらしくてのぅ、何もしなくても物が手に入るのでは商いが成り立たぬと思っていたのじゃが、千利休(タナカ)め、そこは上手い事やっておる様での?敷地の端にある建物があろう?あそこは職業安定所と言う所じゃが、より多くのペリカを求めて朝も早くから人が並んでおるし、仕事の口入れ、呼び込みも凄まじい事になっておるわ」
さぁさぁ、大きく稼ぎたいのはおらんかね!?黄泉大王殿から大口の仕事が出されたぞ!!!丸一日の現世の普請仕事で何と1日20ペリカ・3食昼寝・有給付き・普請の経験者には追加の特別手当・未経験者も現場のどわあふ指導官の元、真面目に働ければ大歓迎!!!!!こんな好条件、オラァ見た事ねぇ!おっと、仕事に興味のあるヤツァ、中の口入受付で話を聞いてくんな!ていうかオレッチもさっそく行ってくらぁ!?
「黄泉大王って誰っスか?」
「婿殿の事に決まっておろう。吾が娘達と共に在り続けるのであれば、必然そうなるわ」
「お母様ったら……皆さんもそういうのはまだ気が早いですのに……」
モジモジと指を弄る姿が尊いっス……
「ご歓談の所、失礼いたします。少々ご挨拶宜しいでしょうか?」
いつの間にか後ろにいた黒尽くめの和服の大きなお爺さんに声を掛けられたっス!?
ビックリした私を見つめ、ニッコリと笑ったお爺さんが、にこやかな表情のまま、
「驚かせてしまいましたな。私、此方の”TOTOYAモール”の店主を務めております、千利休と申します」
自己紹介位の後、深々と頭をさげられたっス!?せ、千利休って……
「黄泉大王殿から話は聞いていたのですが、どうやら私の名前は現世でも少しは残っているようですな」
「の、残っているってもんじゃないっス!?」
偉人かと言われれば疑問っスけど……
「なるほど、それでは”かるちゃあすくうる”なる催しの客寄せ位にはなりそうですね」
「ちょ、ちょっとそのお話、詳しく聞かせてほしいっス……」
記者魂が疼くっス……
「ちょっとアンタ!? そういうのは仕事が終わってからでしょ!?」
「す、すみませんっス……」
その後はモール内をフラフラ取材して回ってみたっス。
「いやぁ、大盛況っスね。遥か昔の朝廷料理人や近年亡くなられた有名料理人がオーナーに名を連ねるフードコートに、村正一門と正宗一門の刀の制作実演販売……芸夢センターと言う名の演劇場に、渡世人御用達の公認賭博場……もう何でも有りって感じっスね」
現世の書籍コーナーとか日用品売り場も随分な賑わいだったっスけど。
「何でゲーム売り場やパソコンコーナーとかも充実しているんスか……」
「ゲーム類は戦国大名に人気の様じゃのう。パソコンは石田何某やら大久保何某の勘定方がエクセルがどうやらで何やら大騒ぎを起こして、冥府の事務方・書記方も随分と騒ぎおったぞ。お陰で彼らの分も婿殿に用立てて貰う羽目になったのぅ」
手書きどころか筆書きが主流の時代の人から見たらチートっスからねぇ……
「さて、最後はいよいよ地獄巡りと行こうかのぅ?」
くっそ悪い笑顔で笑う伊邪那美様。
正直此処までで十分にお腹一杯っスけど。
小野麗尾君からも究極的な犯罪防止策として地獄の存在証明をして欲しいと頼まれていたっスからね……
そして案内される地獄絵図の数々。事前に予習していたのとほぼ同じ内容だったっス。
悲惨と言えば悲惨っスけど○○地獄が延々と続くとハイハイって感じになってくるっス。
そうして慣れたと思っていた頃に突然太鼓の音が響いてきたっス!?
これは……触れ太鼓っスか!?
「おお、丁度良い時間だった様じゃの。ここは婿殿が考案した新地獄、その名も―武田相撲地獄―~夜の風林火山~じゃ!!!」
なんちゅう名前の地獄っスか!?
「ここは性犯罪の裁きが大焦熱地獄程度では生温いという婿殿肝入りの地獄での?最近では男女問わず……いや、女子が多めかの?観客が大入りする場所でのう?此度は吾の専用升席にてゆっくりと鑑賞するが良い」
「わぁ、私ここに来るの初めてなんですよ」
志子様が楽しそうにはしゃいでいるっスけど、私は嫌な予感が止まらないっス……
席に通されて黄泉場所名物謎肉のやきとりを差し入れされたけど、これ自分が食べたら生命的にダメなヤツっスよね……
暫くすると行事の人が選手の呼び出しを始めたっす。
一人は筋骨隆々で全身に傷跡がある武士って感じのオッサンで、もう一人は全身に刺青を入れたヤの字の人っぽい人だったっス。
ヤの字の人っぽいと言ったのはその人がエラク怯えてマラカザリは嫌じゃ、マラカザリは嫌じゃ……と呻き続けていたからっス。
ヤの字っぽい人の呼び出しの時には彼の罪状が読み上げられ、罪人であることがハッキリとわかったっス!?
