テラーノベル
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エドガーから連続して放たれる、火や雷の魔法の数々。
それを叩き落とすようにして破壊を繰り返して接近する。
「『連鎖招雷』ッ!」
「もう諦めてくれよエドガー!!」
砕けて落ちる。
それが形の定かではない炎や火花でも、例外なく。
魔法の効力を次々と失い、動揺している王様の顔面に向かって思い切り盾を投げつける。
「賢し!」
盾の投擲は直接のダメージを狙った攻撃ではなく、それを目隠し代わりにした接近するための餌だ。
が、戦闘慣れしているエドガーがそんな狙いに気が付かないワケがなく。飛来する盾を素手で弾き、オレに向けて折れた剣を刺突をしてくる。
……というところまで、全部オレの想像通りだ。
オレが危惧してたのは破壊の権能じゃ対処不能な魔法を扱われることだった。例えば、ヤケになってこの城ごと爆破するみたいなヤベェ魔法を使われるとか。
そんなことをされたら、破壊だけで対応できる自信はない。その可能性を、盾を投げることで反撃を誘い選択肢を狭めたのだった。
溜めた右ストレートが、突き出された剣の刃を鍔まで粉々に破壊していく。
硬直を挟むことなく、腹部に向けて前蹴りを繰り出す。
エドガーは、反応出来ず。
蹴りが鳩尾に直撃したのか、刃をなくした剣の柄をその場に落とし、腹を抱えて後退った。
「がッ……!」
「お前は優秀だ。 剣術も、一対一の読み合いも、素人目のオレからでも分かるくらいの戦闘の達人。 お前自身もそれを理解している。 そして、自分の腕と勘を信頼している。 だからこそ、刺さる。 お前の常識を超える出来事が! 最強ってのは奇跡を起こす必要がない。 ハングリー精神に欠けてやがる。 だから、奇跡に対しての免疫がねえ!」
なにくそ、と飛びかかってきたエドガーを、引き撃ちの顔面フックが捕らえる。
「なっ、は……!?」
「お前はこの国で最強らしいじゃねえか。 最強、最強ねえ? 雑魚を寄せ付けず、ただ火力で葬ってきたんだろ? 剣と魔法でよ! じゃあそのどっちも使えなくなったらどうだ、エドガー! どうやらステゴロの喧嘩の経験はオレの方があるらしいな!?」
「きっ、貴様ああぁああああっ!!」
エドガーが伸ばした手に、魔法陣が絡み付く。
が、その手首を掴むようにして魔法を破壊し、手前に引く。
右の拳が、刺さる。
「ぐァう……、この、私を! 虚仮にしおってええ!!」
王様の四肢に鮮やかな緑葉色の魔法陣が複数現れ、その動きが途端に軽くなる。
どうやらさっき見た移動補助魔法ってやつを強めたらしい。
バッタみたいに地面を蹴っては、着地先で地面を蹴り返し、更にその着地先で蹴り返し……、小さな跳躍とステップを刻んで視界の中を目まぐるしく移動し続ける。
「奇跡が何だ、『転生者』が何だ! お前のような流れ星が魔王征伐・救世の希望と呼ばれていたのはもう過去の話! 父が亡くなり、私が王となり、こうして贄となる『結晶』も用意できた今! この国は……、否、この星は! 私という究極の魔法剣士によって救われるのだ!!」
「……なに勝手に張り合ってんだ? オレは初鼻から魔王倒して賞賛される勇者の座になんて興味ねえよ。 ただ、妹と家に帰りてえだけだ。 相撲してる土俵が違ぇのに、勝手にオレを恨んで勝手に盛り上がりやがって! お前は餓鬼だよエドガー。 国がどうだのこうだの言って、結局自分が一番かどうかしか見えてねえ。 妹の話も聞けねえ大バカ野郎なんだよ!」
「呆吐けッ!」
高速移動するエドガーを迎撃するなど、殆ど不可能に近いと思った。
しかし、ある異変が勝機を感じさせた。
それは頭痛と共に起きた、急激な動体視力の上昇。
破壊の権能を短時間に使いすぎたことが影響しているのだろうか。理由は分からないが……、見える。
目にも止まらぬ、と表現すべきエドガーの連続挙動を、翻弄されず目で追うことが出来る!
思えば、以前にも似たようなことがあった。
ゾンビだらけの学校で、テロリストから逃げ体育館を目指していた時のこと。
校舎と校舎を繋ぐ渡り廊下からグラウンドを見た時、米粒サイズのゾンビ達のことがハッキリクッキリと見えた経験があった。
”あれも全部ゾンビかよ……、しかも数十体はいる。 腸出したり骨出したり、グロテスクのオンパレードだな……”
”君、よくあんなのが見えるな……。 ここは三階だよ? 私も視力は良い方だけどね、この距離じゃあ、個々のディテールまでは見えたもんじゃないぞ……”
”え? あ、あぁ……、確かにな”
”はぁ……?”
視力の変化。
他のタイミングでも何度か覚えがある。
自分の身体に何が起きているのか心配になるっちゃなるんだが、この異変は利用できる。
この眼ならエドガーを見失うことはない!
