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「…あ“ぁ?」
目が覚めたのは薄汚れた小屋だった。
なんとも言えない不快感に、顔を手で覆い、小さく呻く。
最悪の目覚め…
まるで家畜小屋のようなこの厩舎は、紛れもない、”愛しの我が家“だ。
親の顔よりも見慣れたこの厩舎。
親の顔なんて一度たりとも見たことないが。
人はこれを”見世物小屋“又は”化け物小屋“と呼んだ。
”人“では無い俺らにとってはただの刑務所だった。
この小屋に住む“見世物”の種類は様々。
人間の形を保っているものから、俺のように、ほとんど人間の形を保っていない者もいる。 性格だって、十人十色。“人”じゃ無いけどな。
閑話休題。
のそのそと起き上がって、壁に掛かっている縦長の鏡に全身を写してみる。
鏡に写っているのは、銀河を集めたような模様の青い顔、下に伸びる真っ黒な体。
青いモヤのかかった無駄に長い足。
パーツの一つ一つが忌々しい。
「…っ」
辺りに響く、鏡の割れる音。
さっきの忌々しい化け物は居なくなっていて、目の前に広がるのは大きなヒビが入り、粉々になった鏡だった。
腐っても化け物だったな。
少し力入れただけでこの様だ。
自分が人間ではなく、ただの“化け物”なのだと、再認識する結果となってしまった。
厩舎の隅にペタリと座り込む。
後ろから差し込む日差しを浴びて、ぼんやりと考え事をする。
こういう日に限って、仕事がないのだ。
「……」
壁の穴から外を覗くと、外からこちらを覗いている少女と目が合った。
「……」
すっと顔を上げる。
なんだ?今のは。
こんな汚い場所に、あんな身なりを正した少女が…?
一体どういう風の吹き回しだか…
とうとう俺にも幻覚が…
「ねぇ、そこのお兄さん。」
あぁ…幻覚の次は幻聴まで…
だいぶやられたみたいだな。
呆れたように笑った。
「ねぇ、聞こえてるんでしょう?」