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口々に、私を称賛する会話が耳に入ってくる。しかし私の心は少しも晴れなかった。
だってみんな、本当の私じゃないから。
(いい子…か。)
心の中でその言葉に胸を痛めながらサッカー台を濡らしたタオルで拭いていく。
その時だった。
「えー!?どうすんの!?」
大きな声が耳に届いた。声の主は、レジのチーフだった。私は気になりながらも、黙って手を動かす。
「どうしたんですか?」
「それが、遅番の藤田さんが子供さんが具合悪いらしくてこれなくなったみたいで…」
「えー?確か今日、遅番できる人全員希望休よね?」
「うーん…参ったなぁ…仕方ない、あたしが最後までやるか…」
そんな会話が飛び交う。私は反射的に動いていた。
「あのっ!!だったら、私が遅番やりますよ?」
一斉に、みんなの注目を浴びる。
「え!?でも藤塚さん、朝から夜までになっちゃうよ?」
「全然大丈夫です!!チーフも子供さんいるのに大変じゃないですか。私にやらせてください。」
にこっと笑顔を作って言う。やらせてください…というのは、相手に気を遣わせない為に率先してやりたいことをアピールする為だ。
「ありがと。じゃあ任せるよ、休憩、いつもより多目にとらせるからね。」
「いやいや、そんな!!いつも通りでいいですよ。皆さんも疲れてるのに私だけいっぱい休むわけには…」
「いいの?ありがとうね。」
何度もお礼を言われる。周りの雰囲気も穏やかになる。