テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
家に着くと、靴を脱ぐ音だけがやけに大きく響いた。
涼ちゃんは何も言わず、元貴をリビングのソファーに座らせる。
クッションを背中に置いて、ブランケットを軽くかけた。
「ここ、いてね」
元貴は小さく頷く。
視線はどこにも合わない。
涼ちゃんはキッチンへ向かい、冷蔵庫を開ける。
包丁とまな板の音が、一定のリズムで鳴り始めた。
若井は元貴の前に腰を下ろす。
「……水、飲む?」
「うん……」
少し間が空いて、若井が続ける。
「さっきさ、医者なんて言ってた?」
「……うん」
「治るって……」
「……そう……」
若井は言葉を止める。
元貴の目が、完全に焦点を失っているのが分かったから。
「……今はやめとこ」
会話は、それ以上進まなかった。
キッチンから、涼ちゃんの声がする。
「えーっと……これは……」
ガサガサと紙の音。
病院でもらった薬袋と説明書を広げている。
「これは夕飯の後に飲むやつで……」
「こっちは朝と夜……あ、これは眠くなるかもって書いてあるな」
完全に独り言だった。
でも、その声は意識的に明るい。
「刺激物ダメ、イヤホン長時間ダメ……」
「音、大きいのも避ける、と」
若井が振り返る。
「元貴、聞いた?」
元貴はワンテンポ遅れて頷く。
「……うん」
本当は、半分も頭に入っていない。
涼ちゃんはフライパンを火にかけながら続ける。
「今日は消化いいやつにしよ」
「スープと、柔らかいやつ」
一瞬だけ、リビングの方を見る。
元貴はソファーで、
診断書を膝の上に置いたまま、動いていなかった。
涼ちゃんは何も言わず、またキッチンに向き直る。
「……よし」
若井は元貴の横に座ったまま、低い声で言う。
「元貴」
「今、無理に話さなくていいからな」
元貴は小さく息を吐く。
「……俺さ」
「聞こえないの、耳だけじゃなくなりそうで」
若井はすぐに答えなかった。
代わりに、ただ隣にいる。
キッチンから、涼ちゃんの声。
「夕飯できたら、薬の説明もう一回するから」
「今は、座ってていいよ」
その声に、元貴はやっと目を閉じた。
頭の中はまだぐちゃぐちゃだけど、
ここには、逃げなくていい場所があった。
あれれえ〜….?いいねが少ないぞ〜???もう更新できるエネルギーがないわあっ⤴︎満タンになったら飛んで帰ってくるねえ〜〜〜❤︎一旦消えます💨
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!