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📖 第四章:「夜の境界線」
夜。
街灯がぼんやりと並ぶ道を、静かに雨が濡らしていた。
コンビニ帰りの糸師冴は、傘もささずに歩いている。
手には、買ったばかりの飲み物が一つだけ。
空気は冷たく、街の明かりもどこか遠く感じられる。
人の気配は少なく、夜の静けさが異様に深い。
角を曲がろうとしたその時——
遠くから、かすかに足音が聞こえた。
「……サエくん?」
振り向くと、○○がいた。
傘は持っていない。
髪は少し雨に濡れ、夜風に揺れている。
目はいつもと変わらず、こちらを見ていた。
雨に濡れた髪の隙間から、月明かりがほんのりと頬を照らす。
冴:「こんな夜に、何してる」
○○:「散歩……かな」
声は軽いが、どこか落ち着かない。
冴は答えず、ただ目で確認するように○○を見つめる。
少しの沈黙。
夜の冷たさと微かな雨音だけが、二人を包む。
○○は小さく息を吐き、道端の水たまりを踏みながら歩く。
コツコツ、と靴の音が濡れたアスファルトに響く。
○○:「ねえ、サエくん」
冴:「……何だ」
○○:「夜って、なんか怖くない?」
冴:「別に」
相変わらず、淡々と。
○○は小さく笑った。
○○:「そういうところ、変だよね」
雨が少し強くなり、二人の間に小さな傘の影ができる。
○○は立ち止まり、冴の方をちらりと見た。
○○:「でも、サエくんが一緒なら……ちょっとだけ平気かも」
昨日の屋上での時と同じ、少しの頼もしさが混ざった声。
冴は何も答えず、ただ歩く。
目は前方を見据えたまま。
それでも、肩の力は少しだけ緩んでいる。
歩きながら、○○は小さな声で続けた。
○○:「ねえ、私さ……普通の人みたいに笑えるの、少ないんだよね」
冴は振り返らない。
冴:「……そうか」
短い一言。
でも、その静けさの中には、微かに注意深さが混ざっていた。
○○は少し考えるように足を止める。
○○:「でも、サエくんといると、笑っちゃうんだよね……不思議」
雨粒が頬を伝い、夜風に混ざって流れる。
彼女の目は、わずかに潤んでいるのに気づく。
冴は歩みを止めず、ただ横目で見る。
冴:「別に、どうでもいい」
冷たい言葉。
でも、どこか真剣なまなざしが○○から目を離さない。
二人の足音だけが、濡れた道に反響する。
○○:「ねえ……サエくん」
冴:「……何だ」
○○:「もし、私がここでいなくなっちゃっ
たら……どうする?」
冴:「……知らねえ」
答えは淡白。
でも、答えの奥には、逃げない意思がある。
○○は小さく肩をすくめて、くすっと笑う。
○○:「そっか……やっぱり、サエくんって面倒くさいね」
それは冗談のようで、ほんの少し真剣さを含む。
二人はしばらく歩き続ける。
雨の匂い、夜風の冷たさ、遠くの車の音。
それらすべてが、二人だけの世界の一部になる。
○○:「ねえ……もうちょっとだけ、一緒にいてくれる?」
冴は少しだけ目を細める。
冴:「……別にいい」
短く、でも確かな答え。
○○は笑う。
その笑顔は、夜の闇にぼんやりと溶け込むようで、でも確かに彼の存在を感じさせるものだった。
街灯の影に映る二人の影。
濡れた道にゆらめき、互いに重なり、少しずつ距離を縮めていく。
夜の冷たさと雨の匂いの中で、静かに、でも確かに――
二人だけの時間が、ゆっくりと流れていった。
END
サエのみみ赤くなってました笑 )) ~ ○○