【お願い】
こちらはirxsのnmmn作品となります
この言葉に見覚えのない方はブラウザバックをお願い致します
ご本人様方とは一切関係ありません
白さん視点になります。
白さんは水さんとお付き合いしている設定ですので、苦手な方はお気をつけください!
ガチャンと玄関のドアが開いた音がした。
キッチンで夕飯の用意をしていた僕は、そちらを見もしないまま「おかえりー」と声だけ投げる。
「しょーちゃんしょーちゃん」
玄関からは、いつもより大きくて高いいむくんの声が聞こえてきた。
「でっかい犬拾ってきたよ!」
「はぁ?」
何の比喩なのか。
眉間に皺を寄せながら、味見に使っていたお玉を鍋に戻す。
それから「いむくん、うちで動物は飼えないって前から言ってるでしょ。返してきなさい」なんてよくある母親のセリフみたいなのをなぞりながら、僕は玄関の方へひょいと顔を出した。
「え、まろちゃん!?」
思わず目を丸くして、いむくんにも負けないくらいの大きな声が出た。
いむくんの隣にはまろちゃんが立っていて…。
なんだか普通じゃない雰囲気をまとっていたけれど、それよりもずぶ濡れなことに驚いた。
「え、傘とか持ってなかったん!?」
1時間ほど前だろうか。ゲリラ並みの大雨が急に降り出した。
降り出してから「コンビニに行く」なんて言い出したいむくんを止めようとしたほどの激しい雨だった。
…それでも出かけていったいむくんは相当変わり者やと思う。
「とりあえずさっき風呂沸いたばっかりやから、まろちゃん今すぐ入り!」
「えぇ〜、でもそれってしょにだとほとけがこの後一緒に入ってキャッキャウフフしようとしてたお風呂でしょ? そこを先に入るのってなんかきしょいじゃん」
親切でまろちゃんを風呂に促したのに、直後に否定的な声が聞こえてくる。
ただしそれを口にしたのはまろちゃん本人ではなく、それまでその陰に隠れて見えていなかったりうちゃんだった。
生意気な最年少は、ひょこっと顔を出して聞き捨てならない言葉を吐いてくる。
「え、きしょいってひどくない? それにきしょいって言うなら、どっちかって言うとキャッキャウフフした後に入る方が嫌じゃない?」
真顔と早口でいむくんがそんな返答をするものだから尚更シャレにならない。
「……頼むからりうちゃんもいむくんも黙っててくれる?」
あー頭痛い。放っておけば軽口の応酬がやまなそうな2人を制止した。
「まろちゃん、大丈夫?」
俯いたままのまろちゃんをそのまま風呂場へ押し込み、僕は作りかけた料理はそのままにタオルや着替えの準備を始めた。
「まろ、公園のベンチに座ってたんだよ」
風呂場からシャワーの音が聞こえてきたのを確認した後、りうちゃんが言った。
「え、こんな大雨の中?」
「そう。滝行でもしてるのかと思うくらい、静かに雨に打たれながら座ってた」
「え、何で…?」
「知らないよ。声かけてもあんまり反応ないし、だからどうしようかなと思ってたところに、ちょうどほとけっちが通りかかって」
それで2人がかりで連れて帰ってきたってわけね。
…ここ僕んちやけど。
「まろちゃんのああいうとこ珍しくない?」
配信上では幼児退行したり子ども扱いされたりすることが多いけれど、本当は誰より高スペックで周りのことを気遣えるまろちゃん。
悩んだりすることはそりゃあるだろうけど、僕たちにも目に見えて分かるほどに気分の落ち込みを表に出すような人じゃなかった。
「ないちゃんとかあにきに連絡した方がいいかな」
言葉にはしないけど、さすがにいむくんも心配しているのは伝わってくる。
そう提案してきたけれど、りうちゃんがいち早く首を横に振った。
「先にまろの話聞いてからにしない? ないくんたちに報告すべきことかどうかその後考えよ」
「え、でもいふくん話してくれるかなぁ」
「だから、そういう時のためのあれっしょ」
ウィンクしながら言って、りうちゃんが立ち上がる。
「開けるよ」と短く断ってから、僕んちの冷蔵庫を無遠慮に開けた。
中から取り出してきたのは、前に皆で飲んだときの残りのチューハイ。
「なるほど、酔わせますか」
いむくんが悪い顔で笑った。
風呂から上がってきたまろちゃんは、少し顔色が良くなったように見えた。
無反応に近かったリアクションも、少しだけ返ってくる。
「まろちゃんご飯食べる?」
「いや、いい。ありがとう」
まろちゃんのこういうところに育ちの良さを感じる。
自分が何か重いものを抱えて辛いときでも、こちらに対する気遣いは忘れない。感謝の気持ちは素直に述べてくれた。
「空きっ腹にお酒は良くないんじゃない?」
