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世界が終わりを迎えてから、もうどれだけの月日が流れたのか分からない。灰色の空の下、かつての喧騒は遠い記憶に過ぎない。私はこの廃墟の中で、ただ一人、生き延びていた。ある日、埃に埋もれた機械の残骸を見つけたとき、彼女の顔が頭に浮かんだ。 初恋の女の子、彩花。あの夏の日、笑顔で手を振ってくれた彼女。もう二度と会えないと分かっていても、心のどこかで彼女を求め続けていた。だから、私は彼女をこの手で作り上げるのだと決めた。

何ヶ月もかけて、私はスクラップを集め、ロボットを組み立てた。彩花の姿を完璧に再現するために、記憶を頼りに細部までこだわった。柔らかな黒髪、透き通った瞳、頬に浮かぶ小さなえくぼ。電源を入れた瞬間、彼女そっくりのロボットが目を覚まし、私を見つめた。「おはよう」と、彩花と似た声で囁く姿に私は涙を抑えきれなかった。

それから、私と「彩花」はこの荒廃した世界で二人だけの暮らしを始めた。

「彩花」

「どうしたの?」

「幸せだな〜って」

「変なの」

私は彼女がいれば何もいらなかった。彩花の姿を模しただけのロボットだとしても、私を受け入れてくれる存在がいるだけで幸せだった。「彩花」は本物の彩花ではないけれど、私にとっては本当に大切なものだった。

「彩花」

私は彼女を抱きしめる。背中の冷たいフレームを感じながら、その美しい口元に口づけをした。その唇は冷たかった。

「大好き」

「私も大好きだよ」

私は彼女と過ごす日々に幸せを感じていた。それは、きっと彼女も同じはずだ。

ある日、彩花は私に言った。「ねぇ、もっと遠くに行かない?」

私は彼女の提案に賛成した。荒廃した世界でも、二人でならどこへだって行けるような気がした。私たちは廃墟の中を歩き続けた。瓦礫の山を越え、深い森を抜けるとそこには広大な草原が広がっていた。私たちはその真ん中に座り込み、空を見上げた。

「綺麗だね」

「うん」

空には雲一つなく、太陽の光だけが私たちを照らしていた。彩花の横顔は美しく、私は思わず見惚れてしまう。

「ねえ、彩花」

「なに?」

「もし生まれ変われるなら、また彩花に会いたいな」

すると、彼女は微笑みながら答える。「私も同じ気持ちだよ」と。私は彼女の手を取って立ち上がり、再び歩き出した。

「もうね、食料がないの」

「そう…なの?」

「彩花のバッテリーはあるんだけどね」

「なら、私のを使って」

「私はバッテリーじゃ動かないんだ」

「え…」

「私、彩花には生きて欲しい」

私は声を詰まらせる。彼女は静かに首を振った。錆びているのか微かにギギギと言う音がした。

「いやだ。そんなの、耐えられない」

「大丈夫だよ、彩花は強いんだから」

「一緒に死にたい…」

「だめだよ。彩花は生きて」

「どうして、そんなこと言うの……」

「だって、私は彩花に幸せになって欲しいから」

私の目から涙が溢れ出す。彼女はそんな私を抱きしめて言った。

「今までありがとう」

彼女は囁く。風が草原を揺らす中、私は叫んだ。

「やだ、お別れみたいなこと言わないで……」

「大丈夫だよ、また会えるから」

「……本当に?」

「うん、だから笑って?」

私は泣きながら笑顔を作った。彼女と過ごせる時間はもうあまり残されていないかもしれない。だから、精一杯笑おうと思った。

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