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こちらはirxsのnmmn作品となります
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ご本人様方とは一切関係ありません
ほとけとは別の意味で、距離感が近いヤツやなとは前から思っていた。
ほとけはスキンシップが多いけれど、それは俺に限ったことじゃなかった。
付き合ってるらしいしょにだはもちろん、りうらの頭を撫でたりもするし、俺の膝に頭を乗せてくるし。
でも、ないこはそれとは少し違っていた。
赤組ビジネスBLなんてネタをしているけれど、配信外でのりうらとの距離は一定を保っている。
そんなないこが俺にはもたれかかってきたり甘えてきたり…距離感が近いな、とは思っていた。
だから初めてキスされたときには、驚きはしたけれど今までのスキンシップの延長だと思った。
体の関係に発展するまで、そう時間はかからなかったように思う。
それも多分、今までの延長上…過度なスキンシップに過ぎないと思っていた。
誘ってきたのはないこだったけれど、流されたつもりは全くない。
もう大分前からないこのことが好きだった俺からしたら、拒むなんて選択肢もなかった。
「どっちかに好きな人ができたら終わりにしよ」
そう無邪気に言ってきたのもないこだった。
ないこは知らない。
俺にもうとっくに好きな人がいることを。
だから俺にとってその約束は、「ないこに好きな人ができるまで」と意味が変換された。
逆に言えば、ないこに好きな人ができるまでは俺のものでいてくれる。
今思うと、そんな一時の幸福感に流されたことがそもそも間違いだったのかもしれない。
だけど、いつからだっただろう。
甘えてくるないこの顔が、時折曇るようになったのは。
どこか遠くの何かを見据えるようなピンクの瞳。
行為の最中に、何かに耐えるように固く目を閉じて必死で抱きついてくる腕。
それのどれもがないこの不安と辛さを表しているようで、俺は段々とこの関係が終わりに近づいていることを予感した。
(解放…してやらな)
そう頭では分かっていたのに、なかなか実行に移せなかった。
ないこに誰か好きな人ができたのだとしたら、あんな約束をしておきながらもあっちからは終わりを切り出せないはずだ。
そこまで自分勝手になれるヤツじゃない。
だから、俺からこの手を離さなければ。
…最初からそう決めていたのに。
活動上は社長でありリーダーであるため、場を取りまとめるしっかり者のイメージが強い。
そのないこが裏では甘えてくるのが純粋にかわいくて愛おしかった。
そのせいで、何度も切り出そうとした別れはなかなか言い出せないままだった。
きっかけになったのは、ある日ないこの家にメンバーが全員集まったときだった。
あにきが飯を作ってくれるという話で、それぞれが土産を持ち寄りながらないこハウスに集合した。
そんな中、キッチンであにきの手伝いをしているないこの表情がたまに翳りを落とすのに気づいてしまった。
おそらく他のメンバーは誰も気づいていない。
その程度の些細な違和感。
もしかしたらこの中にないこの好きな相手がおるんかな…と漠然と思った瞬間、自分の立たされた立場を思い知らされた。
恋だの愛だの、そんな感情で始まった関係じゃない。
ただ誰かに甘えたかったないこと、甘えさせたかった俺の利害が一致していただけ。
ないこに本命ができるまで、という約束を思い出したとき、「お前の役目は終わりだ」と頭の中でもう一人の自分の声がした気がした。
ないこに終わりを告げに言った日、急に豪雨に見舞われたのだけが想定外だった。
ずぶ濡れの俺にタオルをかけ、髪を拭いてくれるないこに別れを告げる。
驚いたようなピンク髪が、それでも「分かった」とあっさり納得した。
「まろ、好きな人できたの?」
最初の約束を思い出しながらのないこの問いに、「ごめん」と答えるしかなかった。
そう思ってもらえるならその方がいい。
俺に好きな人ができて終わりにする…そういう筋書きの方が都合がいい。
…だから、どうか俺に罪悪感なんて抱かないで幸せになってくれ。
それだけを願っていた、はずだった。
でも…
もしも、少しでもためらってくれたなら。
その瞳が、俺との別れでわずかにでも揺らいでくれるなら。
もう一度だけ、この手をお前に伸ばせる気がしたのに。
「分かった。そういう約束だったし」
だけど、最近では辛そうな顔ばかりしていたお前がそう言ってきれいに笑うから。
あぁ俺の選択は間違ってなかったんだ、と、伸ばしかけた手を引っ込めるしかなかった。
そうしてないこの家を逃げるように後にした。
ふと目を覚ますと、そこは真っ暗な部屋の中だった。
すぐ隣には、闇の中でも光るように映える水色の髪。
すやすやと静かな寝息をたてるほとけを見やって、俺は何があったかを思い出した。
そうだ。ないこに別れを告げて、全てが終わってしまった虚無感に襲われて。
家に帰る気にもなれず、ただ大雨に打たれながら公園のベンチに座っていたところをりうらに見つかった。
ほとけも来て、しょにだの家に連れて行かれ…そうだ、酒を飲んで…。
(いらんこと喋ったな、俺)
思い出したら自分の醜態に嫌気がさしてきた。
暗闇に目が慣れてきた頃、枕元に俺のカバンが置かれているのに気づいた。
おそらくしょにだだろう。
今の時間を知りたくて、カバンの中に手を伸ばす。
取り出したスマホの時刻は、もうすぐ22時を指すところだった。
時計を確認するのと同時に、画面に出ていたアプリの通知に気づく。
思わずドクンと胸が一度高鳴った。
…ないこの、配信通知。
そういえば今日はないこが担当の日だったっけ。
思い出しながら、自分で考えるより早く、俺はもう一度カバンに手を伸ばしていた。
ワイヤレスイヤホンを取り出して、接続する。
ないこの配信はもう終わりの時刻に近づいていて、最後にリスナーの名前を読み上げているところだった。
ノイズキャンセリングされたイヤホンから、低く穏やかな声が耳に届く。
静かな声音に目を伏せると、全部の意識がそちらへ傾いた。
『だいすしだよ』
そう配信を締めくくる甘いセリフは、何千人ものリスナーたちへ向けられたもので俺へのものじゃなかった。
そんなことは分かってる。
でも…
「俺もだよ」
胸の痛みに耐えるように目を固く閉じて、思わずそう呟いた。
コメント
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こんなにも気持ちよくすれ違うことってあるんですね……っ。 桃さんも青さんもお互いに溜め込んじゃうタイプだからな〜…… お互い気遣って気遣って傷付いてってしてるの見てたら本当に涙が出てしまいそうになっちゃいました(´•̥ω•̥`) こういう話見てると胸が痛くなっちゃいますね🍀*゜ 更新ありがとうございますm(_ _)m 最高でした😭👏✨っ!!