まろちゃんの前に缶チューハイを置きながら、いむくんがそう言う。
「いや、俺飲むとは一言も…」
「え? なんて?」
「…いただきます」
凄みをきかせたいむくんの言葉に、珍しくまろちゃんが素直に頷いた。
缶を開け、そのまま流し込むように口をつける。
気分が落ちて体も本調子じゃないだろうまろちゃんに、酔いが回るまでそれほど時間はかからなかった。
「で、まろは何であんなとこにいたの? 何があったの?」
まろちゃんの顔が真っ赤になってきたころ、りうちゃんがそれとなく話を振った。
「…言わん」
テーブルに突っ伏すように額をつけて、それだけ答えてくる。
「しょにだもほとけっちも相談に乗ってくれるよ? もちろんりうらも」
「しょにだとあほとけには絶対言わん」
「え、何で!?」
名指しで拒否されて少しショックだったのか、いむくんが抗議するように声を上げた。
「だってお前ら…結局ラブラブやんか…」
顔を伏せたままのまろちゃんのそんな一言に、僕はりうちゃんやいむくんと思わずお互いの顔を見合わせた。
僕といむくんの関係は…りうちゃんとまろちゃんには前から知られている。
以前誰もいなくなったと思っていたスタジオでキスしていたところを2人に目撃されたから。
それからはからかうでもなく誰かに話すでもなく、りうちゃんもまろちゃんも僕たちの秘密を守ってくれている。
「ラブラブなボクらには言いたくないってことは…いふくんの悩みは恋愛系ってことかぁ」
「あと微妙にりうらのこと一人身ってディスってて失礼だよね」
いむくんの言葉にりうちゃんが乗っかる。
まろちゃんの方は、「恋愛系」という言葉が図星だったのか「しまった」と思っているのが空気で読み取れた。
顔は上げないままだったけれど、微妙な間があったから。
「で、何があったの? 告白してフラれでもした? っていうかいふくん好きな人いたんだ。全然そんな素振りなかったじゃん」
「フラれ…てはない」
いむくんがまくしたてるように言うと、まろちゃんから絞り出すような声が返ってきた。
「フラれる前に…終わりにした」
低く這うような言葉に、僕はりうちゃんやいむくんともう一度顔を見合わせた。
「いふくんがフッたってこと?」
「…ちゃう。そもそも付き合ってたわけでもないし」
「だから『終わりにした』? え、でも付き合ってないのに終わりって…それってセフレだったってこと!? え、それともプラトニックな関係!? いやでも付き合ってないのに終わりってことはやっぱり体の関係は…」
「…も〜あほとけのそういうデリカシーのないとこほんまに嫌や」
テーブルから額を離し、少しだけ顔を上げたまろちゃんだったけど、気まずそうに眉を寄せて僕たちと目を合わせることはなかった。
「で、何で終わりにしたの?」
今度はりうちゃんが問う。
目線を外したままのまろちゃんの瞳は、酔ったせいで潤んでいた。
「そういう約束やったから」
小さく、呟くように言う。
「どっちかに好きな相手ができたら、終わらせるって」
「相手の子…好きな人できたん?」
「……多分」
重ねるように尋ねた僕に、まろちゃんは頷いて返した。
「『多分』て何。言われたわけじゃないの?」
「言われんでもなんとなく分かるやん…。最中にたまに遠い目するし」
大人な話に発展しそうで僕は慌ててりうちゃんの耳を塞ごうとしたけれど、当の本人に「りうらもう成人してるから!」とふてくされられて拒否された。
まろちゃんも…酔っ払ってなかったらここまで赤裸々に話すタイプじゃないよなぁ。
「俺の腕の中におるはずやのに、罪悪感に押しつぶされそうな…辛い顔するときあんねん」
でも、とまろちゃんは続ける。
「あっちから始めたこの関係を、自分の勝手で終わりにできるやつとちゃうから…」
「だから自分から終わりにしたってこと?」
いむくんが問い返すと、まろちゃんは「そうするしかないやん」と弱々しく応じた。
「話だけ聞いてるとすっごい自分勝手なお姫様みたいだけど…そんな女のどこが良かったの?」
いむくんが率直な感想を述べる。
「いふくんがそこまで想ってそこまでしてあげる必要ないじゃん」
「悪いヤツちゃうねん。むしろ優しすぎるくら、い…で…」
いむくんの言葉に反論しようとしたまろちゃんだったけれど、急激な眠気が襲ってきたのか語尾が途切れかけた。
そしてまたテーブルに顔を伏せる。
「まろ、眠くなった? 寝れるなら寝た方がいいよ」
りうちゃんがそう言ったから、僕も「まろちゃん、ベッド使っていいよ」と促した。
「いや、眠ないし」
