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任務帰還後/スネージナヤ
研究区画・主実験室
長期任務は無事完了した。
損耗は大きかったが、
成果も同様に大きい。
報告書は既に提出済み。
兵士達も持ち場へ戻り、
遠征隊は解散した。
そして――
カピターノとドットーレも、
それぞれの職務へ戻っていた。
⸻
研究区画。
白い照明の下、
ドットーレは解析端末に向かっていた。
ド「戦闘中の心拍変動……やはり異常値だ」
任務中に収集したデータを再解析している。
ド「治癒薬との相互作用も興味深い……」
指先が止まる。
ド「……」
静かな空間。
ド「長期同行はデータ効率が良い」
だが小さく肩を竦める。
ド「観察対象が近くにいないのは非効率だね」
軽く笑った
⸻
数日前・帰還直後の会話
医療区画出口。
ド「今回の長期任務、実に有意義だった」
カ「任務は成功だ」
ド「君のデータも大量に取れた」
カ「勝手に測るな」
ド「今さらだろう?」
小さく笑う。
ド「まあいい。次の長期任務の際も同行を希望する」
カ「却下だ」
ド「冷たいね」
そして軽い調子で続けた。
ド「私に会いたくなったら研究区画へ来るといい」
カ「……誰が行くか」
ド「ふふ、そう言うと思った」
⸻
そして現在
研究区画・深夜。
静寂。
ドットーレは再び端末に向かっていた。
だが――
足音。
金属の、重い足音。
ド「……」
止まる。
入口扉の前。
数秒の沈黙の後――
自動扉が開いた。
そこに立っていたのは、
カピターノだった。
⸻
ド「これはこれは」
椅子に座ったまま振り返る。
ド「珍しい来客だ」
カ「……」
無言。
ド「任務報告の追加か?」
カ「違う」
ド「では装備補修?」
カ「違う」
沈黙。
ドットーレは仮面越しに笑う。
ド「まさかとは思うが」
わざと間を置く。
ド「会いに来たのかい?」
カ「……」
数秒。
カ「違う」
だが視線は逸れる。
ドットーレは笑いを堪えきれない。
ド「入口前で三十秒停止していたのは?」
カ「巡回だ」
ド「研究区画の最深部を?」
カ「……」
沈黙。
ドットーレはゆっくり立ち上がる。
ド「来るなと言った覚えはないが」
一歩、距離を詰める。
ド「来ないとも思っていた」
カ「用件はない」
ド「ではなぜ来た?」
答えは返らない。
だが――
カピターノの視線が、
実験台の薬品群に向く。
ドットーレは気付いた。
ド「薬効の経過観察か?」
カ「……違う」
ド「体調異常?」
カ「問題ない」
ド「では」
さらに一歩近付く。
ド「無意識か」
沈黙。
その言葉に、
カピターノの肩がわずかに動く。
ド「興味深いね」
カ「……分析するな」
ド「するさ」
至近距離。
ド「長期同行後、観察者不在による行動変化」
カ「やめろ」
ド「具体的には――」
仮面越しに視線を合わせる。
ド「無意識の接近衝動」
沈黙。
空気が静かに熱を帯びる。
ド「安心したまえ」
声を落とす。
ド「私も同じだ」
カ「……何だと」
ド「君のデータが無いと退屈でね」
軽く肩を竦める。
ド「研究効率が落ちる」
カ「……それだけか」
ド「それだけだよ」
だが距離は戻さない。
吐息がかすかに混ざる。
ド「だがせっかく来たんだ」
カ「用件はないと言った」
ド「では作ろう」
実験台に手を置き、
彼を軽く囲う位置に立つ。
ド「経過観察をしようか、隊長殿」
カ「……必要ない」
ド「必要だ」
首元へ手を伸ばす。
脈を測る仕草。
ド「心拍数――」
カ「測るな」
手首を掴まれる。
だが振り払われない。
ド「上昇している」
カ「……任務後の疲労だ」
ド「本当に?」
わずかに顔を寄せる。
ド「私の前でも?」
沈黙。
数秒。
そして――
カ「……長居はしない」
ド「好きにするといい」
だが離れない。
ド「ここはいつでも開いている」
小さく笑う。
ド「会いたくなったら、また来るといい」
沈黙。
カピターノは数秒その場に立ち――
背を向けた。
だが扉へ向かう直前、
一瞬だけ足が止まる。
ド「どうした?」
カ「……」
わずかに振り返り。
カ「次は……巡回ではない」
ドットーレの笑みが深まる。
ド「それは楽しみだ」
扉が閉まる。
足音が遠ざかる。
⸻
静寂。
ドットーレは端末に向き直り、
新しい記録を追加した。
ド「長期同行後――自発的再接近を確認」
小さく笑う。
ド「やはり君は、観察し甲斐がある」
研究区画の灯りは、
その夜いつもより遅くまで消えなかった。
コメント
2件

初コメ失礼します😭最高です😃