テラーノベル
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すちの肩が、ぴくりと震えた。
顔を覆ったまま動かない。
静かな独房に、押し殺した呼吸だけが響く。
こさめは鉄格子を握る手に力を込めた。
🍵「……ほんと、ずるい」
やがて漏れた声は、ひどく掠れていた。
🍵「俺がどれだけ最低なことしたか、まだ全部知らないのに」
🦈「知りたい」
即答だった。
すちはゆっくり顔を上げる。
赤くなった目が、こさめを見つめた。
🍵「……聞いたら、後悔するかもよ」
🦈「しません」
🍵「こさめくん」
🦈「しません」
真っ直ぐ返されて、すちは苦しそうに笑った。
もう誤魔化せないと諦めたみたいに。
長い沈黙のあと、すちはぽつりと話し始めた。
🍵「‥こさめくんと俺は幼馴染みたいなものだったの」
🍵「家が隣で、公園とかで遊んだりしてた。」
🍵「けど……あの日、俺は家に火をつけた」
こさめの呼吸が止まる。
🍵「親がギャンブルにハマり、借金をしていて」
🍵「借金取りから逃げるためだった」
感情を削ぎ落としたみたいな声だった。
🍵「脅されて、追い詰められて、全部終わればいいって思った」
🍵「親も、借金取りも、俺も一緒に居なくなればって‥」
こさめは何も言えない。
🍵「でも、まさか燃え移るなんて思わなかった」
🍵「馬鹿な俺のせいで、周辺の家も、燃えた」
すちの指先が震えている。
🍵「隣の家で一人でお留守番してた、」
🍵「……こさめくんが、いた」
その瞬間、また頭の奥が痛む。
暗い部屋。
熱い空気。
小さな手。
『すっちー……?』
知らないはずの声。
でも、胸が締め付けられるほど懐かしい。
🍵「俺は、結局窓から家を出て」
🍵「隣の家に着いた火を見た瞬間に頭真っ白になって」
すちは苦しそうに目を閉じた。
🍵「助けに戻った時には、もう遅くて」
呼吸が乱れる。
🍵「泣いてるこさめくん抱えて逃げたけど、途中で崩れてきた木に」
そこで一瞬声が詰まった。
こさめは左肩を押さえる。
傷が熱を持ったみたいに痛い。
🍵「‥その後、俺は気づいたら意識を失ってて、そこからは__」
🍵「……ごめん」
すちの声が震える。
🍵「怖かったよね」
その一言で。
こさめの中の何かが、ふっとほどけた。
断片だった記憶が少しずつ繋がっていく。
泣いていた自分。
抱き上げる腕。
必死に名前を呼ぶ声。
『こさめちゃん!!』
あれは。
怖かった。
でも。
🦈「……すちも、泣いてた」
ぽつりと零れた言葉に、すちが固まる。
こさめ自身も驚いた。
今、思い出した。
炎の中。
すちはずっと泣いていた。
🦈「“ごめん、ごめん”って、いっぱい言ってた……」
涙が溢れる。
🦈「こさめ、覚えてる……」
すちの目が大きく見開かれた。
🍵「……っ」
🦈「すち、こさめ置いて逃げなかった」
頭が痛い。
でも、もう止まらない。
🦈「ずっと抱きしめてくれてた……!」
その瞬間。
すちは完全に顔を歪めた。
耐えきれなかったみたいに。
🍵「……やめて」
🍵「そんな風に覚えてないでよ……」
涙がぽろぽろ落ちていく。
🍵「俺は、こさめくんの人生壊したのに」
その言葉に、こさめは首を振った。
🦈「壊れてない」
🦈「だって、今また会えた」
泣きながら笑う。
🦈「こさめ、すちに会えて嬉しいよ」
その一言で。
すちの心の中に積み上がっていた“罰”が、音を立てて揺らいだ。
コメント
1件
うわっ……第16話、重すぎて胸がぎゅってなった……( ; ; ) すちが放火した張本人って知って、しかもこさめを助けようとしてたって……もう、言葉にならないや。すちが「やめて」って泣きながら言うところ、本当に切なかった。でもこさめが「壊れてない」「また会えた」って笑って言えたのが、逆にすごく救われた気がする……。 藍翠さん、この2人の傷の描写、丁寧で美しすぎて泣けました🥀🤍 続きが気になるけど、今はこの余韻に浸らせてください……。