「嘘ばっかり。ほら、ベッド行くよ。なんなら僕が添い寝してあげる〜」
「いらんわあほと…け…」
拒否しようとしてうまくいかず、まろちゃんは結局そのままいむくんに連行されるように寝室に連れて行かれた。
「大丈夫なの? あれ」
2人が寝室に消えて行ったのを見送ってから、りうちゃんがそう口にした。
散らかったままの缶やらなんやらを片付けようと手を伸ばした僕は、「うーん」と眉を寄せる。
「さすがに心配やなぁ、まろちゃん」
「違う。しょにだだよ」
「え、僕?」
思いがけないことを言われたものだから、僕は思わずまじまじとりうちゃんの顔を見つめ返してしまった。
「いくらなんでもほとけっちがまろと添い寝はどうかと思うけど」
…あぁ、そういう意味ね。
どうやら僕の心配をしてくれたらしいりうちゃんに、微笑んでみせた。
「まぁでも落ち込んでるときに誰か一緒にいてくれたら落ち着くやん? それにまろちゃんは家族みたいなもんやし」
嘘偽りない本音を口にする僕を、りうちゃんはじっと見据えてくる。
「それに、いむくんが好きなんは僕だけやしね」
ニッと笑ってそう言葉を添えてやると、りうちゃんは呆れたようにため息をついた。
だけどそれから、小さく苦笑を浮かべる。
「しょにだはそういう人だよね。愛情が深い。相手を信頼してるし相手の幸せが一番って感じ。多分まろもね」
「なに、照れるやん」
褒めても何も出えへんで、とからかうように続けたけれど、りうちゃんは笑い返しはしなかった。
真面目な顔で「多分あにきもそういうタイプ」と続ける。
「そんでほとけっちは知らないけど、りうらとないくんは…」
一度言葉を切って、りうちゃんは小さく笑んでみせた。
いつもの最年少らしい無邪気な笑顔ではなく、少し黒い…悪い大人のような。
「独占欲と執着心の塊だよ。自分以外の誰かが好きな人に触れるなんて絶対許せないタイプ」
指一本でもね、と付け足したりうちゃんに、僕は「えぇ〜そう?」と返すことしかできなかった。
「ところでしょにだ、りうらさっきからずっと気になってることがあるんだけど」
「えぇ…何? なんかさっきからりうちゃん怖いねんけど…」
話を改めるような導入を口にしたりうちゃんに、僕は少し姿勢を正す。
なんだか嫌な予感がした。
「まろが持ってたタオルなんだけどさ」
床に放置されていたままだったタオルを指さして、りうちゃんが言う。
それを目線で追って、「あぁそういえばまろちゃん持ってたっけ」と思い出した。
「服と一緒に洗ってあげれば良かった。後でもう一回洗濯機回すかぁ」
タオルを拾い上げながらそう言う僕に、りうちゃんは容赦もためらいもなく続けた。
「それ、多分ないくんのタオル」
「…………え?」
「ないくんちで見たことあるもん」
さらりと流れるように言うりうちゃんの言葉に、僕は思わず自分の耳を疑った。
「…え、でも…タオルなんて同じ物どこにでも…」
「ないくんちの柔軟剤の匂いと、ないくんの香水の匂いがする」
「………」
それは…つまり……。
顔が青ざめるのを実感すると同時に、僕はまろちゃんの相手がはっきりしたことで彼の胸の痛みをよりリアルに想像できてしまった。
口元を手で抑え、りうちゃんと互いの顔を見合わせる。
「どうする? ほとけっちにも言う?」
「…いや…」
りうちゃんの問いに、即答するように首を横に振った。
「しばらくは…僕ら2人だけの胸に留めとこ。まろちゃんのためにも」
ないちゃんのためにも、と続けて、僕とりうちゃんは大きく頷き合った。
コメント
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優しすぎるくらいのメンバー愛が伝わってきて疲れた体に染みちゃいます……😭😭💞 水さんと白さんがお付き合いしている世界線でイチャつきがほっこりします…😖💓 青さんに弱せて本音を吐かせるような作戦……心情が今まで無かった分青さんの考えが分かりました……けど、『たぶん』好きな人がいると思っているとは予想外過ぎました、!!😳✨ 毎回予想外な台詞があって気になる一方です……✨✨
ぅわ〜…青さんに桃さんの好きな人は青さんだよって伝えてあげたい…😭 やっぱり恋愛してる時って周り見れなくなるって言うか… 普段よりも常識が抜けるんですよね…しかも恋って繊細だから、ちょっとしたことで喜んで悲しんで… 難しいですよね😓 周りの人から見たらすぐに分かるんだけど本人達は鈍感になりやすいんですよね–…青さんの心情がようやく少し読めましたね☺️ 更新ありがとうございます😊😭 今回も最高でした