「黒の十四、連続執行!」
高速移動するエドガーの腕が青い氷に包まれていく。
すぐに肘あたりまでをすっぽりと覆う三角錐が完成し、アイスの棒みたいになってしまったそれが四発に分けて連射される。
空気を裂き、直進する氷塊。
先端恐怖症なら目を覆い青ざめる場面だろう。
……が、冷静に考えれば様々な角度から氷を放とうとも、それらが集まる場所は一点だ。ここに立っているオレに向かってくるっていうなら、オレが動く必要はない。
ただ、手を伸ばして、接触のタイミングに合わせて願うだけ。どれだけエドガーが目まぐるしく動こうとも、こっちがやる事は変わりはしない。
「……壊れろ!」
手のひらに確かな衝撃、そして、崩壊。
撒き散る角氷と粉雪が足元に落ちて積み上がる。
「もう、充分だろ」
「巫山戯ろ、手品師め!」
エドガーの行動をサポートしていた魔法がシンナリと消え、闘気のようなエナジーが正中線を走り、肩から肘へと渡り、折れた剣へと集中していく。
青い静電気が線香花火みたいに発散されていくと共に、辺り一帯の空気が塗り変わる。
「私は……、魔王を挫くヴィクトーリアの希望! 真の勇者だ! 先代たる父上より王位を継承し、血族の悲願たる魔法光剣術を究極の域へと進める使命を持っている。 ……お前なんぞに土をつけられるなど、あってはならんのだァ!!」
エドガーの身体の節々から、青い炎が溢れ出る。
それが靡いたと思えば、今度は自然のものとは到底思えない突風が訪れた。
近くの装飾品や家具なんかを浮かせて散らかすほどの旋風を、床に手をついて耐える。
「見せてやろう……! これが、これこそが! 人類が魔王を殺す可能性を宿す、唯一の武器! 私が王たる所以だ!」
エドガーの手元で青白い閃光が口を開く。
拡張、そして整形。
高出力の光は青白い大剣と成り、それは燃え滾り、冷え渡り、揺れ動き、実り弾け、淀み陰り、煌めき輝いていた。
「見よ! これが七つの属性全てを集約させた、魔王すら殺す可能性のある唯一の可能性だ。 あの父ですら五属性が限界だった! それを私が更新させたのだ! しかし、まだ足りん。 私は山頂を発見したに過ぎない。 現状、この魔法剣はまだ不完全だ。 強大な魔法には、それに伴う膨大な魔力消費が必要となる。 私ほどの大魔法士ですら足りぬ。 十数秒ほど刀剣の形を維持させるので精一杯だ。 ……だが! あの『夢幻』なら! あの無限にも近い魔力をこの魔法剣に込められたなら、究極の魔法剣は遂に完成する! お前なんぞに邪魔立てされてッ、たまるものか!」
オイルの水面みたいに不気味に光る大剣は、頭上に掲げられただけで旋風を巻き起こす。
アーシアが森で見せた魔法剣とは明らかに格が違うと分かる。
「やめて、やめてっ! エドお兄様っ!!」
「来るな、アーシアッ!」
「奇跡などそう何度も何度も起きるものか!! 黒の一、黒の二、黒の三、黒の四、黒の五、そして黒の十、黒の十五。 全てを並列敢行。 私の持つ全ての魔力を解放して発現させる破壊の権化! 究極終着合体魔法、『七属性解放剣』ッ!」
雷でも落ちたみたいな発光と共に、青白い魔力の大剣が振り下ろされる。
その勢いで刀身は伸び広がり、剣先が城の天井を切り裂いていく。10メートルはあろうかというオレとエドガーの間の距離を確実に埋められる、クソみたいなチート技だ。
当たったら即死、良くて大怪我。
どっちにしたってゲームオーバーだ。
…………それでも。
「……オレは、信じてる。オレ自身でも、オレに宿ってる力でも、神様でも、女神でも、天の気まぐれや偶然でもねえ。 オレを助けてくれて、信じてここまで連れてきてくれたお前の妹を信じてる。 信じる力は、きっと魔法を超える! 奇跡を超える!!」
振り下ろされる魔法剣に対して、オレは何もしない。
頭を下げて防御することも、振り返って逃げ出すことも、腕を突き出して迎撃することもしない。
ただ、信じて願う。
ぶっ壊れますように、と。
それは、高くから捨てられた花瓶みたいに。
轟音と共に、派手に、破裂した。
「――――ば、馬鹿なぁッ、こん、な、事、」
破壊の前には、究極の魔法剣だろうと例外はなく。
オレの肩に触れた位置から超速でヒビが入り、そして、二度と復元できないくらいにバラバラになった。
「わ、私の……、究極の魔法剣が……。 『魔力の穴』……、いや、そんな……、偶然が、連続するなんて……」
「……今のは偶然の奇跡じゃねえ。 必然の奇跡だ。 お前は、自分を信じた。 自分の持つ力と野心を信じた。 でもな、お前がお前を信じる力より、オレとお前の妹が信じ合う力が勝ったんだ! 分かるだろ、力と力のぶつかり合いは、強い方が勝つ。 だからこれは偶然じゃねえ、必然の奇跡だ……!」
散った魔法剣の欠片が、空中で霧散していく。
エドガーの手から、光が消失していく。
魔力を使い切ったからか、王は脱力してその場に膝を折った。
「……今度こそ終わりだ、エドガー!」
JACK KINGSLAVE
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睡蓮
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#異能力バトル
名無の男2
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コメント
1件
読了しました!第121話、バトルの熱量がすごかったですね…!「信じる力が魔法を超える」「必然の奇跡」というテーマが、エドガーの究極魔法剣と対比になってグッと来ました。特に「ぶっ壊れますように」というシンプルな願いが、あの大技を粉砕するラスト、痺れました。エドガーも「自分が一番かどうかしか見えていない」と喝破されるシーン、キャラの本質を突いていて好きです。妹を信じる強さが勝った、という構図、とても綺麗でした🔥