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【side:リュクルゴス・アルムグレーン】
バルディン帝国の城。
ここには皇帝直属である賢者リュクルゴス・アルムグレーンの姿があった。
リュクルゴスは宮廷魔術師と違い、外に出ることが無い。仮に帝国領内で問題が起きても、わざわざ賢者がすることではないのだ――と、決められてもいないのにそれが宮廷内での常識となっている。
リュクルゴスは弟ルカスを追放後、帝国はもとより帝都からも去った報告を受けていた。しかし呪いの宝石を調べる為に、ルカスが宝石鑑定屋に立ち寄ったことを知る。
その時点で、賢者は任務に就いていない宮廷魔術師に緊急召集をかけた。皇帝に知らせずに集め、賢者はルカス拘束の指示を出す。すると、すぐに居場所が分かりロッホに向かわせるが……。
ルカスがすでにいなくなっていたことを聞かされ、再度命令を下すことに。
「そこの――名は?」
「は。わたくしめは、魔術学院特務科卒業のナンバー3、カトルにございます」
「……隣の者は?」
「同じく特務科卒業ナンバー7、セットでございます」
ありふれどもめ。特務科だろうが何だろうが、使えなければ全て同じではないか。
「特務科というのは特別な任務をこなすのであろう?」
「さようでございます」
ふん、口先だけは達者な奴らだ。だが特務科の者は今後も大量に卒業してくるわけか。そうすればルカスを追い詰めることは簡単になる。別の大陸に行く前に奴を探し出し、呪いの宝石ごと奴の自信を粉々に砕けば……。
ふっふっふっ、他愛もないことよ。
エルセが帰還すればさらに楽になるが、エルセは期待出来んな。
「――ならば、特務科の宮廷魔術師よ。これよりお前たちは私から直接命令を下す者とする! 私からの命令は、皇帝からの命令と知れ!」
「ははー!」
「では、そこの五人は急ぎ帝都門に向かえ! 監視任務に就き、これより通行する者全てに声をかけるのだ! もしその者がルカスであったならば、直ちに拘束せよ!」
「ルカスというと罷免の……?」
「そうだ。早く行くがいい!!」
バルディン皇帝か。賢者のオレと聖女のエルセしか謁見出来ぬが、会わずとも何も問題は無いな。帝国の意思は賢者であるオレの意思。いずれルカスともども宮廷魔術師どもを粛清してやる。
そうすれば――くくくく。
ふん、そろそろルカスを捕らえて来る頃だな。オレの命令どおりに運べばの話だが。
「リュクルゴス様。至急のご報告がございます!」
ウワサをすれば帰って来たか。ルカスめ。お前を自由に生きさせるつもりは無いぞ。
「……何? もう一度、聞こえるように報告を頼む」
「は、はっ……。帝都門に展開していた宮廷魔術師は、先ほど浴室に突如として出現しました」
「浴室? 全員呑気に湯でも浸かっていたとでもいうのか?」
「いえ、着の身着のままに……」
馬鹿め。あのルカスごときに追い散らされたとでもいうのか?
これだから家名無しのありふれどもは好かんのだ。
「……もういい、下がれ」
「は」
ルカスめ。お前がどこへ逃げようとも、ラトアーニ大陸のどこに隠れても、お前の呪いは絶対に解けん。せいぜい自由を楽しんでおくことだな。
このオレ……特別な賢者であるリュクルゴス・アルムグレーンが、お前に裁きを下してやるぞ。