「アヤツは女性を喰い物にして生きてきた男でのぅ、今日はヤツが嫌がっておる”マラカザリ”が掛かっておる。
負ければヤツは”マラカザリ”に格落ちよ」
「最前列は被害者に優先するようになっていての?現世の無念も多少は晴らせるという物よ」
そうこうしている内に取り組みが始まったっス。
ヤの字の人が凄まじい気迫で武士の人にぶつかったっスけど武士の人は平然と四つに組んで少ししてフンッとヤの字の人を砂被りの人達の前に投げ落としたっス!!??
勝負が付いて呆然としていたヤの字の人だったっスけど、自分が負けてしまった事を理解したのか、
「マラカザリは嫌じゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
と叫んで逃げようとした所、近くにいた被害者の女性に捕まって、それでも逃げ出そうとした所で黒鬼の獄卒さん?に首を掴まれて何処かに連れていかれたっス。被害者の女性が嬉々として後を追いかけて行ったっスが
、これから何が「嫌じゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!止めろ!止めてくれ!もう良いじゃろ?ワシャもう既に散々ここの連中に見世物として嬲り者にされたんじゃ!?もう気が済んだじゃろう!?もう、もう許してくれえええええええええええ!!!!!」
少しして、
「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!」
「うむ、ヤツも立派な”マラカザリ”になったようじゃの?」
「お母様、”マラカザリ”とは……?」
「うむ、次の取り組みの罪人は”マラカザリ”の様じゃの、見ればわかるわ、婿殿も良い趣味をしておる」
そして呼び出された”マラカザリ”の罪人は……ちょ!?
馬の股間に繋がっているっスよ!?
土俵入りの前に獄卒さんに両腕を掴まれて一息に引き出されたけど、お、お尻から血が凄い勢いで吹き出てるっス。
お馬さんのアレを見ると、金属製の返しらしき物が竿の途中で付けられており、返しの先から血がポタ、ポタ……と
「あれが馬羅飾り(マラカザリ)よ。ここの地獄行きとなり、取り組みで負けた者は勝者の相手を務める事になるのだが、5連敗した者は最後の武者の愛馬の相手をし、次の取り組みまでは馬羅飾り(マラカザリ)として過ごす事になるのじゃ」
む、惨いっス……
「酷いと思うかの?だが本当に惨い目に逢ったのは、ヤツに人生を壊された女子達の方じゃ。地獄では現世で裁かれなかった報いも兼ねて厳罰となる習わしがあるのじゃ。当時の全てを知ってしまえる吾らからすれば、残当、と言う所じゃのぅ」
志子様がここで、
「私には此れの何処が罰になるのかよく判っておりませんが、旦那様が考案されたこの地獄が稼働してから、救われた魂があるのは確かです」
そう仰られたっス。なら、これは正しいっスね!!!
「さて。地獄は一応ここで最後という事になるのぅ」
「一応っスか?」
きになる言い方っスね。
「お母様!?」
「うむ、娘はこう言っておるが、実は近々新しい地獄が娘達の発案で開かれる事になっておっての」
「その名も全極地獄(ぜんごくじごく)」
「文字通り、古今東西全ての地獄をこれでもかと言う程に詰め込んだ地獄でな?
今までの地獄が曲がりなりにも業を濯ぐ事を目的とした物であるのに対して、
この地獄の目的は、救い難き魂の完全粉砕・抹消を目的とした地獄である。
無論、責め苦の間にある休養など無いし、安らぎ等一切得られん。神にすら見放された魂の終局点じゃ」
古今東西全ての地獄をこれでもかと言う程に詰め込んだ地獄……そ、想像もできないっス……
「脅かしてしまったが、普通に生きておる人間が入るような地獄ではない、魂の尊厳を踏み躙り、神の怒りを買い、尚も悔い改めぬような救いようの無い輩しか行く事は無いのぅ……何故か開いてもおらぬのにレンタルの依頼が来ておるが」
思わず、志子様に土下座したっス。
「頭を上げてください。旦那様も私も貴方の事を怒ってはおりませんよ」
……本当っスか?死後に「騙して悪いが」は無いっすね?
心臓に悪かったっスけどここで撮影は終わりっス。
時間も少し残っているし、取材に行ってくるっス!