テラーノベル
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藍月
最終話まで一気にあげていきます
藤澤視点
「お疲れ様。……じゃあ、帰ろうか」
レコーディングは無事に終了し、手早く機材を片付ける。
若井が「元貴、今日なんか色っぽかったなー」なんて無神経に笑っていたけれど、僕はそれに適当な相槌を打ちながら、隣で硬直している元貴の背中を促した。
スタジオを出て、夜の空気の中を早足で元貴の家へと向かう。
隣を歩く彼は俯き、僕の歩幅に必死についてきている。
正直なところ、自分でもこの独占欲の強さには驚き、呆れている。
元貴と若井が幼馴染で、家族同然の絆があることなんて、付き合う前から百も承知だった。二人がふざけ合い、笑い合っている姿は、本来なら微笑ましい光景のはずなんだ。
……でも、それは僕と元貴が「ただのメンバー同士」だった頃の話だ。
一度彼に触れ、その熱を知り、彼を「僕だけの存在」にしてからは、穏やかな心でなんて見ていられなくなった。
若井に向けられる無邪気な笑顔も、触れ合う肩も、僕にとってはすべて、僕を乱すノイズでしかない。
(……さて、どうしてあげようか)
家に着けば、そこにはもう若井もスタッフもいない。僕と、元貴だけの空間だ。
「元貴、そんなに震えないでよ。……自分で『好きにしていい』って言ったんだから」
暗がりのなか、隣を歩く彼にだけ聞こえる音量で囁く。
元貴の肩が跳ね、小さく「っ……」と息を呑む音が聞こえた。
あんなに若井と楽しそうにしていた顔を、どう徹底的に乱してあげようか。
それとも、あの綺麗な声が枯れるまで、僕の名前だけを呼ばせ続けようか。
「自分の言葉に責任を持つ」ことがどれだけ大変か、その身に刻み込んであげなきゃいけない。
僕の足取りは、抑えきれない期待で少しだけ速くなった。
大森視点
カチリ、と玄関の鍵が閉まる音が、いつもより何倍も重く響いた。
ここは自分の家だ。好きなものに囲まれて、一番リラックスできるはずの場所。
なのに、今の俺にはここが、逃げ場のない檻のように感じられる。
少し後ろに立つ涼ちゃんからは、もう「いつもの優しい涼ちゃん」の空気は微塵も感じられない。静かな、けれど熱を孕んだプレッシャーが肌を刺す。
「……あ、あの、涼ちゃん……」
振り返ろうとした瞬間、背後から抱きしめられるようにして、そのままリビングのソファへと追い詰められた。
「元貴。ちゃんと覚えてるよね? 自分の言葉」
耳元で響く涼ちゃんの声は、驚くほど低い。
そうだ。スタジオで、逃げたくて、必死に懇願したのは自分だ。
『帰ったら、涼ちゃんの好きにしていいから。全部、受け入れるから』
口から出たときは必死だったけれど、いざ二人きりになってその言葉を突きつけられると、自分のした約束の重さに膝が震える。
「……っ、うん …。 」
「そ。偉いね。じゃあ、まずはその『若井と楽しそうにしてた顔』を僕が上書きしてあげなきゃね」
涼ちゃんの指先が、僕の頬をゆっくりとなぞり、そのまま唇に触れる。
その指が少しだけ強く僕の口内へ割り込んできたとき、心臓が痛いくらいに跳ねた。
「……ふ、ぁ……っ」
恐怖と、期待。
これから何が始まるのか、その想像だけで頭が真っ白になりそうで。
覚悟を決めてぎゅっと目を閉じ、涼ちゃんが繰り出す次の一手を待つことしかできなかった。
「……っ、りょう、ちゃん……」
顎をぐいっと持ち上げられて、視線を強制的に合わせられる。そこにあるのは、俺のすべてを飲み込もうとするような、真っ黒な瞳。
「元貴、ずっと考えてたんでしょ。僕に何をされるか」
涼ちゃんの指が口内をかき回し、溢れた蜜が顎を伝う。その感触が、恥ずかしくて、でもひどく熱い。
「ん……ぁ、ふ……っ」
指が抜かれたと思ったら、間髪入れずに彼の唇が俺の唇を塞いだ。
スタジオでのキスよりもずっと深くて、強引で、酸素を奪われる。
「……若井といる時も、こんな風にいやらしい声出すの?」
「んな、わけ……っ、ない、でしょ……!」
必死に否定すると、涼ちゃんは満 足げに、でもどこか冷酷に口角を上げた。
「ふぅん。じゃあ、若井が一生かかっても聴けないような声、僕に聴かせてよ。……今日は元貴が自分から『いい』って言ったんだから、遠慮しないからね」
そう言って、俺をソファに押し倒した。
沈み込むクッションの感触。目の前には、僕を支配しようとする涼ちゃんの影。
仲のいい若井の名前を、こんな風に涼ちゃんの口から聞くことになるなんて。
「……っ、りょう……ちゃん、お願い……優しく……」
「それは無理かな。だって、これは『お仕置き』なんだから」
俺の必死な懇願を切り捨てて、涼ちゃんの手が着ていた服を脱がしていく。
逃げ場のないこの部屋で、彼が与えてくる熱と痛みに似た快楽に、文字通り「責任」を取らされるんだ。
藤澤視点
ソファに沈み込んだ元貴を見下ろすと、その肩は小刻みに震えていた。
僕には分かるよ。
その震えが、ただの恐怖だけじゃないことを。
僕の手が肌を掠めるたびに、元貴の息は上がり、瞳の奥には抗いようのない熱が滲み出している。
お仕置きを恐れながらも、心のどこかで僕に無茶苦茶にされることを渇望しているんでしょ?
本人は気づいていないだろうけど。
(……そんなえっちな身体に仕立て上げたのは、僕だけどね)
付き合い始めてから、彼がどんな風に触れられるのを好み、どんな言葉に弱く、どう追い詰めれば一番いい声を漏らすのか。そのすべてを教え込み、僕の色に染め上げてきた自負がある。
「元貴、身体……正直だね。自分で気づいてない?」
僕はわざと、彼の耳たぶを熱い吐息とともに食んだ。
案の定、元貴の背中が大きく反り、甘い喘ぎが漏れる。
「……あ、んっ……りょう、ちゃ……ん、ちが……っ」
「何が違うの? 期待してるんでしょ。僕に、めちゃくちゃにされること」
言い逃れを許さないように、僕は彼の逃げ場を両腕で塞ぎ、さらに深く追い詰めていく。
さっきまで若井と笑っていたその唇が、今は僕のせいで震えている。
その事実だけで、僕の中の暗い独占欲は心地よく満たされていくんだ。
「お望み通り、たっぷり責任取らせてあげる」
僕は、期待と恐怖に濡れる彼の瞳をじっと見つめながら、ゆっくりと、けれど容赦なく、最後の一枚を剥ぎ取った。
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