テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
「『 乾杯 』」
二つのグラスの影が照明で揺らめき合う。
仁人と太智は個室で鍋を囲んでいた。
「ふふっ、先生とまさか鍋囲むなんて思わへんかったです。」
嬉しそうに笑う彼を見て満足そうに仁人は箸を置いた。
『ごめんね、全体で送迎会出来なくて・・・』
いや、嘘だ。
人気者の彼を独り占め出来ている状態を大いに楽しんでいた。
学校という組織で体育祭前の忙しいシーズンを彼と共に定時退勤した。
昨日の内にこっそり誘っておいて良かったと心で安堵していた。
太智はコクリと喉を鳴らしながら飲んでいたグラスを口から離し首を振った。
「吉田先生と2人で話せるほうが嬉しいですよ」
彼お得意の笑顔を自分だけが独占出来れば、いつもより気持ちよく酔えている気がした。
更に惚気たくて頬杖をつきずっと喉につかえていた疑問をぶつけた。
『結婚相手にするならのお題で選んでくれたのは何か理由あるの?』
(※6話を参照ください。)
太智はそれを聞くと一瞬戸惑った表情をしてちらっと仁人を見た。
「─── 一番大事にしてくれそうやなって思ったからです・・・」
彼の事だから、おちゃらけて答えるかと思っていたが耳まで真っ赤にしていた。
照れた表情を隠す為に顔を手で覆っているがまるで意味を成していない。
予想外の反応に楽しくなってつい追い打ちをかける。
『じゃあ、結婚前提に付き合ってくれる?』
自分なりの口説き文句と笑顔で彼の顔から手を引きはがし両手で手を包む。
思ったより小さな手に愛しさが増した。
「先生、飲み過ぎやないですか?明日から僕居ないですからね!知りませんよ?」
『・・・返事ちょうだいよ。』
太智が何か言おうとした時だった。
彼のスマホが鳴った。
繋いだ手は簡単に離れてしまい、まるで自分たちのようだとつい感傷的になってしまう。
太智は画面を見るなり目線を合わせ着信先の名前を見せてきた。
【佐野先生】そう表示している画面にチクリと胸が痛む。
太智はそんな自分の表情を見るなり着信を拒否にスライドしスマホを伏せた。
『・・・出なくていいの?』
「今は、吉田先生との時間なんで!」
にこっと目をつぶって笑顔を見せてくる姿に自分が一番と言われている気がして嬉しくなった。
あぁ、彼はこんなにも自分を一喜一憂させてしまう。
彼を好きと認めるには十分過ぎた。
これ以上好きになると自分が自分じゃなくなりそうだと感じた。
「──仁人さんって呼んでいいですか?」
聞き間違えかと思ったが、目の前には首を傾けて上目遣いで自分をみてくる彼がいた。
急な問いかけにコクコクと頷くことしかできなかった。
「僕の事は太智って呼んでくださいね」
と笑いながら鍋をつつき、そのままフーフーと熱い具材に息を吹きかけた。
「ほら、あーん。」
つい反射的にパクリと食べると彼は満足そうにニコニコして自分も食べよ~!とまた食べ始めた。
口の中の食べ物を噛み砕きながらもしかして彼はいつもこんな感じなのだろうか?
急な不安につい眉間に皺が寄り、変な虫が付く前にやはり今告白してしまおうと拳に力が入る。
『太智君・・・』
自分の真面目な名前呼びにビックリしたのか太智は噴き出し反論した。
「待って!堅い!堅過ぎますって!」
『えっ、じゃあ・・・太智?──呼び捨てで良いの?』
「~~~~もう、そんなの良いって言ってるやないですか!」
少しむっとした顔で太智はポツリと呟いた。
「──仁人さん、早くしやんと僕誰かに取られちゃいますよ?」
頬を膨らませる彼を見て頭を抱えた。
『それってさぁ、そういう意味で捉えていいの?──恋愛対象として』
「そう言ってるやないですか?」
彼は掘りごたつの下から足を延ばしてつま先で太ももの内側を狙って触れてくる。
ブワッと身体が熱くなるのが分かった。
──確信犯じゃねぇか。
酔っているのだろうか?
ふふん♪とほくそ笑みながら自分がどう出るのか試そうとしている・・・?
あんなに純粋そうな態度をしておいて、これはズルい。
自分はまんまと嵌められたのだろうか?
このまま告白するか躊躇していると
「吉田先生が僕の事好きなの知ってましたよ?けど、僕も先生のこと好きです。」
「────仁人さんのこともっと知りたいです。」
ここまで言われてしまっては男として申し訳なさが若干顔を出す。
「俺も、太智のこともっと知りたい。────付き合ってください。」
ふん、ふんと満足そうに”仁人さ~ん”と両手を掴んでくるとそのままへたりと頭をテーブルに沈めた。
───あれ?
『だい ち?────太智・・・?えっ、寝てる?えっ?えぇぇ???』
声を掛けて身体を揺すっても一向に起きない彼を見て動揺する。
フサフサの睫毛につい見惚れながら、しまった。飲ませ過ぎてしまっただろうか。
頭の中をどうするべきなのか駆け巡る。
財布に入っているであろう個人情報を見て良いものなのか考えるが、可愛い寝顔を再度見てその考えは捨てた。
彼の肩を抱きかかえてなんとか持ち帰ったが、
今日が果たして彼らの記念日になったのかはわからない・・・
会う回数を重ねていく内に、あの時苦手な食材を自分に食べさせようと”あーん”したのだと分かり仁人はしばらく拗ねていたというお話はご想像にお任せします♡
おわりです!
私の妄想にお付き合いいただきありがとうございました 笑
ほんわか純愛書きたいときにその場のノリで投稿していたのでダラダラと長くなっちゃいました;;
最期はコメントしてくださったリクエストの仁人バージョンで締めたいと思います♡
グダグタでごめんなさい!涙
ありがとうございました!
#sozkdic
みーこ
265
コメント
5件
まさかのysdさんENDなの知らずに、急展開にドキドキしながら読み進めました笑♩ sozkくん、確信犯すぎる行動をした後に寝ちゃうのもらしくて最高でした🥹♡ 素敵な作品をありがとうございました🌷
とも。さん、最高でした😭 吉田先生バージョンでの締め、ありがとうございます!!✨✨ 塩﨑先生の確信犯小悪魔っぷりに翻弄される吉田先生、かわいすぎです笑 機会がありましたら、番外編とかも読んでみたいです💙 めちゃくちゃ素敵なお話をありがとうございました😍✨
第10話!おつかれさま~! いやもう最高だった…。仁人の心の中で「確信犯じゃねぇか」ってなる流れ、分かりやすすぎてにやけたわ。太智の「──仁人さんのこと、もっと知りたいです」からの告白成立→まさかの酔い潰れて記憶飛ばすオチ、読んでて「えええぇ!?」って声出た(笑) で、次のエピソードであれがあーんだったことが判明するってマジかよ~!! 二人の距離感とか照れ感がすごく丁寧で、短編なのにちゃんと心が動いた。拗ねる仁人も見たかった…それはぜひ妄想で補完するわ🔥 楽しかったです、ありがとうございました!