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「見てて痛いからとか、将来生きずらくなるよとか、俺を気遣うようなこといってるようで自己中なだけだよな?それさ。」

今まで心で渦巻いていたことが口から出ていく。

同時に目の前の、ムルの顔が曇る。

場の空気は最悪。今にも全てのものが、軋んで悲鳴をあげて崩れてきそうな重圧。


「俺がこれを辞められないのと同じくらい、健常者にはこれ出来ないんだろ」


俺はムルを健常者だと突き放す。

言葉は乱暴さを増し、心を荒らす。



「なあ。」


消えない線のある腕で、刃物を向ける。


「切って見せろよ。俺の腕でも、お前の腕でもいい。お前の覚悟を見せてみろよ。」



「生半可な気持ちで、止めようとしてるわけじゃねえんだよな。」



_________________



別に腕を切って欲しいなんて思ってなかった。感情任せに口から出ただけだった。

心がもう、限界だった。

他人からかけられる言葉に、なんの意図があるのか、疑心暗鬼だけが倍増していく日々だった。

友人で、信頼しているムルの言葉さえも疑ってしまう自分が心底嫌だった。

でも都合よく疑心暗鬼は止まってくれたりしない。


__________________



「なあ。」


メディの声が路地に、夜に響く。ついでに僕の頭の中にも反芻される。でもそれは意味の無い形だけのものであったけれど。



「切って見せろよ。俺の腕でも、お前の腕でもいい。お前の覚悟を見せてみろよ。」



先端の錆びたカッターがこちらへ向けられる。

強い光で、腕の傷は無いように見えた。

本当になければ良かったと、



「生半可な気持ちで、止めようとしてるわけじゃねえんだよな。」



膨れあがっていた感情がしぼんで消えていく。

残ったのはただ平坦な自分。

面倒くさい、と、他人だからと分別をつけて友人を切り捨てようとしている自分。

最低だな、なんて現実逃避もいいところ。

多分、お互いにもう限界が近かったのだと思うよ。

口から言葉を発しようとした。出てくる言葉はやはり、普段思っていることと変わらないらしい。

激情を出すほどの元気は、俺にはなかった。



「僕はね、メディのこと大切に思ってるよ。」


刃物は変わらない。


「嘘くさいって分かってるよ。疑う気持ちもわかるよ。感情なんてものはいつだって信じきれないからさ。僕もそう思うよ」


荒んだ心から思ったことがそのまま口から堕ちていく。



「僕もね、もうメディのこと信じなくていいかなとかさ、全部捨てたい辞めたいとかさ、思ったことあるんだよ。君と同じでさ。

僕も人間なんだよメディ。」


僕が人間であることをメディに告白するとしたら、メディは


「失望してくれた?こんな人間信じなくていいんだよ。

僕以外に縋りなよ、メディ。」


「……」


呆然とした様子。


今までこんな気持ち伝えたことないもんな。そりゃそうか。

一時の気の迷いってやつかもしれないけど、もう手遅れ。失った人間関係は元に戻せないから。


何を、どうすればいいかなんてもう忘れてしまったよ。


「…あとは、腕を切ってみろ、だっけ?

悪いけど、俺は首吊る派だから。そんな周りからバレるようなやり方はしないよ。」


とっくに刃物は下ろされていた。

何を言えばいいか分からないみたいだった。


あぁ、破局か。

僕たちは関わらない方が良かったのかもしれないね。


精々死なないで生き長らえてくれよ。メディ。











死にたさが増しただけだった。

早く死んでしまいたいと、思わない日はやはり、無いみたいだった。

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