「俺、なんでここにいるんだろ」
「え、死因覚えてないの?」
スズカがそうきょとんとした表情で俺を見て聞く
「うん、なんか、思い出そうとすると頭痛くて、ズキズキして考えようにも考えられないんだよ」
「そっか、」
「そういえば、スズカは?」
「スズカの死因ってなに?」
すると苦虫を噛み潰したような顔で目を泳がせ、息を漏らしながら答えた
「死因…確か、交通事故だったと思う」
「⋯交通事故」
その言葉がどうも引っかかる。
何故かは分からない、なぜか頭から出ていかない。
そう思いながらもスズカの返答をしようとすると、遠くに何かが見えた。
白いものと、黒いもの
白いものがしゃがんでいて、黒いものが白いものに何かをしているように見える
良く目を凝らすと、天使が黒い天使にちょっかいをかけられている
ちょっかいというより、虐められているの方が似合っているだろう
「スズカ、あれって」
「…あいつッ」
そう怒ったような声をボソッとつぶやき、羽を広げ鳥のようにとんでその場に行っていた
広がった羽と、それによって巻き起こった風になびかれたスズカのハーフアップが揺れ、目に入れても痛くないほどの美しさを感じた
「あっ、スズカ!」
飛び方が分からない俺はダッシュでスズカについて行く
「…っは、あ、はぁ」
「スズカッ、はやい…」
スズカが手馴れたように黒い天使の手首を掴むと、手を止める
「あ、りょ
「モトキ」
黒い天使の言葉を遮るかのようにスズカが名を呼び、耳打ちで何かを伝えていた
ただ、その伝えた言葉が俺の耳に始われることはなく、何を言っているのかはわからずじまいだった
彼の名はモトキというのか
「…スズカちゃんじゃーん」
「元貴、いいかげん天使いじめないで!」
そうスズカが少し怒ったような口調で発する
「君…黒い天使…?」
そう問うと、片口角を上げ言葉を発した
「俺は悪魔、ただ閻魔ではなく、神に愛されたね」
「何言ってんのか、わかんないんだけど…・」
「よっわいお頭 だね」
モトキがそう言ったあと、自分の本名、悪魔名、齢を教えてくれた
こいつ、俺とタメじゃん…
「モトキ…生前人殺したの?」
「モトキ優しそうなのに、なんで悪魔なの?」
「…なーいしょっ」
「でも、言ったでしょ?“俺は神に愛された悪魔だって」
「自由に天界と魔界を行き来できて、尚且つ地位も高い、最高じゃん」
腕と黒い羽を大きく広げ、頭からはツノがチラリと見える
こちらとは対照的に、服が陽の光を浴びる度、輝きなど許さぬように跳ね返す
「すごいでしょ、俺にとって天国みたいなんだよ」
「そういえば、スズカちゃん、こいつだれ?」
けろっとした顔でおれを指さしスズカに聞く
「あ、この子はこの間天界に上がった子で、ヒロトっていうの。本名は若井滉斗で、齢はモトキ と一緒。」
「へぇ、お前タメなの!!」
「うわぁ〜同い年うれしっ、魔界にはそんなんいないんだよ〜!」
そう俺と握手をし、手を上下にぶんぶんふっていきなり親密になる
「お前、天使いじめるの好きなの?」
「え、いじめる?」
「あ〜、アイツ堕天してるよ、天使に化けてたの、スズカちゃんに申し訳ないし、天使なんかいじめないっ て〜」
そう何もしないよと言わんばかりに両手を顔の横でひらひらと動かして笑う
なるほど、悪い奴では無さそうだ
「でも、モトキってば羽毟るのは可哀想だよ!めっ!」
「ちょっとスズカちゃん…おれガキじゃないから」
「でも、身長はガキみたいだなぁ」
「あ?若井おまえなんつった?」
「…まだ言えないなぁ、ヒロトには」
スズカがそっとそういた気がした。
コメント
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めっちゃ上手い( ゚д゚)ンマッ! 尊敬しちゃうわ( * ॑꒳ ॑* )✨