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第6話 ロードバイクとファルコン(後編)
「それじゃあ出発!」
有紗の合図で、
全員が一斉にペダルを踏み込んだ。
ガチャッ。
チェーンが回る音が山へ響く。
「よーし!」
心愛も勢いよくスタートした。
最初は緩やかな上り坂。
「意外と……。」
「楽しい!」
柚希亜が隣へ並ぶ。
「最初だけだよ。」
「え?」
その瞬間。
坂が急になる。
「うわぁぁぁ!!」
心愛のスピードが一気に落ちた。
「きついぃぃ……!」
「呼吸。」
柚希亜が落ち着いて言う。
「リズムよく。」
「は、はい!」
心愛は必死にペダルを踏む。
前では。
月乃。
雪菜。
凛。
美琴。
玲奈。
紗夜。
夏凪。
理咲。
みんな軽々と登っていた。
「さすが経験者……。」
心愛は息を切らしながら笑う。
「負けないもん!」
少しずつ。
少しずつ。
頂上へ近付いていく。
その頃。
上空。
ファルコンは大きく羽ばたきながら、
選手達全員を見守っていた。
「キィー!」
秋が下から見上げる。
「全員確認。」
有紗も双眼鏡を覗く。
「ありがとう、ファルコン。」
休憩ポイントへ到着。
「はぁぁぁ……。」
心愛は芝生へ寝転んだ。
「疲れたぁ……。」
理咲も隣へ座る。
「私もです……。」
紗夜が笑う。
「体力ないな。」
「紗夜さんがありすぎるんです!」
夏凪はまだ元気だった。
「もう一周いける!」
「化け物かよ。この人。」
紗夜のツッコミに、
みんなが笑った。
少し休憩すると、
いよいよ下り坂。
秋が全員へ声をかける。
「ここからはスピードが出る。」
「車間距離を空けろ。」
「急ブレーキは禁止。」
「焦るな。」
「はい!」
心愛は深呼吸した。
「いくよ。」
柚希亜が微笑む。
「うん!」
ペダルを止める。
その瞬間。
自転車が一気に加速した。
「わぁぁぁ!!」
今日は風は吹いていない。
なのに。
頬へ当たる風が強い。
髪が後ろへ流れる。
制服がバタバタと揺れる。
「気持ちいいーー!!」
心愛は思わず叫んだ。
まるで。
雪山を滑っているみたいだった。
「これ!」
「スキーに似てる!」
柚希亜も笑う。
「でしょ。」
「重心も同じ。」
心愛はカーブへ入る。
少し身体を倒す。
「おぉ!」
曲がれた。
「できた!」
「いい感じ。」
月乃が前から親指を立てる。
「姫。」
「はい!」
「力を抜いて。」
「はい!」
肩の力を抜く。
すると。
自転車がさらに安定した。
「すごい!」
「走りやすい!」
雪菜も笑う。
「心愛ちゃん、覚えるの早いね。」
「本当ですか!」
「うん。」
心愛は嬉しくなった。
その時。
「キィーー!」
ファルコンが上空を旋回する。
「ファルコン!」
雪菜が笑顔になる。
ファルコンは一度低く飛び、
みんなの上を大きく一周した。
「見守ってくれてる。」
心愛が空を見上げる。
「かっこいい……。」
下り坂を走り切り、
ゴール地点へ到着。
「お疲れー!」
有紗が笑顔で迎える。
「どうだった?」
「楽しかったです!」
心愛は満面の笑みだった。
「風が気持ちよかった!」
「風ないのに!」
有紗は笑う。
「スピードが出るとそうなるんだよ。」
雪菜が腕を差し出す。
「ファルコン。」
ファルコンは綺麗に腕へ止まった。
「お疲れ様。」
雪菜が優しく頭を撫でる。
心愛は思わず聞いた。
「雪菜さん。」
「ん?」
「ファルコンってどうやって出会ったんですか?」
雪菜は少しだけファルコンを見る。
「小学生の頃。」
「家の前で倒れてた。」
「怪我してたの?」
「うん。」
「だから家へ連れて帰った。」
「治ったら山へ帰すつもりだった。」
心愛は静かに聞いている。
雪菜は少し笑った。
「でも。」
「帰らなかった。」
「え?」
「毎日家へ飛んできて。」
「窓をコンコンするようになって。」
「お母さんが。」
『この子もう家族じゃない?』
「って。」
みんなが笑う。
「そのまま家族。」
ファルコンは雪菜の肩へ頭を擦り寄せた。
「本当に家族なんだ……。」
心愛は優しく呟いた。
その帰り道。
山道をゆっくり下っていると、
玲奈がぽつりと話し始めた。
「そういえば。」
「?」
「有紗先生。」
「さっき。」
「秋先生と二人で登山してたって言ってたよね。」
みんなが一斉に玲奈を見る。
理咲が目を丸くした。
「確かに!」
夏凪も頷く。
「言ってた!」
凛がニヤッと笑う。
「ワンチャン。」
「?」
「あの二人……。」
少し間を空ける。
「付き合ってたり〜。」
「…………。」
沈黙。
そして。
全員が顔を見合わせた。
「「「いやいや……。」」」
さらに数秒。
月乃。
「……あり得る。」
雪菜。
「うん。」
美琴。
「否定できませんね。」
玲奈。
「可能性はあります。」
理咲。
「私もそう思います!」
夏凪。
「九十パーセント!」
紗夜。
「いや、ほぼ百。」
心愛だけがオロオロ。
「えぇぇぇぇぇ!?」
「そうなんですか!?」
柚希亜は苦笑い。
「私は分からないかな。」
その頃。
スタート地点。
「はっくしゅん!」
有紗がくしゃみをした。
「うぅ〜。」
「誰か噂してる?」
秋は帽子を直しながら笑う。
「生徒達だろ。」
「え?」
「なんで?」
「……なんとなく。」
有紗はニコニコ笑った。
「秋!」
「なんだ?」
「今度また登山行こ!」
秋は少し笑う。
「今度は。」
「滑るなよ。」
有紗は敬礼する。
「善処しまーす!」
「善処じゃ困る。」
二人の笑い声が山へ響いた。
その上空では。
白と黒のリボンを首に付けたファルコンが、
まるでみんなを見守るように、
大きく羽ばたいていた。
第6話 完 🦅🚴🍁✨
コメント
1件
雪音さん、第6話読みました〜! ロードバイクで山を駆け下りるシーン、すごく気持ち良さそうで、読んでるこっちまで風を感じました!心愛ちゃんが「気持ちいいーー!!」って叫ぶところ、一緒に叫びたくなりました🤍 それにファルコンと雪菜さんの出会いのお話、じんわりきましたね…怪我した鳥が「帰らなかった」っていうエピソード、家族ってそうやってできるんだなあって。 最後の先生たちの恋愛話、女子高生あるあるで思わず笑っちゃいました😊 次の話も楽しみにしてます!
#スポーツ
眠野ねつき無断転載とか❌
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