放課後の四年二組の教室、 僕は帰り支度をしていた。
するとクラスメートの馬場が、ふと僕の肩に手を伸ばしてきた。
!?
「ゴミ…付いてる」何かをつまんで捨てた。
「あ、ありがとう」
「なんでお礼?」
「?何かをしてもらったらお礼するでしょ?」
「変なの」そう言って馬場は笑った。
「そうだ、ねぇ山本、ゲーム持ってる?ファミ…テレビゲーム」
「え?ううん、うちはゲームボ…携帯ゲームしかない。欲しいけど…」
「ホント!?携帯ゲーム機持ってるの?私も!みんなテレビゲームばっかりだから一緒に遊べなくてさ。いつも遊ばせてもらってたんだ。どんなカセットを持ってるの?」
「アクションとかRPGとか色々持ってるよ。うちはテレビゲームが無いから、中古で携帯ゲーム機のカセットをいっぱい買ってるんだ」
「え~すごい!あたしもお兄ちゃんのとか貸してもらってるけど、そんなにいっぱいは無いよ。今度見せてよ!…やっぱり今日見せて!」
「え?今日?いいけど…」
「やった!ゲーム大会しようよ。どこがいいかな?」
「う~ん、神社とか公園とか?」
「なんか秘密基地とかあったらいいのに」
秘密基地…思い当たりがあった。
「うちの近くの高架下で、川と交わるところが秘密基地みたいになってるかも…」
「なにそれ!いいじゃん教えてよ!じゃあ一回帰ってゲーム取ってきたら校門前に集合ね!あ、自転車で来るから!」
そう言うと馬場は急いで帰っていった。
うちの学校は男子と女子の仲は悪くないけど、あまり一緒に遊ぶことはなかった。
学校の外で女子と2人で遊ぶ約束なんて、元々家が近くて小さい頃から遊んでいる人たち以外ではとても珍しい。
僕はなんだか嬉しくなって、家に帰ると自慢のゲームカセットをリュックに詰めて、自転車ですぐまた学校に戻った。
校門が見えてくると自転車に跨がって待っている馬場が見えた。
「持ってきたよ」
「じゃあ秘密基地に連れてって」
「まだ秘密基地になってないけどね」
などと言いながら二人並んで自転車をこぎだす。
10分もしないうちに目的地に着く。
この辺りの高速道路の高架下はトンネルになっている所が多いけど、ここは川の堤防みたいなのと交差して、天井がある広い空間みたいになっている。
ここはあまり人が来ないし、少し周りと高さが違うので目立たない。
「ここだよ」
「わぁ、結構広いしいいじゃん!」
「うん。レジャーシート持ってきたから広げるね」
シートに2人で座ると、僕は早速自慢のゲームたちをリュックから出す。
「すごいいっぱい!へ~こんなのもあるんだ。これも、これも…」
馬場はあれこれ手に取り見ている。
「好きなのやっていいよ」
「うん。あ、山本これやる?」
見せられたのは僕が持っていないRPGだった。
「お兄ちゃんのだけどおもしろいよ。セーブスロットが空いてるから新しくセーブ作ってもいいし」
自分はまだ途中だけどクリアできるなら先にしてもいい、と言われた。
僕はそのゲームを借りることにした。
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